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シードン23

クモ、コウモリ、ネズミ……我が家の居候たち。こっちがお邪魔か? うるさい! いま本読んでるんだから静かに!

痛風発作がやって来た!

2025-07-07 18:23:51 | 日記

「医原病」という言葉がある。
   医療が原因で病気にかかること。

 私の初めての痛風発作はおそらくそれだった。
 いつもの近医で血液検査をやったところ、やや尿酸値が高かった。「治療を要するレベル」ということで、薬を処方された。最近の処方としては標準的な薬のようである。「尿酸生成阻害薬」。
 私はよく知らなかったので、てっきり値が下がれば投薬は中止になるものと思っていたのだが、飲み始めてから調べてみると、「10mgから始めて少しずつ増量し、維持量は通常1日1回40mg」という用法だった。つまり一生飲み続けることが想定されているようなのだ。——ショックだった。医者はそうは言わなかった。
 
 この薬の特徴を説明した箇所には次の記述もあった。

 「尿酸値が急激に下がり過ぎると痛風発作を誘発する心配がある……」

 この薬を使ったことのある医者のコメントのようであった。
 そうか、副作用として発作を誘発する危険性があるんだ。それも医者は教えてはくれなかった。

 飲み始めて6日目に痛風発作を予告するような軽い痛みを左足親指の付け根に感じたが、2日ほどで消えた。以前から処方されていた別の薬が途切れての通院の際、そのイベントを医者に伝えたが、特段の反応は得られなかった。そういうことが次にあった際にすぐ飲める発作予防薬もあるそうで(その時はその存在を知らなかった)、教えてもらっていれば、今回の発作はあるいは避けられたかもしれない。そう後から思った。

 本格的な発作の痛みは「尿酸生成阻害薬」を飲み始めて3週間のタイミングだったが、その3日ほど前から「予告痛」が始まっていた。

 痛風発作が起きてしまうと、通院も大変だ。
 まず履き物に困る。足は腫れているから、大概は履けない。ゴム長靴でもあれば履けそうだが、我が家にはない(あっても重いゴムが当たってダメかもしれない……)。
 私は比較的大きめで紐での調節幅の大きい靴を選んでなんとか押し込んだ。医院で履き替えられるようスリッパも持った。帰りに履く時の小型靴ベラも。
 歩くと痛くて体重がかけられない。杖が必要。それでも小幅にしか歩けない。スピードはカメの如し。バス通りの横断歩道も越えなければならない。青になってすぐ渡り始めても向こう岸にたどり着く前に点滅になって焦る。だがスピードは変えられない。
 通院も命懸けだ。

 苦労してたどり着くと医者は、私のせいと言わんばかりに「食べ物は気をつけていたか?」と問うた。こちらは「薬のせい」と思っているので、怒りの内心をグッと抑えて「気をつけている」と答えた。健康診断もここで受けているので、その問診票を見れば酒は一滴も飲まないし、運動も十分やっていることは分かるはずだが、そんなことは頭に入ってはいないし記録にも留めてはいないのだろう。尋ねもしない。
 そして「血液検査をしよう」と言い出した。

 ……イヤ、ちょっと待て。私の「にわか勉強」によれば、発作中は尿酸値は下がるのが普通なので、検査は発作が収まった後でやるのが常套のはず。

 発作を早く収束させる薬はない。
 よく水を飲んで尿酸の排出を促し、赤く腫れてるとこには湿布を貼り、小さい保冷剤を載せて冷やし、痛み止めを胃薬と一緒に飲む——完全なる対症療法! 
 嵐の通過をひたすら待つカードしかないのだ。

 激しい痛みは2〜3日だった。夜もろくに眠れない。スリッパも履けず歩行困難。トイレにも裸足でゆっくりぎこちなく急いで向かう。
 
 どうやら医者は「尿酸生成阻害薬」を維持量めざして増量したいらしく、2日後に血液検査の結果を聴きに来いという。「はい」と答えはしたが、まだ発作中なら来たくはない、来れないかもしれない……その言葉も呑み込んだ。
 2日目の朝、玄関に座り込んで必死の思いで靴に足をねじ込み、傘を杖代わりにして出発。雨が降ったらどうしようと思ったが、それは出たとこ勝負。(降られずに済んだ)
 幸い2日前より痛みはいくらか減っている気がした。それでもカメのペースは変わらない。
 
