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What a wonderful day !

日々の感動を綴った記録です。
自作スピーカや、自然農法などにも興味があります。

ダイアトーン DS-66EXのレストア(7) ミッドレンジ編(1)

2023-04-02 07:36:00 | 往年の銘スピーカのレストア
<ミッドレンジユニットの特性調査>
エンクロージャー から取り出したミッドレンジユニットです。金属ネットは外してあります。



ミッドレンジのインピーダンス特性を調べました。
共振周波数fsのピークは高音域側に裾を引いていました。このようなインピーダンス特性は、単一ユニットでは見たことがありません。463Hz でのスピーカユニットの通常の振動系の他に、700〜800Hz付近にも別の振動系があるようです。これは、このユニットだけでなく、もう一つのユニットでも同じでした。

振動板に触れてみると、エッジはカチカチで固着状態です。このエッジは、ウーハーと同様の布エッジです。エッジの表側、裏側ともに布目は見えますが、ウーハーに塗布されていたビスコロイド的なものは確認できません。
調べてみると、姉妹機であるDS-77EXのミッドレンジのエッジには、「表面にダンピング材をコーティングした布を2枚貼り合わせた積層クロス」が採用されています。
<参考資料>
https://audio-heritage.jp/DIATONE/diatoneds/ds-77ex.html
このため、本ユニットでも「ダンピング材で接着した積層クロス」が使われている可能性があります。このダンピング材が、ウーハーと同様に経時変化によって硬化したと考えれば、カチカチ状態は納得できます。
>>続く

ダイアトーン DS-66EXのレストア(6) ウーハー編

2023-03-30 08:29:00 | 往年の銘スピーカのレストア

ダイアトーン DS-66EXのレストア(6)    ウーハー編

<ウーハーの布エッジの再生>

5)ウーハーユニットの最終特性

前回、ウーハーエッジ再生の最終段階として、エッジの裏側に液体ゴムを塗布しました。その結果、エッジは当初とは比較にならないほど柔らかくなり、コーンもスムーズに動くようになりました。

液体ゴムを塗布してから三週間。特性が十分に落ち着いたと思われるので、インピーダンスの周波数特性を測定しました。当初、及び軟化剤塗布後のインピーダンス変化も併せて示します。


共振周波数fsは、当初の110Hzが、最終的には軟化剤塗布後の35Hzよりも11Hz高い46Hzになりました。また、機械的共振先鋭度Qmsは、当初の15.7が、軟化剤処理で7.5に、更に液体ゴムの塗布により5.3と大きく低下しました。これは、高損失な液体ゴムのダンピング効果で機械的損失が増大したためと思われます。一方、総合共振先鋭度Qtsは、当初の1.24が、最終的には臨界制動状態に近い0.49となっています。

以上の検討から、最終的なレストア後のウーハー特性としては、fs=46Hz、Qts=0.49、Qms=5.3、Qes=0.53が得られました。このユニットのEBP値(Efficiency Bandwidth Product; fs/Qes)は87なので、密閉型、バスレフ型のどちらにも使用可能なユニットです。

今回のエッジのレストアによって、fsは少し高めにも感じますが、27cmコーン型ウーハーの本来の特性をかなり取り戻すことができたように思います。

>>次は、ミッドレンジユニットの調査を予定しています。


2023/03/18

2023-03-18 16:44:00 | 往年の銘スピーカのレストア
ダイアトーン DS-66EXのレストア(5)   ウーハー編
<ウーハーの布エッジの再生>
3)液体ゴムの選定
軟化剤でエッジは軟らかくなりましたが、シンナーでビスコロイドを徹底的に除去したので、エッジを光に翳してみると布目に空隙が見られ空気が漏れる状態です。そこで、エッジの内側に液体ゴムを塗布して空気漏れを防ぐことにしました。検討した液体ゴムは、次の4種類です。
①水性液体ゴム(ユタカメイク BE-2;アクリル樹脂、水溶性、シンナー不溶)、
②油性液体ゴム(PLASTI DIP; 合成樹脂、シンナー可溶)、
⓷液体ゴム接着剤(スリーボンド1521B;クロロプレン合成ゴム、シンナー可溶)、
⓸接着剤(セメダイン スーパーX;変性シリコーン樹脂、シンナー難溶)
これらをエッジを模擬した形状の布に刷毛で塗布しました。セメダイン スーパーX (乾燥後は黒色)は元々のペースト自身が硬く、シンナーにも溶けにくいので均一な塗布は困難です。PLASTI DIP(乾燥後は黒灰緑色)と1521B (乾燥後は黒色)は、塗布すると布エッジがゴワゴワとして硬くなりました。一方、水性液体ゴムBE-2(乾燥後はツヤのある黒色)は殆ど硬くならず適度な弾力が有ります。
今回は、軟化させたエッジを再び硬くしたくないので、水性液体ゴムBE-2を選択しました。但し、固化したBE-2は、水だけでなくシンナーにも極微量しか溶けないので、一度塗布すると再び取り除くことはできません。

