自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

『 かくれ家は空の上に 』 柏葉幸子

2015-07-10 06:12:24 | ファンタジー
子どもは、水たまりが大好きだ。


昨日も雨の中、小さな男の子が傘を差し、青い長靴を履いてよちよちと歩いていた。


激しい雨の中を歩くとき、ボクはどうしても水の溜まっていない場所を選びながら歩く。


靴、ビシャビシャになっちゃいますからね。


でも、目の前のその子は、水たまりの中に突進していく。


それがとても気持ちよさそう。


ボクは長靴を持っていないので、そういう光景を見るたびに、うらやましくなってしまう。


ゆらゆらと揺れる水たまりが、また静かになると映し出される世界がある。


空だったり、街路樹だったり、建物だったり。


そういう水たまりを見るのが、ボクは大好きだ。


何が好きかって、それがなんだかもう一つ、別の世界の入り口のような気がするから。


目黒川沿いはあまり人が歩いていないので、そんな水たまりを見つけるとしばらく佇んで見つめてしまう。


小さいころから、60をとっくに過ぎた今も、そうやって、別の世界の妄想を繰り返しているような気がする。






『かくれ家は空の上』柏葉幸子


柏葉さんの本が面白くて、とまらない。


そろそろ違う作家に、と思いながら、作品リストを見てあらすじを読むと欲しくなってしまう。


突然の強い風が吹きこんで、おまけにあゆみの部屋のベランダに、ドン、ギュッ、ドサっという音がした。


あゆみの部屋の窓にはよく鳥がぶつかる。


鳥が大嫌いなあゆみは、また鳥かと思って、恐る恐るベランダを見ると、、、、なんと小さなかたまり。


よく見ると雑巾だ。


と思って拾い上げると、その雑巾がもぞもぞっと動き出す。


ボクは、もうこれだけで、ワクワクぞくぞくしてきてしまう。


よく見ると、顔があり小さな目があって、なんと小さな人。


これが魔女。


この魔女は、移動中に窓にぶつかり、そのショックで記憶を失くし、自分お名前も行き先もわからなくなってしまっている。


それで、、、、あゆみと魔女の奇妙な共同生活が始まる。


実は、ボクも魔女を見つけたことがある。


子供の頃のことだけど、トイレの窓が凸凹していて、外が見えなくなっている。


おしっこをしながら、その窓をじーっと見つめていたら、なんと、そのデコボコに隠れていたんですよ。


ボクは思わず、「なーんだ、そんなところに隠れてたってダメだよ」なんて言いながら、実はとっても怖くて大急ぎで手も洗わずに逃げ出したことがある。


ものがたりの始まりは、ボクにとって窓のデコボコや、水たまりみたいなもの。


この物語の、そらの上のかくれ家も、三角形の誰もいかないような空き地が入口だった。


そこをジーッと見ていると、きっと入口があるはず。


現実ばかりにとらわれていると、視野が狭くなってしまう。


物語以上に、奇々怪々な現実を生きるために、大人はファンタジーをたくさん読むといい、と河合隼雄先生も、村上春樹も言っていた。



今日は、マンションのトイレ工事の見積もり。



もしかすると、それが今日の入り口かもしれない。




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