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肩の凝らない漢方の話

漢方薬にまつわるあれこれを、気の向いた順に語っていきます。
私たちの生活に根差した漢方の世界をご紹介します。

薬食同源 ~独活~

2025-03-13 18:14:49 | 薬食同源
朝のテレビ番組で「独活」を紹介していました。
今流行りの「〇活」ではありません。
野菜の「ウド」です。
「春は苦い物を食べよ。」の言葉と
これから旬を迎える苦みのある食物として
ウドを紹介していました。

生薬の「独活」は「ドッカツ」と読みます。
こちらは、シシウドの根を乾燥させたものです。
冷えや湿気で痛みがつよくなる人の
後背部の筋や下半身の関節部分のだるい痛みやしびれに効果があります。
漢方薬としては、五十肩によく使われる独活葛根湯や
足の関節痛やしびれに使われる独活寄生丸が有名です。

シシウドは西洋でも用いられ、
学名のAngelicaは、薬効の著しい効き目を天使の力に例えているそうです。
薬としてだけではなく、魔よけの植物としても用いられていたようです。

「見た目は大きくて、立派だけど折れやすく材としては使えない。」
と揶揄されるウドですが、食物や薬としては立派な役目を果たしていますね。

参考 「くらしの薬草と漢方薬」 水野瑞夫/太田順康 共著 新日本法規
     「漢薬の臨床応用」 神戸中医学研究会訳・編  医歯薬出版株式会社
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薬食同源~桃~

2025-03-03 17:02:27 | 薬食同源
3月3日は桃の節句ですね。
「桃」にまつわる薬のお話を少しご紹介したいと思います。

桃は、果物として、花の観賞用として、改良され、たくさんの品種があります。
薬用として用いられるのは、原種のノモモかそれに近いものだそうです。

葉は乾燥させ、民間薬として、あせもなどに用いられていました。
私も子どものころに、葉をそのままお風呂にいれたり、煎じた液をぽんぽんとつけてもらった記憶があります。
今でも、桃の葉のエキスの入ったローションが市販されています。

蕾を乾燥させたものを「白桃(はくとう)花(か)」といい、下剤などとして使っていたようです。
これは、今では、流通していません。

成熟した果実の種子の中にある仁を乾燥したものが、生薬の「桃(とう)仁(にん)」です。
桃仁が入った方剤に「桃核承(とうかくじょう)気(き)湯(とう)」があります。
血の滞りによる、痛みや炎症に用いる方剤で、比較的体力がある方、症状の強い方に用いられます。
腸を潤して動きを滑らかにするので、便秘や痔に用いられることもあります。
下げる力が強いので、妊婦や体力の弱い方にはお勧めできません。

民間療法の本には、花や葉、桃仁の使い方が20種類近く紹介されており、昔は桃が人の生活のすぐ近くにあった樹木だったことがうかがえます。

参考 「くらしの薬草と漢方薬」 水野瑞夫/太田順康 共著 新日本法規
   「漢方と民間薬百科」大塚敬節 著 主婦の友社
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漢方小噺~神農さま~

2025-02-25 15:34:46 | 漢方小噺
昨年のことです。コラムを読んでくださった方から
「神農(しんのう)」についてのおたずねがありました。
その方は、以前より、神農について興味を持ち調べており、
「神農は、体は人間、頭は牛、葉っぱの蓑を着て、木の枝を持っているのでは?」
とのことでした。

当薬局のサイトにふわふわ浮いている神農さまは、頭にこぶがあるけれど、人の顔をしています。
というわけで、調べてみました。

炎帝神農(えんていしんのう)は、古代中国の伝説上の皇帝の一人。
今に伝わるお姿は
1. 耒(すき)を持って田畑を耕す農民型
2. 羽衣を着て仙草を持つ仙人型
3. 体は人間、頭は牛の人身牛首型
で、立像、座像、半身像があるそうです。
   
