ものつくりおじさんの制作日誌

ものつくり大好きおじさんがいろいろなものを作っていきます。

【溶接】TIGアート

2023年05月27日 | 溶接

 TIG溶接って、溶接の中でも最も綺麗な溶接法のひとつで、音も静かで火花も飛び散らないんですよ。1㎜以下の薄板から9㎜以上の厚板まで幅広く溶接できる素晴らしい溶接です。弱点は溶接速度がめっちゃ遅いことですが、それだけ繊細な作業も可能なわけです。

そのTIG溶接で絵を描いてみよう、というのが今回のテーマです。いくら繊細な表現ができるといっても、やっぱり上手い人と下手な人がいるわけでして、私は上手くも下手でもないんですな。きわめて普通の腕前なので、あまり複雑な絵は失敗しそうなのでシンプルな図案に挑戦します。

 えー、私は鉄工所で働く前は自衛隊に勤務してまして、それも千歳の戦車部隊にいました。その戦車部隊(71戦車連隊)のロゴマークがシンプルで好きだったので、そのロゴを作ってみます。↓戦車から顔を出しているのが私です。

通称“鉄牛マーク”です。71戦車連隊の別名が鉄牛(てつぎゅう)連隊で、そのロゴマークなのです。由来は「牛は滅多に怒らないが、一度怒ると恐ろしい力を発揮する!」とか聞いたことがあります。石狩平野に足を付けた怒れる雄牛、というのを表現したロゴです。

 

さっそく作っていきましょう。今回使用するのは、そのへんに落ちていたステンレスのチャンネル(コの字の鉄骨)です。皆さんの身の回りにたくさん落ちていると思います。それを適当な大きさに切断して、キャンバスにします。

チャンネルの表面に絵を描きます。描いたというより、プリンターで印刷したロゴの下に白いカーボン紙を敷いてボールペンで輪郭をなぞっただけです。色の薄い部分は石筆で濃くなぞって、下絵を作ります。

次にTIG溶接機を使って、下絵をなぞります。このとき1.6㎜の溶加棒をちょんちょんと溶かし付けながら輪郭を作りました。その輪郭の上を更に溶加棒を加えながら肉盛りしていきます。

強調したい部分の鉄牛をぷっくりと肉盛りし、7師団の7をローリングで丁寧に肉盛りしました。これで溶接は終了です。

チャンネルはコの字なので、L型にするためにグラインダのカッター刃で余分な部分を切り取ります。

L字だと飾ったときに絵が見えにくいので、根元をバーナーで炙り曲げしました。ステンレスは熱が入った部分が変色するので、見事に黒くなりました。TIG溶接の虹色の綺麗な焼け色はともかく、茶色や黒の焼け色は見た目が悪くなるので除去したいです。

焼け色除去の方法はいくつかありますが、酸性の薬剤と交流クリーニング装置で焼け取りすると狙った部分以外の色も取れてしまいます。そこで今回はサンドブラストで焼けを飛ばしていきます。サンドブラストは砂状のガラスを圧縮空気で吹き付けて表面を削る加工です。すりガラスによく使われますが、実は金属にもブラスト加工はよく行います。

焼け色が残ってほしい部分をマスキングテープで養生しました。というより全体にマスキングテープを貼って、カッターで切り取りました。この作業、かなり面倒です。複雑な図案だと詰みそう。

サンドブラストしましたが、マステの糊が残っている部分はうまくブラスト打てませんでした。粘着質が砂を吸着して、下のステンレス層まで届きませんでした。

裏側はきれいに焼けが取れています。マステをはがしてみましょう。

うーん、やっぱりマステの糊が残っていた部分は汚いですね。洗ってもキワの黒ずみは落ちません。無理やりゴシゴシ擦ると、残したい焼け色も一緒に落ちるので、リューターで淵を削る作戦にします。

家庭用のリューターは一家に一台あったほうがいいですよ。こういうときに重宝します。溶接の淵部分を細かいビットで削り取れば完成です。

こんな感じになりましたよ。焼け色はなんとか残りましたね。たまにリューターがズレて余計な場所を削ってましたが…

10式戦車の模型と一緒にパチリ。この模型は退職するときにプラモデルを作るのが得意なおじさんに餞別にもらったものです。

というわけで、今回はここまでにします。サンドブラストをする手間がめっちゃ面倒なので、必要な焼け色だけを残す画期的な方法があると良いのですが…誰かいい案があったら教えてください!

 

では、また。



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