万城目研究

「鴨川ホルモー」とか「プリンセス・トヨトミ」とか「鹿男あをによし」とか

『プリンセス・トヨトミ』の泣きどころ(ねたばれ)

2011年04月29日 | 『プリンセス・トヨトミ』

ねたばれです。







もちろん、松平が父親が自分に伝えたかった事を知るシーンは大好きだけど、なぜか思いもかけず「ぐっ」と来てしまう一文がある。

それはあまりにやりすぎじゃないか。
そう人々が思ったとき、すべては始まったのだという。


ここから始まる、大阪国成立までの物語にやられてしまう。
判官びいきとも浪速節とも違う。
ただ、「放っておけない」と言う、大阪人のお節介気質。

「これは、あまりにかわいそうじゃないか」

と言う気持ちだけで、大胆な、とひとことで片付けるにはあまりにも大胆な行動に出てしまう、直情気質。
そのくせ、緻密なのかいい加減なのかわからない、のらりくらりとした態度で強い者からの追求をかわしてしまう。
根っからの「町人」気質。

「大阪国」と言う、とことんファンタジーな物語に、でも、ひょっとしてほんとにあるんじゃないの?と疑ってしまう程にリアリティーを持たせ得ているのは、ひとえに、「大阪人ならやりかねない」と言う、そのひとことに尽きる。

大阪人って言うのは、おもろくてえげつないだけじゃなく、お節介で、「人情」と言うようなちょっと古臭い言葉を使って照れ隠しをしているけれど、実は、とても優しい。
それを知っているから、

「それはあまりにやりすぎじゃないか」
「これは、あまりにかわいそうじゃないか」

と言う理由だけで、天下をコケにする大阪人の姿が容易に想像できる。
何て、あほなんだろう。
あほ過ぎて、泣ける。


まぁ、憎たらしいこともあるんですけどね。
でも、時々、大阪に生まれたかったなぁ、って正直思うことはある。



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