 開院前のはずだったが医院は混んでいて、しかも訪問診療が急に入ったとかで医者は遅れて到着だと言われた。
 まあ仕方ない。待つしかない。
 多分6番目くらいで、1時間以上待たされた。高齢者には付き添いもいるので、待合室の人数より順番は早かった。
 
 検査結果を見て、医者は不服そうだった。
 尿酸値が半減していたからだ。

 「発作中は尿酸値が下がるんじゃなかったでしたっけ?」——私が予習を披露すると、「いや、そんなことはない」と機序を説明し始めた。私は頷きながらも冷たく無視した。
 そして「BNP値が異様に高い」と別の項目に話題は移った。
 私は「なんでBNPを検査項目に入れたのか」と問いたかった。前回検査の際には項目に入れるかどうか聞かれたので「入れる必要はない」と答えていたからだ。BNPは点数が高いはずだし、心臓には自信があったから、無駄な検査と考えてだった。   
 だが、不服は言わなかった。今回は聞かれなかったのだから仕方ない。

 BNP値は亡くなった父に連れ添って通った病院で心臓医から繰り返し指摘され説明されていた項目なので、「耳タコ」状態だった。心臓の機能の指標でこれが高くなると「心不全」なのだそうだ。父親はそもそも心筋梗塞で入院したので、この指標は重要だった。結局下がることはなかった。
 だが私は、トレーニング散歩を週4回以上の筋肉派老人で、階段昇降200段以上もこなしている。それで異状を感じたことはない。医者で測ると高い血圧も自宅では正常範囲内。心臓だけでなく、いわば健康優良高齢者である。

 ところが、ここでは初のBNPは心不全レベルの数値で、医者はそれに驚いて見せたのだった。父は歩くのも休み休みで、時々は今にも死にそうになった。
 私はそのBNPも無視した。予習はしていなかったが、痛風発作か内服薬のせいで一時的に高くなったに違いないと思ったからだ。*1 
 私はBNPには触れず、「私としては今回の発作は処方された尿酸生成阻害薬のせいだと思われるので、これを機会にこの薬は止めにしたいと考えている」と言った。反論はなかった。いや、独り言のように「尿酸値が高いのを放置するのはどうも……」と呟いていた。
 その尿酸の検査値は今回は正常範囲であるどころか、尿酸生成阻害薬の目標を遥かに下回る値なのだから、「尿酸値が高い」と言える根拠は今はないのだ。

 「一度止めた上でしばらくしてからまた検査しましょう。そして、その検査結果を見てまた考えてみましょう」と私は提案した。医者は黙って頷いた。

 家に帰ってから薬(腎臓・血流・痛み止め等)を飲んだが、尿酸生成阻害薬も一緒に飲んだおいた。今はまだ発作中なので、急激な変化は望ましくなかろう。この発作が落ち着いてから止めることにしよう。それも徐々に。

 インチキな答えを頻発することで有名になっているChat-GPTだが、実はヒトの方もどっこいどっこいなのかもしれない。
 結局は自分が頼りの世の中のようだ。

 

*1  尿酸生成阻害薬「フェブキソスタット」の医薬品添付文書(第4版 2023年)には、「心血管疾患の増悪や新たな発現に注意」との記述はあるが、2020年11月9日にLancet誌掲載の英国Dundee大学スタッフによる非劣性試験の結果によれば、フェブキソスタット(新しい薬)の心血管イベントに対する安全性は、同じく尿酸生成阻害薬アロプリノール(開発が「フェブ〜」より前で比較的安全とされている薬)に劣らなかった、と報告されている。(2020/12/02付日経メディカル誌〜大西淳子・記事 参照) 統計的手法による研究だからあくまでも確率の問題だが、今の時点では「どの薬が怪しい」と根拠をもって推測できているわけではない。



現在ブログ活動の本拠は「はてなブログ」に置いています。
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宇宙のかけら

2021-08-06 16:20:45 | 日記

 ワクチン騒ぎの中、久しぶりに電車に乗った。
 図書館に向かっていた。10時過ぎの車両は、ちょうど席が埋まるぐらい、若い人が多い。返す本のまだ読んでいないとこを読んでいた。

