――文化、習慣の違いと英語――
ドイツ人やフランス人が英語を習得するのは、
日本人に比べれば比較にならない程易しい。
英・独・仏語はいずれも
ラテン語から派生した、ないしラテン語の影響を受けた言語なので、
単語や発音や文法が似ている。
更に彼らは文化、習慣を概ね共有しているという点で決定的に有利である。
英語を話すのに、
例えばドイツ人ならば普段Danke schoen (ダンケ・シェーン)というべきところを、
あるいはフランス人ならばMerci beaucoup (メルシー・ボクー) というべきところを、
それぞれThank you very much と単純に置き換えれば済む。
文化、習慣を概ね共有しているから、1対1の置き換えが可能である。
時折、パソコンの翻訳機能を使って、仏→英、英→独 などの
翻訳を行うが、
仏→日や日→独などよりは、はるかに上手にコンピュータは翻訳する。
これは、1対1の置き換えにより翻訳できるからである。
しかしながら日本人の場合はそうは問屋が卸さない。
欧米人が普段「ありがとう」というスィテュエイションで日本人は
「ありがとう」を言わない。
例えば品物を買って店を出るとき, あるいは食事をしてレストランを出るときに、
店員から「ありがとうございました」といわれても日本人は無言で立ち去る。
何故なら、日本の社会ではお金を払う側は
「ありがとう」を言わなくてよいことになっているからである。
一方の欧米人はといえば、自分の方から店員に対して積極的に「ありがとう」を言う。
これは最早言葉の問題ではなく、文化、習慣の違いの問題である。
それ故に、3年前に私は「海外旅行のヒント」という
新書一冊分にも相当する長いエッセイの中で、
「お金を払ってもThank you」、「自動販売機外にはThank youを言おう」と書いた。
海外駐在員の仕事は単に言葉を置き換えることではない。
文化、習慣の違いを念頭にいれて、日本の本社から連絡してきたことを
(言語は英語であっても、発想が日本式であることが多い)
その国で理解され易く、受け入れられ易い表現に替えて伝える。
言葉だけの翻訳ではなく、文化、習慣の違いを考慮した翻訳ともいえる。
例えば日本人は「よろしくお願いします」という言葉を好んで使うが、
これはそのままは訳せない。
もしドイツの客先に対して日本からの輸出商品の値上げを通告する手紙で、
最後に「よろしくお願いします」という文章を添えるとするならば、
それは例えば、
“Thank you very much for your understanding in advance.”などとなる。
そのまま訳せば、「あなたのご理解を前もって感謝いたします」。
日本でこんな文章を取引先に送れば「変なヤツ」と思われるに違いない。
榊原英資氏がその著書「日本人はなぜ国際人になれないか」
(2010年、東洋経済新報社)の中で、
英文和訳、和文英訳で英語を勉強するのが間違い、
翻訳するのではなく英語は英語で勉強せよという意味のことを述べているのも頷ける。
海外旅行や海外留学や海外駐在などの海外体験は
文化や習慣の違いを知り、自国を発見するのに大いに役立つ。
世界全体から見れば他に類を見ない独特の文化、習慣を持つ日本人にとっては
尚更のことである。
それ故、英語学習に加えて海外体験が大切であると楽天の梶村人事課長も
TOEIC ホームページで述べている。
(http://www.toeic.or.jp/square/job/company/koe/0.5.html)
にもかかわらず、最近の日本の若者は
海外旅行も海外留学も海外駐在もしたがらない。
居心地の良い「パラダイス鎖国」(海部美知著、2008年、アスキー新書)に
引きこもる傾向がある。
世の中はますますグローバル化が進んでいるというのにである。
このような状況下で、
楽天の三木谷社長とファースト・リテーリング(ユニクロ)の柳井社長が
相前後して英語の社内公用語化を発表して反響を呼んだ。
また、日本電産の永守社長は「2社の英語公用語化は理解に苦しむ」としながらも、
同社自身は将来の管理職への昇進条件に外国語1ヶ国語、
部長級への昇進には2ヶ国語以上の習得を義務付けると発表して、
これまた話題になっている。
これらのニュースが話題になる理由は、
如何にして国際ビジネスに要求される語学力を養うかという課題が、
単に上述の数社にとっての重要課題であるだけでなく、
広く日本企業全体、日本経済全体にとっての死活問題だからである。
ちょっと話が本筋からそれたが、本章で言いたかったことは、
英語は単なる英和、和英の言葉の置き換えではなく、
その言葉の使われる背景にある文化、習慣、マナーなどとワンセットで
習得されるべきものであるということである。
That's about it for today。(今日はこの辺で)
