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腫瘍内科医一家のニューヨーク滞在記

ニューヨーク研究留学中での出来事を感想を交えてメモ代わりにつづります。

仮説の落とし穴

2010年07月29日 15時53分55秒 | 日記
 このところ、実験系が安定しつつありデータはそれなりに出るようになってきたのだが、すっきりしない日が続いている。

 先週末の実験結果にもとづいて次の実験計画を立てたのだが、試薬等の実験材料がそろうまで少し待ち時間ができてしまった。
 
 昨夜、別のプロジェクトの実験結果を解析して出てきたデータは個人的には興味深いが、その現象が生じている原因と結果をつきとめる方法が思いつかない。実験を進めていくと過去に論文で報告されていることが当てはまらない場面に遭遇することが結構あるのが困りものである。
  
 こちらの研究者(とくに医師研究者)は、予め立てた仮説だけにあわせるように研究を進めてしまう人が相当数いるように感じる。研究費を継続的に獲得し期限内に結果を論文にまとめていく義務を果たすためなのだろうが、初めから答えありきといったような研究手法はいかがなものかと思う。そんなことで真実が見出せるはずがない。
 いいかげんなデータであっても、とにかく論文を書いて、研究予算をとったものが勝ちという風潮がひろがってしまうと、いわゆる「やったもの勝ち。」といったおかしな考え方を助長してしまいかねない。
 もちろん仮説なしには何も始まらないのであるが、自然現象は人間の予測通りのメカニズムであるとは限らない。あまりにも当たり前のことであるが、我々はいつもそのことを肝に銘じておかなければならない。
 自分自身の倫理観との戦いなのだと実感するこの頃である。