「どおおおおお……!」
大王の手から放たれた光に包まれたコーイチは変な悲鳴を上げた。光の衝撃が強く、コーイチは尻もちをついてしまった。
「おやおや、尻もちの石像とは、笑わせてくれますな」大王は笑った。「ま、あなたにはふさわしそうですけどね」
光が薄れて行く。しかし、そこには尻もちをついて、あきらめたように目を閉じているコーイチがいた。石像になってはいない。
「あれれ~っ?」コーイチは不思議そうに首をひねりながら立ち上がった。「……おかしい、石像になっていない……」
「それはこちらのセリフだ!」大王が怒鳴る。「……何故、何故だ……」
三人娘も不思議そうに互いを見合っている。
「ひょっとして……」逸子がぼそっと言う。「大王の業、効かなくなったんじゃない? ほら、もうおじいちゃんだし……」
「なんだとお! 私が衰えたとでも言いたいのかあ!」大王は逸子の檻の前に立った。「小娘が! その口、封じてやるわ!」
大王の両手が光った。その手を逸子めがけて振り下ろす。光は檻ごと逸子を包んだ。
悲鳴を上げる間もなく、檻と逸子は石像になってしまった。
「なんて事するのよ!」花子が叫ぶ。「この弱い者いじめ!」
「最低です!」洋子も叫ぶ。「逆らえない逸子さんを!」
「うわあああああ! 逸子さんっっっっ!」
二人娘の怒声をかき消すようなコーイチが叫び、逸子の檻に駆け寄った。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう……」コーイチは逸子の檻の周りをおろおろしながらぐるぐると回る。そして、膝まづくと檻にすがった。「……逸子さん……」
とたんに檻が光りはじめた。コーイチは驚いて、また尻もちをついてしまった。光が治まると、檻も逸子も元に戻っていた。
「……コーイチさん……」呆然とした声を出し、逸子はコーイチを見ている。「わたし……」
「いやあ、よかった、よかった!」コーイチは尻もちをついたまま喜んでいる。「どうなる事かと心配したよ」
「……何故、何故だ……」大王はコーイチの様子を見て苦悶の表情になる。それから、じっと自分の両手を見つめた。「本当に、衰えたのか……」
「あはははははは!」
この成り行きを見ていた花子が突然笑い出した。
「花子さん!」洋子が驚いて花子を見る。少し不安そうな表情をしている。「気を、気を確かに持ってください!」
「あはははは……」花子は笑いながら、洋子にうなずいてみせた。「大丈夫、大丈夫よ、洋子ちゃん。でも…… あはははは!」
「おのれっ! 何がおかしい!」
大王が花子を怒鳴る。
「コーイチさん!」花子は大王を無視してコーイチを見る。落ち着いた声を出す。「お願いがあるの」
「え? 何だい?」改まった花子にコーイチは立ち上がった。「ぼくに出来る事なら……」
「檻が無くなるようにって、心の中で願ってみて」
「はあ?」驚いた顔をするコーイチだった。思わず大王をちら見する。「檻が無くなるようにって……」
「やってみて!」花子が急に必死な表情になった。「お願い!」
「……わかった……」
花子に圧倒されたコーイチは、目を閉じて口の中でぶつぶつと何か言い始めた。
「花子さん……」洋子はさらに心配そうな表情になった。「本当に、大丈夫なんですか……」
「そんなに大げさにしなくても良いと思うんだけど……」花子はコーイチの様子を見ながらつぶやいた。「……ま、本人の好きにしてもらうわ……」
しばらくすると、三人娘を囲っていた檻それぞれが光り始めた。光が消えると、檻は無くなっていた。
「は?」「え?」「あれれ~っ!」「なんと!」
逸子と洋子とコーイチと大王が同時に驚きの声を上げた。
「ほうら、思った通りだわ!」花子は勝ち誇ったかのように立ち上がり、伸びをする。「大王、あなたの業が通じない理由、わかるかしら?」
「やっぱり年齢から来る衰え、かしら?」逸子が言う。「結構なおじいちゃんだから……」
「でも、一瞬とは言え石像になったわけですし……」洋子は腕組みをして首をかしげる。「力が弱まったとは思えませんが……」
「じゃあ、教えてあげるわ」花子は大王に向かって笑顔を向けた。「コーイチさんはね、この世界に好かれちゃったのよ!」
「どう言うことだ!」大王がコーイチを見る。「こんな貧相な若造が……」