(続く)
ドイツ人やフランス人が英語を習得するのは、
日本人に比べれば比較にならない程易しい。
英・独・仏語はいずれも
ラテン語から派生した、ないしラテン語の影響を受けた言語なので、
単語や発音や文法が似ている。
更に彼らは文化、習慣を概ね共有しているという点で決定的に有利である。
英語を話すのに、
例えばドイツ人ならば普段Danke schoen (ダンケ・シェーン)というべきところを、
あるいはフランス人ならばMerci beaucoup (メルシー・ボクー) というべきところを、
それぞれThank you very much と単純に置き換えれば済む。
文化、習慣を概ね共有しているから、1対1の置き換えが可能である。
時折、パソコンの翻訳機能を使って、仏→英、英→独 などの
翻訳を行うが、
仏→日や日→独などよりは、はるかに上手にコンピュータは翻訳する。
これは、1対1の置き換えにより翻訳できるからである。
しかしながら日本人の場合はそうは問屋が卸さない。
欧米人が普段「ありがとう」というスィテュエイションで日本人は
「ありがとう」を言わない。
例えば品物を買って店を出るとき, あるいは食事をしてレストランを出るときに、
店員から「ありがとうございました」といわれても日本人は無言で立ち去る。
何故なら、日本の社会ではお金を払う側は
「ありがとう」を言わなくてよいことになっているからである。
一方の欧米人はといえば、自分の方から店員に対して積極的に「ありがとう」を言う。
これは最早言葉の問題ではなく、文化、習慣の違いの問題である。
それ故に、3年前に私は「海外旅行のヒント」という
新書一冊分にも相当する長いエッセイの中で、
「お金を払ってもThank you」、「自動販売機外にはThank youを言おう」と書いた。
海外駐在員の仕事は単に言葉を置き換えることではない。
文化、習慣の違いを念頭にいれて、日本の本社から連絡してきたことを
(言語は英語であっても、発想が日本式であることが多い)
その国で理解され易く、受け入れられ易い表現に替えて伝える。
言葉だけの翻訳ではなく、文化、習慣の違いを考慮した翻訳ともいえる。
例えば日本人は「よろしくお願いします」という言葉を好んで使うが、
これはそのままは訳せない。
もしドイツの客先に対して日本からの輸出商品の値上げを通告する手紙で、
最後に「よろしくお願いします」という文章を添えるとするならば、
それは例えば、
“Thank you very much for your understanding in advance.”などとなる。
そのまま訳せば、「あなたのご理解を前もって感謝いたします」。
日本でこんな文章を取引先に送れば「変なヤツ」と思われるに違いない。
榊原英資氏がその著書「日本人はなぜ国際人になれないか」
(2010年、東洋経済新報社)の中で、
英文和訳、和文英訳で英語を勉強するのが間違い、
翻訳するのではなく英語は英語で勉強せよという意味のことを述べているのも頷ける。
海外旅行や海外留学や海外駐在などの海外体験は
文化や習慣の違いを知り、自国を発見するのに大いに役立つ。
世界全体から見れば他に類を見ない独特の文化、習慣を持つ日本人にとっては
尚更のことである。
それ故、英語学習に加えて海外体験が大切であると楽天の梶村人事課長も
TOEIC ホームページで述べている。
(http://www.toeic.or.jp/square/job/company/koe/0.5.html)
にもかかわらず、最近の日本の若者は
海外旅行も海外留学も海外駐在もしたがらない。
居心地の良い「パラダイス鎖国」(海部美知著、2008年、アスキー新書)に
引きこもる傾向がある。
世の中はますますグローバル化が進んでいるというのにである。
このような状況下で、
楽天の三木谷社長とファースト・リテーリング(ユニクロ)の柳井社長が
相前後して英語の社内公用語化を発表して反響を呼んだ。
また、日本電産の永守社長は「2社の英語公用語化は理解に苦しむ」としながらも、
同社自身は将来の管理職への昇進条件に外国語1ヶ国語、
部長級への昇進には2ヶ国語以上の習得を義務付けると発表して、
これまた話題になっている。
これらのニュースが話題になる理由は、
如何にして国際ビジネスに要求される語学力を養うかという課題が、
単に上述の数社にとっての重要課題であるだけでなく、
広く日本企業全体、日本経済全体にとっての死活問題だからである。
ちょっと話が本筋からそれたが、本章で言いたかったことは、
英語は単なる英和、和英の言葉の置き換えではなく、
その言葉の使われる背景にある文化、習慣、マナーなどとワンセットで
習得されるべきものであるということである。
That's about it for today。(今日はこの辺で)
(続く)