高校生に入学したての頃。
工業高校の一年生はピリピリしていた。
各科対抗の戦争があったり、なめられてはいかんと皆、殺気立っていた。
その頃はヤンキー全盛期でもあり、とうちゃんもやはり時流に乗って
喧嘩上等の赤テープを巻いていた。
実際に他校の私立男子校と立ち回りをしたりして調子に乗っていた。
通学の地下鉄は戦場であったのだ。
いつも一緒に通学していた連れとヌンチャクを持って睨みを利かせていた。
そしてあの恐怖の時がやってきたのである。
二人のやんちゃそうなヤンキーが隣の車両からメンチを切ってきた。
こっちも睨みつけてメンチの切り合い。
「おい。次の駅で降りろや」
「上等だ。てめぇら」と、啖呵をきった途端。
後ろから大勢のそいつらの仲間。
その中に数日前におちょくった奴がいた。
完全に囲まれた俺たちは言葉も出ない。
「よう。俺のこと覚えてるか」
「いいぼんたんはいてるな」
「おー。おー。さっきまでの威勢はどこにいったんだ?おー?」
と7、8人の某高校の奴らに言われたい放題。
漫画や映画なら格好良く立ち回ったりするシナリオだが
現実はそんなに甘くは無い。
次の駅に着いてしまった時、連れと二人で電車から意地でも降りず
服やら鞄やら引っ張りまくられ、それでも手すりにしがみつき降りず。
駅員も来ることなくかなりの間、停車していたがなんとか扉は閉まった。
降りてたら、まぁ間違いなく着てる学ランは剥ぎ取られ
まともには帰らせてはくれなかったであろう。
それからの地下鉄はその高校の生徒がいないかビクビクしたものだ。
数ヵ月後にその発端になったおちょくってしまった奴ととうちゃんの
ヤンキー仲間が連れだった事が解かり狙われずに済んだのだが。
この手の話はまだまだたくさんあるが・・
高校1年生の血気盛んな頃。
ほんとに無駄な時間だったなぁと思う。