春のコースが始まりました。
東京も、大阪も。
ひと段落すると、ボクのこころはいつもうずき始めます。
「そうだ、南へ イコウ!」
いさんで南の島に来たのですが、天気はまったくミナミではありません。
滞在中の天気は曇りのち雨、強風をともなう雨、曇り、どしゃぶり・・・
海岸にもまだ足を運んでいない始末です。
こんなときは、静かに読書です。
雨音を、そして雨が上がれば遠くに聞こえる波の音を聞きながら・・・
なんて、ちょっとロマンチックに書いてみましたが、ホテルの部屋の中にいると正直いって煮詰まってきます。
そうだ、ジムだ。カラダを動かそう。
フロントに紹介してもらって、島に一軒しかないジムへ。
たどり着いてみたら・・・なんと空き家。
つまり閉店。
愕然としながら、島を放浪してまいりました。
それでも、雨上がりに見つけた「茶音間」という民家を改造したCAFÉで、のんびり過ごしてきました。

『絵描きの 植田さん』いしいしんじ
ボクの好きな作家、いしいしんじさんの作品です。
こちらに来る前に本屋で見つけてきました。
毎回、彼の物語はボクを驚かせてくれます。
ワクワクしながら、ページを開いてみると、表紙の扉に「植田真」さんという方が紹介されていました。
よく見てみると、後半に植田さんの作品がまとまって紹介されています。
しばらく見ていると、静けさでいっぱいの白い絵の中から、美しい音が聞こえてくるようでした。
読み始めてみると・・・
植田さんは、突然の事故で恋人と、自分の聴力を失ってしまいました。
事故後に移り住んだ、湖のほとりにある山あいの小さな町での生活風景が描かれています。
読み進めているうちに、これが「ものがたり」なのか、フィクションなのかまったくわからなくなってしまいます。
ひとつひとつの小さな物語の中に、聴力を失った植田さんを取り巻く町の人々の声が見事に彩られています。
10才のメリという女の子が、植田さんの心の扉を開いていきます。
誤解が生んだ大人のトラブルから逃れて、「向こう側の町」から母親と二人だけで移り住んできました。
自然が好きで草花や鳥たちが大好きなメリは、構えることなく、植田さんと正面から向き合います。
スケッチブックで心行くまで話をしたり、雪の中、山歩きをしたり。
自然の中にいて、花の名前や鳥たちに詳しいメリのイキイキした姿を、植田さんは彼のやさしいまなざしで包みます。
あるとき、久しぶりに写生に出かけた植田さんは、ぶなの木立の中で突然足を止めます。
「耳のほとんど聞こえない植田さんは思い出した。ひと月前にこの場所を訪れたとき、メリが同じように立ち止まったのは、あれは鳥たちの鳴き声をきいていたのだ。色とりどりの音色にうっとりと耳をすませ、森のなかでいま営まれつつある鳥たちの暮らしに、思いをめぐらせていたのだ。
鳥と鳥、鳥とひと、そして、ひととひととのあいだ。
音によってつながれるこの世の営み。
歩き出しながら植田さんは思った。
自分はずいぶん長く、この世の物音をきこうとしてこなかったのかもしれない。耳が悪くなっただけじゃない。みずから耳をふさぎ、かたく身をちぢめ、音を遠ざけていたんだ。それはまた、自分で音を出さずにいる、ということでもある。ちょうど山奥でかたく凍ついた岩のように。」
読み進むうちに、聞こうとしていなかった音や、見ようとしてこなかった風景がボクの心の中に現れてきます。
相変わらず、そとは風が強く吹き続いています。
知らず知らずのうちに、この風が見てきた風景を、ボクは勝手にイメージの中に描き出しているようです。
東京も、大阪も。
ひと段落すると、ボクのこころはいつもうずき始めます。
「そうだ、南へ イコウ!」
いさんで南の島に来たのですが、天気はまったくミナミではありません。
滞在中の天気は曇りのち雨、強風をともなう雨、曇り、どしゃぶり・・・
海岸にもまだ足を運んでいない始末です。
こんなときは、静かに読書です。
雨音を、そして雨が上がれば遠くに聞こえる波の音を聞きながら・・・
なんて、ちょっとロマンチックに書いてみましたが、ホテルの部屋の中にいると正直いって煮詰まってきます。
そうだ、ジムだ。カラダを動かそう。
フロントに紹介してもらって、島に一軒しかないジムへ。
たどり着いてみたら・・・なんと空き家。
つまり閉店。
愕然としながら、島を放浪してまいりました。
それでも、雨上がりに見つけた「茶音間」という民家を改造したCAFÉで、のんびり過ごしてきました。

『絵描きの 植田さん』いしいしんじ
ボクの好きな作家、いしいしんじさんの作品です。
こちらに来る前に本屋で見つけてきました。
毎回、彼の物語はボクを驚かせてくれます。
ワクワクしながら、ページを開いてみると、表紙の扉に「植田真」さんという方が紹介されていました。
よく見てみると、後半に植田さんの作品がまとまって紹介されています。
しばらく見ていると、静けさでいっぱいの白い絵の中から、美しい音が聞こえてくるようでした。
読み始めてみると・・・
植田さんは、突然の事故で恋人と、自分の聴力を失ってしまいました。
事故後に移り住んだ、湖のほとりにある山あいの小さな町での生活風景が描かれています。
読み進めているうちに、これが「ものがたり」なのか、フィクションなのかまったくわからなくなってしまいます。
ひとつひとつの小さな物語の中に、聴力を失った植田さんを取り巻く町の人々の声が見事に彩られています。
10才のメリという女の子が、植田さんの心の扉を開いていきます。
誤解が生んだ大人のトラブルから逃れて、「向こう側の町」から母親と二人だけで移り住んできました。
自然が好きで草花や鳥たちが大好きなメリは、構えることなく、植田さんと正面から向き合います。
スケッチブックで心行くまで話をしたり、雪の中、山歩きをしたり。
自然の中にいて、花の名前や鳥たちに詳しいメリのイキイキした姿を、植田さんは彼のやさしいまなざしで包みます。
あるとき、久しぶりに写生に出かけた植田さんは、ぶなの木立の中で突然足を止めます。
「耳のほとんど聞こえない植田さんは思い出した。ひと月前にこの場所を訪れたとき、メリが同じように立ち止まったのは、あれは鳥たちの鳴き声をきいていたのだ。色とりどりの音色にうっとりと耳をすませ、森のなかでいま営まれつつある鳥たちの暮らしに、思いをめぐらせていたのだ。
鳥と鳥、鳥とひと、そして、ひととひととのあいだ。
音によってつながれるこの世の営み。
歩き出しながら植田さんは思った。
自分はずいぶん長く、この世の物音をきこうとしてこなかったのかもしれない。耳が悪くなっただけじゃない。みずから耳をふさぎ、かたく身をちぢめ、音を遠ざけていたんだ。それはまた、自分で音を出さずにいる、ということでもある。ちょうど山奥でかたく凍ついた岩のように。」
読み進むうちに、聞こうとしていなかった音や、見ようとしてこなかった風景がボクの心の中に現れてきます。
相変わらず、そとは風が強く吹き続いています。
知らず知らずのうちに、この風が見てきた風景を、ボクは勝手にイメージの中に描き出しているようです。
先日のライブではノリノリでギターの音に酔っていましたよ~
コメントありがとう。
そうなんですか。びっくりです。
本の中にいる植田さんが、こんなに身近な存在なんて。
ノリノリのギターは、またまた新しい側面で驚きます。
植田さんは一人。でも、たくさんの人の心の中に、いろんな植田さんがいるんでしょうね。