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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第三章 窓の手形の怪 8

2021年12月24日 | 霊感少女 さとみ 2 第三章 窓の手形の怪
 心霊サークル「百合恵会」の方針が決まった。明日の朝、早い時間に学校に来て用務員の高島さんを待つ。松原先生の話だと、用務員の人たちは七時には来るそうだ。だから、それよりも前に学校に来なければならない。そこで、時間は六時半に校門前に集合となった。
「ええええっ!」不満の声を上げたのは麗子だった。「その時間だと、わたし四時起きしなきゃならないわよう!」
「どうして?」さとみが不思議そうな顔をする。「起きて着替えて前の日に作ったおにぎり食べながら出てくれば良いだけでしょ?」
「さとみ、あなたと一緒にしないでよね」麗子がむっとする。「起きて軽く美容体操してそれからシャワーを浴びてバランスの取れた朝食をしっかりと食べて着替えて乱れが無いかを確かめてそれから登校しなきゃならないのよ」
「……麗子、毎朝そんな事してるの?」さとみが呆れる。「どうかしてる……」
「だって、どこで誰が見ているか分からないじゃない? 身だしなみは女子の常識、たしなみよ」麗子は言うとアイを見る。「ね? アイもそれくらいやっているんでしょ?」
「まあ、少しは……」アイは言いにくそうに続ける。「麗子とはちょっと違うけど、たしなみはしているかな」
「ほら、さとみ!」麗子が勝ち誇る。「女子ってみんなそうなのよ。一年君たちだってそうよ。ね?」
 話を振られた朱音としのぶは軽くうなずく。「わたしは登校前に髪をブラッシングしています……」朱音が言う。「わたしも……」しのぶが言う。
「さとみだけじゃない? 飛び起きてそのまま学校に来る娘なんて」
 麗子は鼻で笑う。さとみはぷっと頬を膨らませる。
「……でも、わたしの身だしなみって言うのは」アイが言う。「他校のヤツらに舐められないようにするものだから、周りとは違うかもしれないな……」
「わたしも」朱音が言う。「ブラッシングって言ってますけど、玄関にある鏡を見てそこに置いてあるブラシでささっと一、二回するだけです……」
「わたしは時間を少し掛けますけど」しのぶが言って自分の髪の毛を指差す。「天然パーマが強いから、時間が掛かるだけです」
「……だって」今度はさとみが勝ち誇る。「麗子が時間をかけ過ぎなのよ」
「何よ! わたしにはそれくらい時間が必要なの!」
「まあまあ、女子の身だしなみについては、オレがあれこれ言えないけど」松原先生が苦笑しながら割って入る。「でもまあ、自分磨きをするって言うのは大切だと思うよ。綾部だって何かやってんだろ?」
「わたしですか……?」」さとみはおでこをぺちぺちしながら考え込む。その手が止まる。「……早く寝ることくらいかなぁ……」
 皆が笑い出した。笑われたさとみはぷっと頬を膨らませて抗議する。
「ふふふ、さとみって本当、面白いわね」麗子は笑いが止まらない。「……分かったわ。明日は手抜きして時間に間に合わせるわ」
「もちろん、わたしたちも!」アイは立ち上がった。朱音としのぶも立ち上がる。三人でさとみに一礼する。「その時間に間に合うようにします。会長が決めた事ですから!」
「じゃあ、オレも行こう」松原先生が言う。「サークルの顧問としては、生徒たちに何かあったら大変だからね」
「でも、先生」しのぶが言う。「本当は手形が見たいんですよね?」
「ははは、当たりだ」

 さとみは帰宅してピンク色のスエット上下に着替えて部屋でぼうっとしていると、後ろ向きで豆蔵が現われた。さとみは霊体を抜け出させる。
「豆蔵、良いわよ、振り返っても」
「へい……」豆蔵は振り返る。「嬢様、おかえりなさいやし」
「はい、ただいま」
「……で、窓の手形の件はどうなりやした?」
「うん、話を聞いたらね、三階の用具室の窓に内側と外側に手形が付いているんだって。内側は女の人っぽくって、外側は男の人らしいわ。それが重なり合って付いているんだって。でも、何かのせいで直接は逢えないみたい」
「ほう……」豆蔵がにやりと笑う。「何やら悲しい逢い引きって感じでやすね」
「うん。麗子もそう言っていたわ」
「あの怖がり屋さんの麗子さんがでやすか?」豆蔵が驚く。「麗子さん、あっしらが怖くなくなったんで?」
「どうなのかしらね? 明日の朝、その手形を見に行く事にしたんだけど、麗子も来るのよ」
「じゃあ、克服なさったんじゃねぇですか?」
「みんなでぞろぞろと行くし、朝だから、怖くないと思ったんじゃないかしらね?」さとみは鼻で笑う。「これが、手形を付ける霊体を見に夜中に行こうなって言ったら、きっとなんだかんだ言い訳して絶対に来ないわ」
「そうですかい……」
 豆蔵は何か考えているようだ。しかし、さとみには分からない。
「豆蔵……」
「いえ、話は分かりやした。明日の朝、皆さんでしっかりと見ておくんなさい。じゃ、これで失礼いたしやす」
 そう言うと、豆蔵はすっと消えた。


つづく

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