吹く風ネット

街の灯

 かつて北九州の小倉駅前に『黄昏』という喫茶店があった。ぼくは東京に出る前、小倉でアルバイトをしていたのだが、その帰りにバイト仲間とよくその喫茶店に行っていた。午後5時に終わる仕事だったので、『黄昏』に着く頃は、本当に黄昏れ時で琥珀色の空が街を照らしていた。
 その翌年、ぼくは東京にいた。上京した当初は、新宿とか池袋に行ってブラブラしていたのだが、だんだんその人ごみにも飽きてきた。そんなある日、ぼくは新宿から中央線に乗りかえて中野に行ってみた。着いたのは夕方だった。駅前は琥珀色に染まり、その雰囲気がなぜか小倉駅前に似ていた。それ以来、望郷の念に駆られると、ぼくは中野に行くようになった。

『街の灯』

ほんのひとときの黄昏が
今日のため息をつく
病み疲れたカラスたちが
今日も帰って行く
 昔描いた空は消えはてて
 さて、帰る家はあったんだろうか
琥珀色の時の中で
街の灯は浮かぶ

明るい日差しの中でも
笑わないカラスが
すすけた街の灯を
見つめては笑う
 昔描いた空は消えはてて
 さて、淋しくはないんだろうか
堪えきれない切なさに
街の灯は浮かぶ

 → ♫街の灯

 

 なお、この『街の灯』のことは、昨年の8月15日の記事に、ローカルネタとして書いている。またその翌日の記事には、その後の喫茶『黄昏』のことを書いている。本当に「昔描いた空は消えはてて」しまった。

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