江差で聞いた講演がとてもよかった。
障害があったからこそ、自分のよさをアピールして生きてきたということ。
うまくいかない時は、一回引いてみること、など。
うまくいかない時ほど、より力んで生きてきたからね。
午後、雨上がりの空に虹が……。
さて、14話です。
八月十八日、僕は寿小学校の六年一組の教室。舞鳥のみんなに「さよなら」、そして、「ありがとう」を言って、これから新しい生活を始める、ここに着いたのは、十一時を回ったころだった。
担任の先生は、遠山先生。女性の先生で、四十代後半という感じだった。
「みなさん、いいですか。新しいお友達を紹介します。大山広人君です」
と言いながら黒板に大きく僕の名前を書いた。
「みなさん、いいですか。大山君に自己紹介をしてもらいます。大山君、いいですか」
「はい」
みんなが僕に注目する。じろじろ見られているような気がして、何だか嫌な気分になった。それでも、「はじめが肝心」と自分に言い聞かせ、元気を装い、明るい声で話した。
「大山広人です。舞鳥小学校から来ました。ずっと、野球をやっていたので、ぜひ、寿ファイターズに入りたいと思います。みんなと仲良くしたいと思うので、いろいろ教えてください」
僕はペコリと頭を下げる。顔を上げると、何人かが、隣の席同士で顔を見合わせ、ニタニタと笑っていた。何だか、やっぱり感じが悪かった。舞鳥のような明るくて楽しい雰囲気は感じられなかった。でも、舞鳥と比べること自体が無茶だとも思った。僕にとっては、舞鳥は最高の学校だったから。
「はい、みなさん、いいですか。大山君は野球をやっていたんですね。この学級にもファイターズに入っている子がいますね。どうぞ、仲良くしてくださいね、いいですか」
遠山先生の言葉は、とても丁寧だけれど、何だか温かみが感じられなかった。そして、何よりも、「いいですか」と何度も言うことが気になった。そして、
「はい、いいですか。大山君はタケオ君の隣の席にします。タケオ君、いいですか」
タケオは声を出さずにコクリと頷くだけだった。
そして、算数の授業が始まった。
先生は、問題の解き方を「はい、いいですか」と繰り返しながら、淡々と説明して、プリントを配り、「十分でやりなさい。いいですか」
と指示した。先生は黒板の前に置いた大きな机について、赤いボールペンを持ち、何か仕事を始めてしまった。みんなはモクモクと問題を解いている。
授業終了のチャイムが鳴った時、僕は。「ほっと」した。そして、とても疲れた感じがした。こんな授業を三月まで受けるなければならないと考えると、「拷問だな」と思った。
初日から、あまりの苦痛に窓の外を眺めた。二階の窓から見える空は、舞鳥と同じく青かった。しかし、教室中は、どんよりとした曇り空だった。
ヒロトの転校後の物語です。もちろん、語りはヒロトです。
こんな拷問授業、たくさん見ましたよ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます