Seriously?

ひとりごとです

映画 ■■スリー・ビルボード■■

2018年02月25日 | 映画
全くなんの予備知識も持たずに観に行った

見終わって…
なんじゃこりゃ
これで終わり????



暴力的なシーンも多かったし
下品な会話が続いて
なかなか登場人物に共感できないまま
終わった

見なくてもよかったなーと



でも、見終わってから
ジワジワと来るのだ
「あれはどういうことだったんだろう?」
と、思い出しては考える



映画 ■■スリー・ビルボード■■





今回は最初から
ネタバレ感想書いていきます






最初は
ミルドレッドの娘が殺されたのに
犯人がなかなか捕まらないのは
警察が何かやらかしたのを
隠しているかのかな?と推測したり

差別主義者のディクソンが
噛んでいるんじゃないか
真犯人なんじゃないか
それをみんなで隠蔽しようとしているのでは?

いや、もしかして
国家の陰謀なのでは?

だから広告なんて作って
隠謀をつつき返すような真似したら
ミルドレッドの方が消されてしまうのでは?

...なんてよくある物語を予測して
謎が少しずつ解明されるのを待っていました



でも、実際は
何も明らかになっていきません

...それでも
最後の最後で「えええー!!!」という
大どんでん返しの真相が出て来るのかな?
と思いながら観ていました



でも、結局
真犯人は分からないまま
宙ぶらりんに終わるのです



ミルドレッドが
3つの広告を出したことをきっかけに
事態は少しずつ動いていきます

ウィロビー署長の言う通り
チェスのように
駒が一つ動いたら
相手はそれにリアクションし流れを変え
また次の駒が
それを受けて別の事件を起こし
またそれを受けて
事態は別の方向に動きます

その繰り返し



前半は
怒りが行動を起こすきっかけとなり
その怒りは
別の人の怒りを連鎖的に誘い
人から人へ怒りが拡がっていきます



物語の発端の
ミルドレッドの怒りは
娘を殺した犯人を見つけ出せない警察
特にウィロビー署長に対する「怒り」
その怒りに突き動かされ
3つの広告を作ります

でも実は
ミルドレッドは
娘がレイプされ残虐に殺されてしまった日
自分が娘に「レイプされてしまえばいい」
と言ってしまった言葉通りになってしまって
あの日車を貸さなかった自分に対して
非常に怒り狂っているのだと思いました

我が子を自分で殺したも同然
自分のしたことが、どうしても許せない
その怒りの矛先を変え
警察署長に向けて猛り狂うことで
自分の精神の平衡を守る
防御行動を起こしているように思えました



彼女の怒り(3つの広告)は
差別主義者のディクソンを怒らせ
ディクソンは
広告板の持ち主レッドを脅迫したり
ミルドレッドの友達を逮捕したり
嫌がらせで仕返しをします



ウィロビー署長も
事件を解決出来ていないことには
責任を感じており
ガンで死が近いこともあり
自死を選びます

この自決の意図が
彼の気持ちが、ちょっと理解出来ない

「死期の近い自分の看病で
家族を長い間暗い雰囲気にしてしまうのが嫌だ」と
遺書に書いてありましたが

でも、3つの広告がなかったら
自殺はしていなかったんじゃないかな?
(ウィロビーは「関係ない」と遺書に書きますが)

広告によって相当なストレスを感じて
冷静に考えられなくなったのかも知れない
自暴自棄になって
発作的に引き金を引いたのかも

それとも彼の言う通り
彼が自決することで
彼に同情する人が増え
ミルドレッドを非難する声が増えることを計算して
「仕返し」をしたのでしょうか

ここがよく分からないのです
「仕返し」だったのか?
「3つの広告」に怒っていたのか?

それとも自暴自棄だったのか?
心を病んでいたのか?

ウィロビーの言う通り
単に家族に負担をかけたくなかったから?
幸せな気持ちで死にたかったから?