               農民型
  
            
               仙人型

サイトの神農さまは、仙人型。
お尋ねの方の神農さまは人身牛首型と同じ「神農」でもお姿が違ったのですね。

サイトの神農さまには、頭に二つ、ちょうど牛の角のようなこぶがあります。
葉を重ね合わせた蓑を着て、右手に薬草を持ち、左手に巻物を持っています。

祖父 太田裕康によれば、
「神農さまは、たくさん勉強して、頭に知恵がいっぱい詰まっている。その知恵が収まりきらずこぶになって生えてきた。そのこぶは、知恵の塊。」
だそうです。
幼かった私は、勉強しすぎるとこぶが生えてきちゃうのか。と心配しましたが、
「人間ができるちょっとやそっとの勉強じゃ、生えてこない」
と一笑に付されました。

神農は医薬の神様で、百草をなめ、一日に70回も毒にあたりながら、医薬、食糧の適否を判別し、本草書を著したといわれています。
他にも耒鍬(すきとくわ)を作り、民に農業を教えた、農業の神様。
五弦の瑟(おおごと)を作った、音楽の神様。
市を開いた、商売や市場の神様。
八卦を重ねて六十四卦を為した、易の中興の祖。
などと言われ、各地で祭祀されています。
「神農まつり」や「薬まつり」と呼ばれる祭礼もあるようです。
機会があれば、一度訪れてみたいと思いました。

参考 「医史跡を訪ねて」 鈴木五郎 米田該典 著 小太郎漢方製薬発行
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健康談義 ~冷え症~

2025-01-30 18:23:13 | 健康談義

 冷えは万病の元という通り、様々な体の不調の原因となります。
水も冷えると固まり、氷になるように、
人の体の中でも冷えると「血、水」の巡りが悪くなり、痛みなどを起こします。

冷えの原因は。

・熱が上手に作れない。
 生活習慣の乱れで、食事をとらない。
 胃腸の調子が悪く、食事がとれない。
 加齢や運動不足による筋肉量の低下などが要因と言われています。
 まずは、胃腸を整える。バランスの良い食事、筋トレや適度な運動を心がけましょう。

・温度調節が上手にできない。
 健康な人は、気温の変化に合わせて適切に体温を調節することができます。
 ところが、気を使いすぎる、ストレスを上手く発散できないなどが要因となり、
 温度調節が難しくなる場合があります。
 暑さ寒さに弱い人は、意識してリラックスする時間を持ってみてください。

・熱が逃げてしまう。
 皮膚の防衛力が弱くなると、寒邪が入りやすく、熱が逃げやすくなります。
 防衛力を高めるのはもちろんのこと、
 冬に外気に触れやすい、頭、首、手首、足首を冷やさないようにしましょう。
 温めすぎて汗をかくとかえってよくありません。
 程よい防寒対策を心がけてください。

 冷え性を改善する漢方薬は、
 冷えを起こしている原因と体のどこが冷えるのかなどによって変わってきます。
 気になる方は、一度ご相談ください。
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漢方小噺~2025年はどんな年?~

2025-01-09 14:48:51 | 漢方小噺

 新年あけましておめでとうございます。
 今年も生活に根差した漢方の世界をご紹介していきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いします。

 昨年は、甲辰(きのえたつ)で、社会の動きも平穏、万物は順調に成長し、繫栄する。
雨が多く、湿った年になる。とお伝えしましたが。
地球規模でみれば、雨による被害は多く、戦渦の広がりなど平穏からは程遠い年でしたね。
ただ、個人的には平穏な一年だったように思います。
皆様には、どんな年でしたか?

 2025年は、乙巳(きのとみ)。
中国の古い医学書「黄帝内径 運気篇」によると
厥陰司天・金運不及・少陽在泉です。
この年は、万物がことごとく繁茂する成長の年だそうです。
気候は、暑さが厳しい一方、急に冷えて雹や霜の降りることがあるようで、
秋の訪れが遅く、冬は厳寒となるそうです。
金運不及のため、肺を傷めやすいとされています。
花粉症のひどい方や呼吸器系が弱い方は早めのケアをお勧めします。

 この「運気篇」は、天気の変化を
5,6,10,12,30,60年のリズムで統計を取って規律を見つけ、記した書物だそうです。その出典には諸説あります。
2000年以上も昔の話なので、現代にあてはめるには無理がありますが、先人の知恵と思考をたどるのも面白いと思いご紹介しました。
参照 「意訳黄帝内経運気」小木戸丈夫+浜田善利共著、築地書館
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