 馬と話ができるという女の子に付き合ってビッコの馬のところにみんなで行った話。戦時中の田舎でのこと、多くの馬はとうに徴用されてしまったが、その馬は足が不自由なため残されていた。村の子たちと疎開してきている町の子たちが揃って、「馬と話なんかできるはずない」と付いてきた。その馬を厩うまやから引いてきた太郎だけは、その言葉を半ば信じていた。

 ふと目を挙げると、向かい側にはマスクをした7人の若者が座っていた。女4人、男3人。全員がスマホを操作している。左右を見てみる。やはりマスク前のマイクが来そうな位置にスマホを構えている。前かがみになって車両の左右奥まで見渡すと、ほとんどの人がマスクにスマホ。覗き込むように観察する私に反応を示す人はいない。本や新聞を手にしている人もいない。
 異星人に囲まれているような気分になった。私だけ別の星に来てしまった! タイムマシンを操作した覚えはないのに……。

 馬の耳元で囁く女の子の間近にいた太郎は別だったが、遠巻きにしていた他の子たちには「やっぱり嘘だった!」のさざ波が広がり、大波となって女の子を襲った。反証人たるべき太郎だったが、黙ってうつむいていた。女の子は言い返すこともなく、走り出した馬と共に空襲の町へと去って行った……。

 電車で私は、時計を出して時間を確認したが、すぐにバッグのポケットにしまった。馬とも話のできるはずの私に、誰も関心を示さない。みなそれぞれのスマホの透明カプセルの内。
 T駅で降りて、まっすぐ図書館に向かった。前の小さな公園では、木陰に広げたシートの上で保育園児たちがお茶の時間を楽しんでいる。何か叫ぶように語りかける子がいたが、私には意味がわからなかった。私の笑顔も伝わった手応えがない。(きっとマスクのせいだ)

 書庫から出してもらった「霙みぞれの降る…」という本を借りようとすると、館員は「貸出なら列に並んで手続きをしてください」と長い列を差す。
 「機械ではできないんですか?」
 「列にお並びください」
 仕方ない。中央館とは違うが、ここではそういう流儀なのだろう。だが、だとすると貸出手続き用の機械は何のためにあるのか?
 そういえば、この図書館では、開架棚のではなく、書庫にある本を借りようとする人が多い。古い本が人気ということだ。私の手にしたのも40年以上前のもの。スマホの人はここにはいない。それでも、馬の話の分かる私に興味をもつ人はいそうもない。

 本を読むとホッとする。死病の疑いの晴れた日のように世界が輝いて見えてくる。だが、その話し手は、あの女の子のようにすでにあちら側へ……肉体的に、もしくは思想的に。

 ロボット風たちに囲まれて、ひとり娑婆をうろつく私は、口つぐんだまま、静かに哀しみを湛たたえた人をここで見送るしかないのか? 今も寄せ来る波紋に揺らいでいるというのに——それとも私も見送られる側なのか……。
 地球人史上初のmRNAワクチン、長い目で見たときの影響は誰にもわかっていない。

 
* 参考…今江祥智「あのこ」(1966);兵頭正俊「霙の降る情景」(1969)

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よかったこと

2016-09-13 13:23:35 | 日記
ゴキブリハンター

 このところゴキブリの目撃情報が相次ぐ我が家なのだが、昨日椅子に座って本を読んでいると、私の右足を何かがすごい速さで駆け上ってきた。虫が走る感触に驚いて本をどけてみると、ソイツは、視界の右隅をサッとかすめて脇の家具の方へと消えた。影しか見えなかったので何者か判然としなかったが、「ゴキブリ」と直感。——だが、ちょっとおかしい点もあった。まず第一にはそれが日中だったことだ。ゴキブリに足を登って来られた経験もあるが、それは夜中のこと、彼らが明るい時間帯に活発に動き回るのはあまり見ない。それに私の足で受け止めた感触がゴキブリよりも軽い印象だった。スピードも速かった。姿を確認しようとした時にはもういなかった。私が視界の隅で捉えたのは丸いボンヤリした薄茶色の影だけだった。
 少し経って犯人が発覚した。ソイツが壁にいたからだ。
 大型のクモだった。ネットで調べてみたところ、どうやらソイツはアシダカグモ。ゴキブリが好物の、益虫。人間に害は及ぼさない。
 そうか、ゴキブリハンターが登場するくらい我が家ではゴキブリが繁殖しているのだ。(ちょっと不気味) だが、コイツがいればゴキブリがいなくなるまで狩りをしてくれるそうだから、心強い。
 しばらく仲良く一緒に暮らそうゼ! 
 
