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風船花(ホウセンカ)です! 元気です!

教育系ポップスバンド 風船花(ホウセンカ)の活動日記
日常の中であれこれ思ったことなど

続 ひわまりのころ 31

2016年01月22日 00時42分31秒 | 続 ひまわりのころ

31話です。

母さんも、平田さんも、広人も、奏太も、もちろん、僕も言葉が出ない。応援スタンドが緊張した雰囲気に包まれ、朝日川工業の応援がはっきり聞こえてくる。みんなが高杉君のすべてを祈る気持ちで見つめている。
四番との対決。素振りをしながら、バッターボックスに入る。二度、三度、体をひねるように回し、威圧するようにバットを高杉君に向け、どっしりと構える。
一球目がストレート。二球目が大きく縦に曲がった変化球。ショートバンドしたボールをキャッチャーが必死に捕球した。一瞬、ひやっとして、スタンドにどよめきが起こった。
カウントはツーボールになる。高杉君は、少し間をとって、首を回し、肩を上下する。
そして、
「カキーン」
大きな当たりがレフトに飛ぶ。恐くて、ボールの行き先を見ることができない。僕は頭を抱えた。大きく悲鳴が聞こえたが、すぐにフェイドアウトした。ゆっくり頭を上げる。
結果は、ボールは右にそれて、ファールだった。応援席のすべて人たちが胸をなでおろしたことだろう。続くボールにも軽く合わせる程度にバットを出し、一塁線のファールとなる。カウントは、ツーボールツーストライクだ。張りつめた空気に胸が押しつぶされそうだ。

「次だな」と思った。聞こえはしなかったけど、高杉君が空に向かって、何か言ったから。投げたボールはストレート。逃げることなく、真っ向勝負のボールを投げた。そして、バッターはそのボールにバットをタイミングぴったりに、コンパクトに振り出された。
バットがボールを捉えるよい音がした。あまりのよい音に、僕は覚悟を決めた。

 

 試合終了のサイレンがなる。そして、アナウンス。
「…北澤高校の栄誉を讃えて、校歌を斉唱します」
守備に立つショートの選手の左を鋭く抜けるかと思われた打球。食らいつく背番号6番。ボールはグローブの中にしっかり収まった。ランナーは大きく飛び出していて、セカンドにボールが送られて、ダブルプレーになった。
「わぁー!」
と歓声。そして、応援スタンドは笑顔に包まれる。隣の人と肩を叩きあったり、握手したり、勝利の喜びに沸き上がる。
校歌が終わって、北澤野球部のメンバーが応援席に挨拶に来ると、スタンドの興奮は最高潮になった。
「おめでとう!」
「よくやった!」
「高杉、最高だ!」
そして、
「ありがとう」僕も手を振りながら、心の中で何度も「ありがとう」と言っていた。


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