午前中、お客さんから、
「さっきテレビのリモコンを買った者だが、おたくは不良品を売りつけるんか!」と怒鳴って電話がかかってきた。
電話に出たぼくは、一応わびを入れたあと、
「電池は新しいのをお使いでしょうか?」とか「リモコンモードは間違ってないですか?」とか、いろいろと質問してみた。
しかし、お客さんは「不良品」の一点張りで、ぼくの質問には答えようとしない。
挙げ句の果てに、「責任者呼べ」「もうお前んとこで買えん!」などと言い出した。
電話じゃ埒があかないので、ぼくは
「電話ではよくわかりませんから、今から見に行きます」と言い、お客さんの住所と名前を聞き出して電話を切った。
お客さんの家に着くと、お客さんは玄関先で待っていた。そしてぼくの顔を見るなり、
「不良品を売りつけやがって。消費生活センターに訴えるぞ」などと悪態をついた。
玄関先で文句を言われてもことは解決しないので、とりあえず家の中に入れてもらい、リモコンを見てみることにした。
なるほど、お客さんの言うとおり、テレビはつかない。
「ほら見ろ、不良品やろうが」と、お客さんは勝ち誇ったように言った。
『電池が切れているのかも』と思ったぼくは、用意していた新しい電池を取り出した。
それを見て、お客さんは言った。
「おまえはバカか。電池を入れ替えてもいっしょやろうが。元々不良品なんやけ」
「やってみらんとわからんでしょ?」
「直るわけないやないか。まあいい。やってみたら不良品ということがわかるやろ」
「じゃあ、やってみます」と言って、ぼくはリモコンの電池カバーを外した。
「!?」
「ほら見てみ、やっぱり不良やろうが」
「お客さん、電池はどうしました?」
「えっ、電池? 入っとるやろうが」
「いいえ、入ってないですよ」
そう言って、ぼくはリモコンをお客さんに見せた。
「そんなはずはない。ちゃんと入れたぞ」
「でも、入ってないですよ」
「おかしいなあ」
「これじゃ、テレビはつきませんよね」
「・・・」
電池を入れると、リモコンは正常に作動した。
「おかしいなあ。確かに入れたんだがなあ」と言ったあと、
「今から出かけないけんから、帰ってくれ」と言って、ぼくを追い返した。
それまでの悪態に対する謝罪は、一切なしだった。
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