ウィロビーは人望に厚い人で
町中の人から信頼され慕われています
彼の遺書を読んでも
非常に思慮深い
愛情に満ちた人だと感じられます

自殺することによって
ミルドレッドが非難の的になることを
分かっていながらしてしまったのが
彼らしくないなあ

でも、ミルドレッドに申し訳ないと思いつつも
もうどうしようもないくらい
参っていたのかなとも思いました

(私は、何か重大な機密を隠すため
世間の注目を逸らすため
死んだのかと誤解してしまいました)



とにかく
ウィロビーの自殺は
チェスの駒を動かしました
ディクソンを怒らせ
広告板所有者のレッドを
2階から投げ落として
大怪我をさせます



一方
ミルドレッドが広告を作ったことに
怒っていた元夫のチャーリーは
広告に火を付けます

それに怒ったミルドレッドは
(ディクソンがやったと誤解して)
警察署に火炎瓶を投げつけます
中にディクソンがいたと知らず
大火傷を負わせてしまい呆然とします



でも、ここから
チェスの駒の動き方が変わってくるのです

怒りの連鎖ではなく
優しさの連鎖に

そのきっかけは
ウィロビーの手紙でした

ディクソンへは
「お前は立派な警察官になれる
ミルドレッドを助けて事件を解決して欲しい」と

ミルドレッドへは
「憎しみだけで生きないで欲しい」と



火だるまになったディクソンを
必死に助けたのは小人症のジェームズ
彼はいつも揶揄され差別されてきたけれど
その怒りには支配されていない
うっぷん晴らしや仕返しなどはせず
ディクソンの命を懸命に救い
放火犯のミルドレッドもかばいます



ディクソンが病院で同室になったのは
偶然にも自分が2階から突き落としたレッドでしたが
レッドはそれを知っても
怒りの感情は感じても
ぶちまけることなく
やり返すことなく
全身大火傷を負っているディクソンをいたわり
オレンジジュースを差し出すのです



広告に火を付けたのは
元夫チャーリーだと知ったミルドレッドは
憎しみに満ちた顔でチャーリーに近づきます
私はまたここで
ミルドレッドが怒りを爆発させて
修羅場が展開すると予想していたのですが...

チャーリーと一緒にいたガールフレンド
19歳の可愛い女の子が
読んでいた本のしおりに書いてあったという「言葉」を
紹介するのですが
(どんな言葉だったかは忘れてしまいました)
その素晴らしい「言葉」の持つパワーと裏腹に
それを紹介している女の子は、頭が弱くて
立派なことを言おうとしているのだけど
とてもトンチンカンで
緊迫した状況なのに
思わず笑ってしまうような気の抜けたことを言うのです

可笑しかったなあ
もう全てが
どうでもいいよ、と
力が抜けてきます

ミルドレッドは怒りをまき散らすことなく
チャーリーにワインをプレゼントして
その場を去ります

彼女が怒りに対して怒りで返さなかった
初めてのシーンでした



怒りの連鎖が優しさの連鎖に変わってからは
あんなに嫌なヤツだったディクソンに
非常に親しみを感じてしまいました
とても好感が持てて愛すべき人に見えました
サム・ロックウェルは
すごく役者さんとして上手い人だと思いました



ミルドレッドも全然好きになれなかったのだけど
上手い役者さんだと思いました



結局、犯人は見つからず
いっぱい人を傷つけて
ミルドレッドとディクソンの奮闘は
一体なんだったんだろう?
という
なんだか救われない気持ちのまま
エンディングに向かいます



ミルドレッドとディクソンは
ものすごいフラストレーションを
抱えたままのようで

なにかが確実に変わっていたのでした



見る人に委ねている余韻のある終わり方
なんだかスッキリしないんだけど

まあ、レイプ犯を射殺しに行くこと
乗り気になれなくて
よかったなーと思いました



ちょっとした救い
でも
あんなに怒りに猛り狂っていたのが
ようやくこの救いまでたどり着けたのだと
み終わってだいぶ経ってから
じわじわ、ほっこり感じています
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