清濁混交フリートーク

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管理人:観月伽耶、白利

彼岸花

2005年09月21日 17時21分04秒 | Weblog
 タイトルというか、イメージがアレですけど今日は死生観な話題じゃありませんよ(笑)。

 ふと気がつけば、今年も彼岸花の季節になりました。
 真っ赤な花ばかりが、舗装されていない道の両脇にずらりと並んで、真紅の帯を延ばしたようです。あるいは、赤絨毯。スターの行く手にごろごろごろっと敷くあれ。
 私の地元ではそこかしこに彼岸花が群生していて、なかでも圧巻なのがとある休耕田で一面に彼岸花が咲き乱れているのです。風が吹いて彼岸花がそよぐと赤い海原のようで。この時期になるたび思い出して、また行ってみたいと思うのですが正確な場所忘れてしまったんですよねぇ…。光景は鮮烈に記憶に残っているというのに。まさしく彼岸のもののような、あの美しさを。

 しかし彼岸花というのは、あんなに綺麗だというのにろくでもないイメージばっかりついてますよね。
 墓場の花だの、手折って持って帰ったらその家で火事が出るだの、毒花だの、死人花、幽霊花、捨て子花なんて異名を付けられ、あげく花言葉は『悲しい思い出』だし。彼岸花というのも、元は天上の花もこんな色形ではなかろうかと思ったという(別名の曼珠沙華はその想像上の花より)どっちかというと良い由来だったのに、それらのせいでこの世ならぬ不気味な、というニュアンスになっているような…。
 やはりあまりに鮮やかな赤と、実際持っている毒のせいでしょうか。

 彼岸花には根から花まで有毒アルカロイドのリコリンが含まれ、茎の汁が手につくと皮膚炎を起こします。また、根にはリコリンの他にガランタミンも含まれ、これらを誤食すると下痢、嘔吐、量が多ければ中枢神経麻痺や呼吸不正も生じて、最悪の場合死に至ることもあります。

 けど、そんな彼岸花の鱗茎が食べられるって知ってましたか?

 リコリン、ガランタミンは水溶性なので、すり下ろして何度も水にさらせば取り除くことができ、あとには純粋な澱粉が沈殿します。この粉をよく水を切って握り、餅のようにして焼いて味噌や醤油をつけて食べたらしいのです。飢饉の時の救荒作物として重要だったんだとか。毒抜きを念入りにしないと中毒のおそれがあるのですから、最終手段ですが。逆に、毒を持つことを強調する伝承が多いのは非常時までとっておくためのものだという説もあったり。

 先人は彼岸花の毒を利用してもいました。
 その毒性から、イタチや野ねずみなどの小動物は彼岸花を嫌がるので、動物よけに畦(…田んぼの縁って解説つけといた方が良いだろうか)や墓場にわざわざ植えたんだとか。そういえば彼岸花を見るのってだいたいあぜ道か墓地か河原の三択ですよね。河原も治水目的です。堤防に穴掘られないように小動物よけ。

 実は日本の彼岸花は3n体で遺伝子的に奇形であり、種子が作れません。だから鱗茎で増えたりもするんですが、こんなに日本各地で見かけるのは先人たちが積極的に利用したせいなんでしょう。中国の彼岸花は2n体で結実もするらしいですけど。

 これ書くのに調べてたら、彼岸花が欧米で人気があるらしいという記事が出てきました。『レッドスパイダーリリー』とか『マジックリリー』とか呼ばれて、群植したときの美しさがうけてるそうです。…一応、『リコリス』が正式名称(ヒガンバナ科リコリス)なのですが。
 数々の負のイメージは抜き、というかおそらく知らずに好かれているようです。それもいいんじゃないでしょうか。綺麗なものは綺麗だし、純粋にそれを愛でるのも。

 けど別名の曼珠沙華の由来となった想像上の花が、『この華を見ると現世の悪業が消える、極楽に咲く花』だというのはせっかくだから知ってほしいかも。

 ついでに、彼岸花の花言葉にはもう一つ『想うはあなた一人』ってのもあるそうですよ。

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