介護と福祉、医療を考える

前文京区議会議員の鹿倉泰祐です。
介護難民・医療難民が生まれるのは何故か。
介護と福祉、医療について考える。

成年後見制度の現状について

2008-12-25 15:53:52 | Weblog
 介護保険市民オンブズマン・文京の学習会で、弁護士より成年後見制度についてのお話を伺いました。
 私も成年後見制度の利用について以前相談を受けたことがありますが、本当に制度を利用すること自体が大変でした。
 以下のお話は成年後見制度のイロハの話ですが、お読み頂ければと思います。

 成年後見制度は、簡単に言うと利用者本人の判断状況によって3つの形があります。
 常に判断力を欠く状態の方は、“後見”で、重要な財産管理を本人がするには常に援助が必要という状態の方は“保佐”、重要な財産管理を本人がするには援助が必要な場合がある場合は“補助”になり、それぞれ後見人、保佐人、補助人が家庭裁判所で選任されます。

 成年後見人等の具体的な仕事は、財産管理に関する法律行為や身上監護に関する法律行為及び家裁への報告です。

 私は7件程、家庭裁判所から選任を受けています。
 具体的な事例としては、虐待も疑われるケースや身寄りの無い方、財産管理ができない方のケース、及び任意後見人の監督人等で家裁より選任を受けています。

 任意後見制度は、判断力があるうちに、本人が、将来判断能力が低下した時に備えて、予め任意後見人を決める制度ですが、任意後見人は本人が選任した者が当然なるので、監督人は本人指定がそのまま選任される場合と家裁が独自に選任する場合があります。
 
 監督人は、家裁に対して定期的な報告があり、後見人は監督人に対して定期的に報告しなくてはならないのですが、親族の場合は定期的な報告が滞り、報告をお願いしてもダメな場合があり注意が必要です。

 成年後見制度利用に要する費用は、鑑定費用が10万円~5万円でその他に収入印紙等の諸経費がかかります。成年後見人等の報酬は、家庭裁判所が本人の資力、後見人等の職務内容等を考慮して決定しますが、お金のない人からは、事実上殆ど実費以上のものは請求できないという事態が発生します。

 例えば、年金が月14~15万円で、医療費が2万円前後とすると家賃や食費で残額が0円ということもありますし、遺族年金の手続き中に亡くなった方は年金も受給できなかったりで、後見人の報酬も無理なこともあります。

 後見をしていた本人が亡くなった場合で、引き取る方がいない場合、本来は後見人の権限と義務は本人死亡時までなのですが、放置できませんので、事務管理としてその後の葬儀、埋葬まで手配することになります。葬儀代も殆どない人もいますので、棺をいくらにするとか火葬場の支払いをいくらにするとか、葬儀社にギリギリの料金を依頼する等本当に大変な仕事です。

 身寄りがない方の場合は、入院すると大変です。病院が人工呼吸器つけるとか、延命処置をするとかしないとかの判断を後見人に求めてくることがありますが、そんな権限は与えられていませんし、困ることが多いのです。

 全国的な成年後見等の申立件数は平成19年度で、24,988件、その内、後見開始は21,297件、保佐開始は2,298件、補助開始は967件、任意後見監督人選任426件です。

 家裁に申立てが行われても取り下げになるケースもありますが、家庭裁判所が審判の手続きが妥当だという判断をしているにもかかわらず、申立人によって取り下げられてしまったら本人の権利がどう守られるのか問題です。

 親族間における窃盗と横領の場合は、親族相盗例とういのですが、刑を免除されたり(刑法244条1項)、告訴がなければ公訴を提起できなかったりする(刑法244条2項 親告罪)という特例がありますが、後見人の場合は本人との間に親族関係があっても犯罪になります。

 だから後見人が使い込んだとか、窃盗した場合は家裁が職権で解任しますが、こういう事件が新聞でも多々報道されています。後見人となった親族は、本人に対して甘えを持つ場合もあり、勝手に書類に判子を押せばそれで契約行為は成り立ってしまうのですから、それを常時家裁が監視するのはなかなか困難です。

 成年後見人等と本人の関係ですが、親7.9%、子31.7%、兄弟姉妹12.0%、配偶者8.6%で、職業として後見を行っている弁護士は7.7%、司法書士10.5%、社会福祉士5.3%ですが、今後の後見制度の利用の増大を考えると市民の後見人が増えると思います。

 しかし、市民や親族の場合は帳簿のつけ方も指導しなくてはならず、市民による後見人を支える制度が必要だと考えています。

 家裁は、後見人等を選任する場合は、法定相続人の範囲から意見を聞きますが、兄弟で意見が割れる場合は、家裁にある推薦人名簿で家裁が弁護士等から決めることになります。

 弁護士にするか司法書士にするか、社会福祉士にするか等は、本人の抱えている状況に応じて決定されることになります。(文責 鹿倉)