まさアキの ないしょばなし

関東在住、定年過ぎ、おやじ、オリックスファンです。

平成4年 ライバル出現

2014年09月23日 23時34分57秒 | あだると
きょうは、思い出話で、あだるとにしましょう。

郁子との付き合いが7年目、運命の平成4年になりました。
あたしは2度目の転職で今の職場に移り、
郁子は金融機関に2年勤めた後転職しました。

そろそろ結婚って、彼女は思いつめていました。

その夏、あたしは例によって夏休みの一人旅で滋賀県に行っていました。
よる、郁子の実家に電話を掛けると、
はは(便宜上そう呼びます)が
郁子は男性と二人でドライブに行って帰ってこない、って言いました。
はは、ここ一番では率直な人で、
これはアキに言っておかないとまずいと思ったみたいでした。

相手は金融時代の同期のBでした。
Bはひょうきんな性格で、郁子がかなり気に入っていた男性でした。
こいつ、Bのこと好きなんじゃないかって、ちょっとだけ思っていました。

あたしは、面白くありません。2時間ほどしてまた電話をしました。
郁子は帰宅していましたが、あんたなんか話したくないという口調で、
つっけんどんでした。妙に強気で開き直っています。

危機感を感じます。あたしはB型、本能で何かを感じました。

二泊だった旅を翌日止めて、帰京しました。
郁子はその日勤務でした。
いつもだいたいの帰宅時間は知っていますので、
新幹線を使っても時間が余るだけでしたから、
彦根という街から、東海道線を普通列車で東京へ向かって。
静岡からは東海四号という急行で戻りました。

勝算は全くありません。自分はBに負けているのです。

彼女の最寄駅、改札に立って30分後、郁子が現れました。びっくりした顔をしています。
彼女の口調は、きのうの夜と同じでした。あたしは、自分の非(結婚に対して前向きでないこと等々)を率直に謝り、とにかく、あなたとはダメというのだけは、撤回してほしいと訴えました。いつもの夜の散歩道を行ったり来たりしながら、1時間半かけて話しました。

Bとは数回のデートでしょうが、あたしとは7年という共有した年月があるのです。
郁子はしぶしぶ、わかったといいました。
そして、気持ちが落ち着いたら連絡するから待ってほしいといいました。

8月の終わりのことでした。

二日後、職場におひる、郁子から連絡があり、いつも仕事のあと待ち合わせる有楽町駅で待っていてほしいといいました。あーこれで、彼女とはお別れだな。仕方ないな、自分が悪かったんだからと、言い聞かせながら、17時になるのを待ちました。

郁子は少しだけ淋しそうな、とても落ち着いた顔をしていました。
興奮はしていませんでしたし、これなら落ち着いて話せるな、
もし別れ話だったら、これまでありがとうって言おうって思っていました。
いつものおそば屋さんで夕食を取った後、彼女は外に出るといいました。

Bとは、きのう、クルマの中で話していたの。そうしたら、それまで、キス20回くらいしたけれど、クルマの中で押し倒されて、上半身を触られて・・・だから、最後までされたら困ると思って、たまたま、キュロットスカートだったから、手で必死で抑えていたの
だから、Bとは、最後までしていないの。

ねえアキちゃん、このこと、
アキちゃんがあたしのこと、許せないって思ったら、
あたし、このまま潔く、ここであなたとお別れして、一人で生きていくわ。
でも、もしも、許してくれたら、今まで通り、おつきあいしてほしいの。
ねえ、他の人に胸を吸われたの、それでもいい?

男としての度量が問われる瞬間です。
でも、アキ、郁子が他人の妻になるなんて、絶対に許せなかった。
そのくらい、彼女を愛していた。
とくに彦根にいた晩から、彼女のことをどんなに愛しているか痛切に感じていました。

郁子ちゃん、アキが悪かった。
結婚しよう。

彼女はうす青白い顔をして、信じられないという表情をしていました。

そのまま、東京駅まで、ゆっくり、二人で歩いて。
いつものように、彼女は僕の右側を歩き右腕でつかまって、小さな顔を寄せていた。
途中の交差点で信号が赤になり、大通りの安全地帯で、二人は停まってしまった。
郁子は僕の顔を見ると急に、我慢していた思いが募ったのか、
思いっきり抱きつくと、声をあげてオイオイと号泣した。うれし泣き、と言いながら。
こんなに彼女が泣くのは、本当に久しぶりでした。

その晩はどこにも寄らずに帰りました。平日だったしね。
西武線に乗ると郁子はいつものように
あたしの肩に頬を寄せて、安心しきった表情で眠っておりましたよ。


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