思い出いっぱい『整理箱』

いろんなことがありました。
あの日のこと、あの頃のこと。《エトセトラ》ですね。
思い出すまま書き出してみました。

通信崩壊―IT革命と規制緩和の結末

2007-10-09 23:52:30 | ■Weblog
通信崩壊―IT革命と規制緩和の結末
藤井 耕一郎
草思社

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昨今の通信業界の変動は非常に激しい。ここ数年でインターネットのブロードバンド化は料金の低廉化と共に一気に進み、プロバイダがIP電話を導入し始め、NTTが規制を大幅に緩和し、あまつさえ固定電話の拡張をすでに放棄する方向で動いている。
本書では通信業界のこの激しい変化の背景とその行き着く先を論じている。これらの変化については、原因を政府の主導した構造改革に求め、その本質を多数の競合会社の参入を認める「規制緩和」とその結果生じる「アンバンドリング」と見定めている。さらに著者は、そのはてに通信業界の混乱、多数の失業、通信サービスの品質低下が生じると論じている。通信業界に身を置く者として言うならば、本書に書かれていることの、少なくとも経済的・技術的な事象については「事実」だ。おそらくIP電話は現在NTTが提供しているほどの品質は保証できないし、BB Phoneに見られたようにトラブルも多く発生するだろう。また技術とサービスの激しい向上を目指して各社は疲弊もするだろう。しかし、すでにこの流れを止めることが出来ないこともまた事実なのだ。

本書では、現在の通信業界の動きを政治的な面、経済的な面、技術的な面から描き出し、業界・消費者ともにアンハッピーな結果になると結論づけている。この結論には異論がある方もいるであろうが、現在の通信業界の一面を表していることは確かである。通信業界がどこに向かおうとしているか知りたい方には、ぜひ一読をおすすめする。(斎藤牧人)
■商品の説明
通信崩壊 IT革命と規制緩和の結末
最近「ADSLを入れると電話がタダに」というコマーシャルが目に付く。「そうか、ネットの進歩はついに電話料金をタダにするまでになったか、素晴らしい」と思いがちだが、ちょっと待ってほしい。それなりにコストがかかるはずのサービスがタダで提供されるというのは奇妙な話だ。なぜこんなことが起きているのかを追求したのが本書である。
■現状を理解するキーワードは「過当競争」だ。かつて電話事業は公共サービスとして国が保護し、「安定したサービスを提供する」という名目で電電公社が独占的に営んでいた。しかし1980年代半ばに電電公社は民営化されてNTTとなり、同時に民間から新電電と総称される事業者が参入して激烈な価格競争を繰り広げることになった。結果として電話料金は下がった。著者は、この民営化の影に過当競争によって利益を得ようとした民間から政界へのロビー活動があり、結果としてNTTを中心とした通信産業の衰退を招いたと指摘する。
■そして今、インターネット通信を巡って全く同じ事態が進行している。今回のターゲットは新電電も含む通信インフラを保有する通信事業者だ。インターネットを巡る新しい技術で、これまでの電話網は陳腐化し、ロビー活動をも辞さない新規参入組が市場を食い荒らして通信の信頼性は低下していくとする。

評者は著者の意見に全面的には賛同しない。著者が「半官半民企業にすぎないNTT」と弁護するNTTグループ、さらには「電電一家」などといわれた関連産業の信じがたいほどの怠慢に何度となく出会っているからだ。現在のNTTグループの苦境はかなりの部分、抜け切れぬお役所体質が原因なのである。しかし同時に、過当競争が利権を生み、必ずしも消費者の利益とはならないとする態度には共感する。
■激変する通信業界を理解するための一助となる一冊だ。

(ノンフィクションライター 松浦晋也)
(日経パソコン 2003/2/17 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)