ゲンパツハンター

 先月下旬のことだ。
 「日刊ゲンダイ」のHPを見ていると「安倍デタラメ原発政策を一刀両断 NHK番組の波紋広がる」という見出しが飛び込んできた。
 8月26日(金)深夜、討論番組「解説スタジアム」で、NHKの解説委員たちが、「どこに向かう日本の原子力政策」というタイトルで1時間にわたって議論したのだが、そこでは日本の原発政策のデタラメと行き詰まりが次々に告発されていたというのだ。
 NHKが正面切って原発政策を批判した番組と受け止められていた。今までも水野解説委員は、俵万智の短歌(※1)にも読まれたように、NHKにあっては異色とも言える原発批判の視点に立った論評を行なっていた。だが、今回は違う。その水野解説委員(原発担当)はスーパーバイザー的な立場からコメントを述べるようにして、西川解説委員長が司会を務め、関連分野の5人の解説委員がそれぞれの立場から原発政策批判を展開するというスタイルのようだった。
 ネットで探して私も見てみた。
 著作権法上は問題あるサイトだったかもしれないが、見ることができた。有料(1番組216円)だが「NHKオンデマンド」で今も見ることができる。(「解説スタジアム」または「どこに向かう」で検索するとヒットする) また、9/6現在まだ進行中だが、その番組の「文字起こしサイト」も登場している。(※2)
 NHKの中でも、特にその「頭脳」というべき解説委員たちが、籾井会長や安倍政権べったりではないということを証明して見せたわけで、NHKへの失望が広がってきている中、意義は大きい。しかも問題大有りの原発政策に堂々と噛みついて見せたわけだから、3・11の反省もそこそこに原発再稼働を進めたい政府や電力会社にとっては痛手だろう。
 NHKに良心が残っていることを感じさせてくれて嬉しい。残念だったのは、この良心的な番組が視聴率としては低い、深夜(11:55〜)だったことだろう。もっと前面に出てきてほしいものだ。
 これをきっかけにNHKが原発批判を強め(それは世論と合致する!)、再稼働への流れが止まってくれることを期待したい。


※1 「簡単に安心させてくれぬゆえ水野解説委員信じる」(俵万智;『歌壇』2011.9月号)
※2 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-4682.html

 
ゴチソウハンター

 何ヶ月ぶりだろうか、91歳自宅酸素療法中の父親がシニアカーで外出した。
 きっかけはシニアカーの入れ替えだった。
 前のシニアカーは、外出用の酸素ボンベを積む場所がなかった。だから、出かける時は、誰かが酸素ボンベを引きずってシニアカーの後ろから付いていくか、父親が自分の膝の上にボンベを載せるかしかなかった。どちらも簡単なことではない。第一ボンベを膝に乗せての運転は危険だ。誰か一人付いていかねばならないのなら、自家用車に乗せて行った方が簡単だ。シニアカーの意味はない。
 今度のは、酸素ボンベをキャリアーごと後ろに引っ掛けるようにして乗せられる器具を付けたものにしてもらった。警察への届けが必要だし、レンタル料は少し高くなるが、介護保険適用なので大したことはない。
 シニアカーの置いてある車庫まで行きさえすれば(実はこれも大変!)、あとは自力で外出できる!
 一人で好きなところに行くことができるというのは実に人間的な喜びである。「自由」というヤツだ。
 その久しぶりの外出で、父は近くの公園に行ってみたところ、そこで出し物を展開していた人からビタミンドリンクをタダでもらった。それを飲んだところ、あら不思議、身体の奥の方から力が湧いてくる感じがしたのだそうだ。その帰り、コンビニでハーゲンダッツを買って帰ってきた。
 私は普段脂肪分を考えて安物のアイスキャンデーしか買ってないのだが、それでは物足りなかったのだだろう。嬉しそうに帰ってきて、その日行っていた私の連れ合いと一緒に食べたのだそうだ。
 よかった。これぞ生きる喜び!