吹く風ネット

煤けた箱

 前の会社にいた頃、たまに倉庫で荷受けをすることがあった。

 ホームセンターだったので、毎日かなりの量の商品が入荷していたのだが、時々その中に間抜けな簡字体漢字と不格好な仮名文字が印刷してある、煤けた段ボール箱群が混じっていることがあった。

 ぼくはこの箱を触るのが嫌だった。妙な臭いがするし、虫でもいるのか触った後はいつも腕にブツブツが出来ていたのだ。
 そこでこの箱を検品する時は、それが夏の暑い時でも長袖のジャンバーを着込み、分厚い軍手をはめて、直接肌に触れないようにしていたものだ。

 側面に中華人民共和国と書かれたその箱は、ほかの荷物といっしょに大型トラックでうちの店まで運ばれてきたのだが、運転手さんはいつも同じ人だった。いい人で、よくコーヒーなどを奢ってくれたものだ。
 ある日その運転手さんから、「よかったらこれ食べて」と、小さな紙袋をもらったことがある。中身は肉まんで、これがすごくおいしかった。
「これも中華人民共和国ですか?」とぼくが聞くと、
「そんなわけないやろ」と言って、運転手さんは笑っていた。

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