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「母性」感想

【ネタバレ】

◎「母性」

 「母の愛が、私を壊した。」
 「一つの事件。母と娘、二人の語り手。物語は[あなたの証言]で完成する。」
 「娘の証言を信じないで下さい。 母の証言を信じないで下さい。」

 2022年11月23日(水・祝)公開、監督は廣木隆一、脚本は堀泉杏、原作は湊かなえ、115分(?)。
 戸田恵梨香(ルミ子の役)、永野芽郁(清佳。ルミ子の娘)、大地真央(露木華恵。ルミ子の実母)、高畑淳子(ルミ子の義母)、三浦誠己(田所哲史。ルミ子の夫)、中村ゆり(佐々木仁美。ルミ子の親友で哲史の幼馴染みで浮気相手)、山下リオ(田所律子。哲史の妹、ルミ子の義妹)など。

 総合評価は、上中下で上くらい。




○ルミ子の実母が大地真央さん、義母が高畑淳子さんというだけで十分に濃いなと事前に思っていましたが、濃かったです。
 「絶対的に正しい母」ということになっている役である大地さんの笑顔が怖いです。
 「絶対的に間違っている母」ということになっている役である高畑さんの人間味が怖いです。

 さて、母性本能が先天的なものと仮に定義するなら、後天的な「母性本能」は別の名で定義が必要です。
 母性本能が後天的なものと仮に定義するなら、先天的な「母性本能」は別の名で定義が必要です。
 なお、一般に言われてる母性本能は後天的なものですし、本作で母性本能のように言われていることもほぼ後天的なものです

 男性が情けない、哲史が情けない。母娘の負の連鎖は、特に日本の男性は家庭から逃げるから途絶えにくいです。ですが、哲史に関しては、さほど愛している訳ではないのに結婚したことから家庭にあまり関わらないという面があるので、異様な母娘関係に疲れたとかが主因ではないので、別の事情です。

 ルミ子も清佳も、各々の母の言いつけが正しいと思っているので厄介者です。火事で家具の下敷きになった華恵と幼少時の清佳、ルミ子は華恵を助けることしか考えませんでしたが、華恵は母親なら清佳を助けろと言い、それでも泣き叫んで拒否するルミ子、仕方なく近くにあったハサミで首を切って自殺する華恵。それを高校生になってから知って、母と自分が大好きな華恵が死んだのは自分のせいだと思って確実に死ねる方法で自殺未遂までした清佳なのに、大人になっても母の言う事Loveです。

 ルミ子は清佳を強く抱きしめたと思っていて、清佳はルミ子に強く首を絞められたと思っていて、それがそれぞれの観点から映像化されています。どちらが思っていることが正しいのか、というのは不明です。
 ルミ子が思っている事とルミ子の行動が異なることもあれば(実際に首を絞めたのかもしれない。)、清佳が日ごろから思っていることによりルミ子の行動が別の意味を持ってしまう(強く抱きしめただけかもしれない。)、という事です。仮にルミ子は強く抱きしめただけだとしても、ルミ子の清佳への日頃の言動が清佳にとってはルミ子に首を絞められたと思わせたという事です

 本作は、母娘関係、家族における男性、について考えるきっかけになるのでは。

○清佳が学生運動を解説した本を読んでそう思ったからですが、哲史と仁美に、学生運動に参加したのは何でもいいから反抗したかっただけでしょ、外国の戦争に反対をして仮に止められなくても自分は安全で傷つかないからでしょ、という意味のことを言っていましたが、この2人は反論しなかったのでそうだという設定なのでしょう。しかし、それらに実際に参加した人の多くがそうだったとは言えないのでは(私は学生運動に参加していないし直接見聞きしてもいないので、本などを読んでの感想です。)。
 また、清佳の言うように、反対して主張が通らなくても安全で傷つかないことに反対してはいけないというのなら、現在の日本国内の諸々の問題ある政策に反対する理由の一定程度がなくなりますので、清佳の言うことは間違っています。ある政策が導入されても、それにより直接の不利益を被る人は多くの場合は少数派ですし、ある政策による不利益が出るのは100年後とかの現在生きている人がいなくなってからかも知れません。

 現在で言えば、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界的なエネルギー高騰などにより日本の多くが悪影響を受けています(「多くが」であって「日本人全員が」ではありませんし、それにより利益を受けている日本企業も日本人もいます。)。ロシアに抗議することは、清佳の基準では構わないのでしょう。
 一方、中国国内におけるウイグルへの人権侵害は日本への直接的影響はほぼありませんから、清佳の基準では中国のウイグル政策に反対することは批判されるのでしょう。また、ここ数年で特にですが、ウイグル政策に批判的でないと欧米から批判され日本が実質的不利益をこうむることとなったことにより、間接的に一部の日本企業に悪影響がおよぶようになったものの、悪影響がないほとんどの日本人が中国のウイグル政策に反対することを清佳は批判しないとおかしいです。


【shin】


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