4)エッジへの水性液体ゴムの塗布
予備検討で、ユタカメイクBE-2の「原液」をエッジの裏側に塗ると、布目の空隙を通して液体ゴムがエッジ表面に滲み出る傾向があったので、始めの3回ほどは原液を半分位の水で薄めてから塗り、その後は原液を塗りました。
液体ゴムには、布の補強や振動板に対するダンプ作用なども期待されます。原液を刷毛で均一に塗るのは難しいですが、光に翳して布目が殆ど透けないくらいの厚さまで塗り重ねました。塗布後のウーハーのエッジは、茶色を帯びた黒色になりました。

>>続く

2023/03/10

2023-03-10 13:52:00 | 往年の銘スピーカのレストア
ダイアトーン DS-66EXのレストア(4)    ウーハー編
<ウーハーの布エッジの再生>
2)「エッジ軟化剤」の効果
この事態を打開すべく、ネットで販売されている「エッジ軟化剤」を試してみました。’ビスコロイドを軟化させる’とのことで、小さな容器に入った薄赤色の液体です。シンナーとは異なり匂いは殆んど無く蒸気圧が低いものでした。
この軟化剤を、エッジの凸表面全体にはみ出さないように筆で塗りました。30分もするとエッジは柔らかくなり始め、このときの共振周波数は50Hzでした。2時間後で37Hz、6時間後では35Hzになりました。24時間後でも35Hzと硬くなりませんが、一週間経つと39Hzとなり、やや硬くなる傾向にありました。

次の工程で「エッジ裏側への液体ゴム塗布」を予定しているので、この時点での共振周波数は少しでも低く抑えたいところです。
そこで、エッジに2回目の軟化剤塗布を行い、一週間後の変化を調べました。共振周波数は35Hzと一週間前と全く同じで、エッジの硬化はほぼありません。

この時の総合共振先鋭度Qtsは0.37でした。振動板の動きは、当初の振動的な1.24から、制動的な動きに大きく変化しています。なお、機械的共振先鋭度Qmsは7.5でした。
エッジが柔らかくなったため、ユニット構成パーツのダンパーがようやく本来の役割を担うようになった感じです。ウーハーの元々の Qts値は、0.40程度ではないかと思います。
以上の検討で、ウーハーエッジは程よく軟化できたので、これでビスコロイド軟化対策は完了としました。
>>続く

2023/03/05

2023-03-05 09:27:00 | 往年の銘スピーカのレストア
ダイアトーン DS-66EXのレストア(3)   ウーハー編
<ウーハーの布エッジの再生>
1)ラッカーシンナーによるビスコロイドの除去
ネットを調べると、カチカチの原因であるダンプ剤として使われているビスコロイドをシンナーで除去した後、代わりに液体ゴムなどを塗布する事例が沢山でてきます。これを参考にエッジの再生を始めました。
取り外したウーハーエッジ裏側の窪みには、ビスコロイドがタップリ塗布してありました。先例に習って窪みにシンナーをスポイトで流し込み、30分程して柔らかくなったところでビスコロイドをヘラで除去しました。除去直後はエッジはかなり柔らかくなり良い感じですが、翌日になると再び硬くなりました。

図に示すように、シンナーで三回除去した直後の共振周波数fsは41Hzですが、翌日には78Hzに、5回除去した直後の共振周波数fsは34Hzですが、翌日には70Hzと硬化してしまいます。
この時の総合共振先鋭度Qtsは0.39→0.77となり、振動板は制動的な動きから振動的な動きに変化し、また、機械的共振先鋭度 Qmsも8.2→10.5と大きくなりっています。これら共振先鋭度からも、シンナーで処理した翌日には、再びエッジは硬く振動的になっていることが伺えます。
ビスコロイドの除去回数に伴う翌日のエッジの共振周波数変化を下図にまとめました。

シンナーでの除去翌日の共振周波数は回数と共に減少しますが、次第にその減少率は小さくなります。9回目でも共振周波数は60Hzと高止まりです。これは、シンナーが翌日には蒸発して、繊維に染み込んだ残留ビスコロイドが再び硬くなるためです。
共振周波数fsが60Hzでは、DS-66EX本来の音を取り戻すことは困難です。
>>続く