「洋子ちゃん」花子が洋子を見る。「ほら、マスターが暴れて、みんなやられちゃった時があったでしょ? でも、あの後みんなが気がついたら……」
「壊れた建物はみな直っていて、わたしたちのけがも回復していました」
「そうだったわね」
「でも、それは逸子さんがやったんじゃないかって…… あ、それは無理ですね!」
「そう、あの時は、逸子ちゃんは大王に操られてたのよね」
「と言う事は、やっぱり、あの件にはコーイチさんが絡んでいたって事ですか?」
「そう言う事になるわ」
「でも、コーイチさんは花子さんや大王と違って、この世界の物は操れないですよ…… あっ!」
「ね、わかったでしょ? この世界がコーイチさんを守ろうとしているのよ。つまりは、この世界に好かれちゃったってわけよ!」
「……でも、どうして……」
「そりゃ、わかるでしょ?」花子が急に頬を染める。「わたしがコーイチさんを大好きになっちゃったから、それが伝わったのよ」
「わ~っ!」洋子も頬を染める。「そんなはっきり言うなんて、花子さん大胆!」
「なによ、洋子ちゃんだって、わたしに負けないくらい、コーイチさんが好きなんでしょ?」
「えっ…… まあ、そうです……」
「ほうら!」
花子と洋子は抱き合ってきゃあきゃあ言いながら跳ねている。
「わたしのコーイチさんよ!」
逸子が怒った顔をして二人に向かって言う。二人の動きが止まる。しかし、逸子はすぐに笑顔になった。
「でも、二人なら平気よ。いくら好きになっても気にしないわ。だって、わたしのコーイチさん大好きにはかなわないだろうから!」
「何言ってんのよ! わたしの方が逸子ちゃんより上よ!」
「わたしだって、負けてはいません!」
三人娘はきゃいのきゃいのと跳ね回っている。
「いい加減にしないか!」
大王が怒鳴った。
三人娘の動きが止まる。笑顔が消え、大王をにらみつける。三人はそれぞれオーラを立ち昇らせた。
「さあ!」花子は逸子と洋子に言う。「ここから反撃よ!」
その言葉を合図に、ぽきぽきぽきと指の関節を鳴らし始める。
大王の手から放たれた光に包まれたコーイチは変な悲鳴を上げた。光の衝撃が強く、コーイチは尻もちをついてしまった。
「おやおや、尻もちの石像とは、笑わせてくれますな」大王は笑った。「ま、あなたにはふさわしそうですけどね」
光が薄れて行く。しかし、そこには尻もちをついて、あきらめたように目を閉じているコーイチがいた。石像になってはいない。
「あれれ~っ?」コーイチは不思議そうに首をひねりながら立ち上がった。「……おかしい、石像になっていない……」
「それはこちらのセリフだ!」大王が怒鳴る。「……何故、何故だ……」
三人娘も不思議そうに互いを見合っている。
「ひょっとして……」逸子がぼそっと言う。「大王の業、効かなくなったんじゃない? ほら、もうおじいちゃんだし……」
「なんだとお! 私が衰えたとでも言いたいのかあ!」大王は逸子の檻の前に立った。「小娘が! その口、封じてやるわ!」
大王の両手が光った。その手を逸子めがけて振り下ろす。光は檻ごと逸子を包んだ。
悲鳴を上げる間もなく、檻と逸子は石像になってしまった。
「なんて事するのよ!」花子が叫ぶ。「この弱い者いじめ!」
「最低です!」洋子も叫ぶ。「逆らえない逸子さんを!」
「うわあああああ! 逸子さんっっっっ!」
二人娘の怒声をかき消すようなコーイチが叫び、逸子の檻に駆け寄った。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう……」コーイチは逸子の檻の周りをおろおろしながらぐるぐると回る。そして、膝まづくと檻にすがった。「……逸子さん……」
とたんに檻が光りはじめた。コーイチは驚いて、また尻もちをついてしまった。光が治まると、檻も逸子も元に戻っていた。
「……コーイチさん……」呆然とした声を出し、逸子はコーイチを見ている。「わたし……」
「いやあ、よかった、よかった!」コーイチは尻もちをついたまま喜んでいる。「どうなる事かと心配したよ」
「……何故、何故だ……」大王はコーイチの様子を見て苦悶の表情になる。それから、じっと自分の両手を見つめた。「本当に、衰えたのか……」
「あはははははは!」
