吹く風ネット

古い手紙

『筆不精』という記事に、筆不精になったのは30歳を超えてからで、20代までは頻繁に手紙を書いていたと書いたのだが、その下書きを紹介した記事を見つけた。

2003年1月19日

 その1
完全に風邪を引きました。
風邪薬は胃をこわすそうなので、毎日お酒の世話になっています。
これだって胃に悪いのにね。
出かける前にまず一杯、帰ってからうがい代わりに一杯、食前に一杯、食後に一杯、寝がけに一杯。
一升瓶なんて、すぐに空くものですね。
でも、最近は少々うんざりしています。
やはり、健康な時に飲む酒が一番おいしいです。
それも飲み過ぎないように飲むのがね。・・・

 上に書いたのは手紙の下書きである。
 80年の冬だったと思う。あの頃、出かける前は朝食代わりに必ず酒を飲んでいたし、下宿に戻ると一升瓶を片手にうがいをしていたんだった。
 しかしこれを見ると、この頃から病院に行って風邪を治そうという考えは持ってなかったようだ。
 ところで、この手紙はいったい誰に出したんだろう?今となっては、まったくわからない。 

その2
・・・、最近ぼくは『カバ丸』と呼ばれています。
別冊マーガレットの『伊賀のカバ丸』にぼくが似ているそうなのです。
・・・・
この間胃けいれんを起こしたと言いましたが、それ以来用心のためにチャンチャンコ(前開きベスト)を着て外出するようにしたのです。
ところが、それを見た知人の一人が、「私の知り合いに、チャンチャンコを着たカバ丸がいる」とその友人に話したそうです。
それを聞いた、その友人が「一度見てみたい」と言ったとのことで、今日、「今度の土曜日に見に来るから、よろしくね」と言われました。
世の中暇な人が多いですね。
でも、ぼくは見せ物ではない。
土曜日はチャンチャンコを着て出ないようにします。・・・

 これも誰に宛てたものかわからない。
 胃けいれんの話が出ているから、書いたのは79年の秋頃だと思う。
 そういえば、あの頃『カバ丸』と呼ばれていた記憶がある。
 チャンチャンコは今でも覚えている。新宿の丸井で買った物である。ぼくのお気に入りの一着で、いつもそれを羽織っていた。東京から離れる時に横須賀の叔母にあげたので、今は手元にない。

その3
三人とも、元気にしていますか。
ぼくはもう25歳になります。
最近、白髪も出てきたようです。
相変わらず独身で、暇さえあれば飲みに行っています。
同級生で結婚した人もかなりいるのですが、人は人と割り切って、気楽にやっています。
早いものですね。
東京を離れてから、もう三年になります。
あれからぼくもいろんなことがあったのですが…
例えば、長崎屋にいたとか、フリーライターであったとか、セールスマンをやっていたとか。
結局、今の仕事に落ち着いているわけです。
あ、今は楽器屋さんです。・・・

 これは福島の友人に宛てたものである。その友人は、福島に戻ってから、東京時代につき合っていた人と結婚した。
 三人と書いているから、もうその頃には子供が一人いたことになる。25歳と書いているから、20年前である。ということは、その子ももう20歳を過ぎているのだろう。
 その友人はぼくより2歳年下だったから、今43歳か。もしかしたら、もうおじいさんになっているかもしれない。もしそうだったら困るなあ。ぼくより年下のじいさんなんて考えたくない。
 それに、この先、その友人と会うようなことがあった時に、孫を抱きかかえながら「しんたさん、孫はかわいいよ」などと言い目を細められたら、どう返事していいのかわからないじゃないか。
 ところで、ぼくより若い男を「おじいちゃん」と呼ぶその孫は、頭の真っ白なぼくのことを果たして何と呼ぶのだろう。
 


『その3』は、例の連絡先がわからなくなってしまった友人に書いたものだ。
 この記事を書いたのは、2003年なのだが、その10年前にぼくは会津に遊びに行っている。記事には三人と書いているが、その時には子供が二人増えており、総勢五人になっていた。
 本当にどうしているんだろう。連絡先がわかったら、おいしい明太子を送ってやるのに。

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