女スパイ ヴァイオレット

「どうだった？　００７の映画？　あれこそわれわれスパイの原点だよ！」
「わたしはそう思わなかったわ」
「……ヴァイオレット、どこが気に入らなかったんだい？」
「だって『ゴールドフィンガー』よ。どんな指で、どんな技を持ってるのかって思っちゃうじゃない！　それなのに……」
「おいおい……」


「どうだった？　００７の映画？　あれこそわれわれスパイの原点だよ！」
「わたしはそう思わなかったわ」
「……ヴァイオレット、どこが気に入らなかったんだい？」
「だって『黄金銃を持つ男』よ。仕込んでいる銃はどんなものか、どう撃ってくれるのかって思うじゃない！　それなのに……」
「おいおい……」


「どうだった？　００７の映画？　あれこそわれわれスパイの原点だよ！」
「わたしはそう思わなかったわ」
「……ヴァイオレット、どこが気に入らなかったんだい？」
「だって『オクトパシー』よ。どんな触手を持っているのか、どう攻めてくるのかって思うじゃない！　それなのに……」
「おいおい……」


「どうだった？　００７の映画？　あれこそわれわれスパイの原点だよ！」
「わたしはそう思わなかったわ」
「……ヴァイオレット、どこが気に入らなかったんだい？」
「だって『ユア・アイズ・オンリー』よ。何を見せてくれるのか、それをどうしてあげたらいいのかって思うじゃない！　それなのに……」
「おいおい……」


「どうだった？　００７の映画？　あれこそわれわれスパイの原点だよ！」
「わたしはそう思わなかったわ」
「……ヴァイオレット、どこが気に入らなかったんだい？」
「だって『ゴールデンアイ』よ。どんな瞳で見つめてくれるのか、見つめられたらどうなっちゃうのかって思うじゃない！　それなのに……」
「おいおい……」


「どうだった？　００７の映画？　あれこそわれわれスパイの原点だよ！」
「わたしはそう思わなかったわ」
「……ヴァイオレット、どこが気に入らなかったんだい？」
「だって『慰めの報酬』よ。何を慰めるのか、慰めたらどんな悦びの報酬がもらえるのかって思うじゃない！　それなのに……」
「おいおい……」