この成り行きを見ていた花子が突然笑い出した。
「花子さん!」洋子が驚いて花子を見る。少し不安そうな表情をしている。「気を、気を確かに持ってください!」
「あはははは……」花子は笑いながら、洋子にうなずいてみせた。「大丈夫、大丈夫よ、洋子ちゃん。でも…… あはははは!」
「おのれっ! 何がおかしい!」
大王が花子を怒鳴る。
「コーイチさん!」花子は大王を無視してコーイチを見る。落ち着いた声を出す。「お願いがあるの」
「え? 何だい?」改まった花子にコーイチは立ち上がった。「ぼくに出来る事なら……」
「檻が無くなるようにって、心の中で願ってみて」
「はあ?」驚いた顔をするコーイチだった。思わず大王をちら見する。「檻が無くなるようにって……」
「やってみて!」花子が急に必死な表情になった。「お願い!」
「……わかった……」
花子に圧倒されたコーイチは、目を閉じて口の中でぶつぶつと何か言い始めた。
「花子さん……」洋子はさらに心配そうな表情になった。「本当に、大丈夫なんですか……」
「そんなに大げさにしなくても良いと思うんだけど……」花子はコーイチの様子を見ながらつぶやいた。「……ま、本人の好きにしてもらうわ……」
しばらくすると、三人娘を囲っていた檻それぞれが光り始めた。光が消えると、檻は無くなっていた。
「は?」「え?」「あれれ~っ!」「なんと!」
逸子と洋子とコーイチと大王が同時に驚きの声を上げた。
「ほうら、思った通りだわ!」花子は勝ち誇ったかのように立ち上がり、伸びをする。「大王、あなたの業が通じない理由、わかるかしら?」
「やっぱり年齢から来る衰え、かしら?」逸子が言う。「結構なおじいちゃんだから……」
「でも、一瞬とは言え石像になったわけですし……」洋子は腕組みをして首をかしげる。「力が弱まったとは思えませんが……」
「じゃあ、教えてあげるわ」花子は大王に向かって笑顔を向けた。「コーイチさんはね、この世界に好かれちゃったのよ!」
「どう言うことだ!」大王がコーイチを見る。「こんな貧相な若造が……」
「洋子ちゃん」花子が洋子を見る。「ほら、マスターが暴れて、みんなやられちゃった時があったでしょ? でも、あの後みんなが気がついたら……」
「壊れた建物はみな直っていて、わたしたちのけがも回復していました」
「そうだったわね」
「でも、それは逸子さんがやったんじゃないかって…… あ、それは無理ですね!」
「そう、あの時は、逸子ちゃんは大王に操られてたのよね」
「と言う事は、やっぱり、あの件にはコーイチさんが絡んでいたって事ですか?」
「そう言う事になるわ」
「でも、コーイチさんは花子さんや大王と違って、この世界の物は操れないですよ…… あっ!」
「ね、わかったでしょ? この世界がコーイチさんを守ろうとしているのよ。つまりは、この世界に好かれちゃったってわけよ!」
「……でも、どうして……」
「そりゃ、わかるでしょ?」花子が急に頬を染める。「わたしがコーイチさんを大好きになっちゃったから、それが伝わったのよ」
「わ~っ!」洋子も頬を染める。「そんなはっきり言うなんて、花子さん大胆!」
「なによ、洋子ちゃんだって、わたしに負けないくらい、コーイチさんが好きなんでしょ?」
「えっ…… まあ、そうです……」
「ほうら!」
花子と洋子は抱き合ってきゃあきゃあ言いながら跳ねている。
「わたしのコーイチさんよ!」
逸子が怒った顔をして二人に向かって言う。二人の動きが止まる。しかし、逸子はすぐに笑顔になった。
「でも、二人なら平気よ。いくら好きになっても気にしないわ。だって、わたしのコーイチさん大好きにはかなわないだろうから!」
「何言ってんのよ! わたしの方が逸子ちゃんより上よ!」
「わたしだって、負けてはいません!」
三人娘はきゃいのきゃいのと跳ね回っている。
「いい加減にしないか!」
大王が怒鳴った。
三人娘の動きが止まる。笑顔が消え、大王をにらみつける。三人はそれぞれオーラを立ち昇らせた。
「さあ!」花子は逸子と洋子に言う。「ここから反撃よ!」
その言葉を合図に、ぽきぽきぽきと指の関節を鳴らし始める。
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