≪前田智徳選手コメント≫
「今年で24年間の野球人生を終えることになりましたので、 ご挨拶させていただきます。 今の気持ちは、言葉は悪いのですが、やっと終わったとい う感じです。それと、色々な重圧等から解放されてホッと している所です。
代打に専念してからは、色んな角度から勉強しながら、 年々代打で貢献できる喜びを感じてきていました。 やるからにはチームに貢献したいですし、数字を出さなけ れば戦うことはできないと思ってやっていましたので、全 てのことに結果重視で臨んできました。 内容的には誉められた内容ではないですが、大事なところ で使っていただいたので結果が残せたのかなと思います。 去年も今年も手ごたえがあったので、今年を集大成にと、 優勝を目指してスタートしました。 結果的に、また自分らしく怪我で戦列から離れてしまい、 チームに貢献できなかったことが残念です。
選手としての引き際はとっくに過ぎていました。 5年前から毎年オーナーに時間をとっていただき話をして いただいていたのですが、『代打という違った形で貢献 し、色々勉強してみてはどうだ』と励ましていただき、1 年1年伸びてここまできました。
骨折してすぐ復帰するプランを立てて、退院した日からリ ハビリを始めたのですが、なかなか思うように回復しませ んでした。 バットを振り始めてからも、なかなか自分のものではない 感覚しか出てきませんでした。 さすがに今回は無理かなと思い始めたのは、ここ1ヶ月く らいです。 這い上がっていかないといけないとは思ってきましたが、 上手くいきませんでした。
カープでの24年間のプロ野球生活を思い起こすと、若い頃 から選手として育てていただき、1人の人間としても成長 させていただき、長い間お世話になりました。 でも、怪我ばかりでいろんな人に迷惑をたくさんかけまし た。 期待にも答えられなかったし、残念なことばかりで辛い野 球人生でした。 嬉しかったことは、辛いことでかき消されて思い浮かびま せん。 若い時に地味なことをコツコツとやる大切さを身を持って 知ることが出来ました。 今もずっと続けてやってこれたのが自分にとっては非常に 嬉しいことであり、財産であり、支えでした。
思い出は、2年目から試合に出してもらい、その年にリー グ優勝を経験させてもらって、なおかつ日本シリーズでも 7試合ほとんど出場させてもらったことです。 あの雰囲気の中で野球をさせてもらったというのは、今で も良く覚えていますし、もう一度あの時のような雰囲気で 野球ができたらなと思いここまでやってきました。あの時 の経験は自分にとっては今でも貴重なものです。
今年は監督をはじめ、全員でがんばってAクラスになって 素晴らしいです。長く低迷した時間にピリオドを打ってく れて良かったと思います。 その中に自分がいなかったのが残念です。少しでも貢献し て久しぶりのAクラスを一緒に味わいたかったです。 それが僕の持って生まれたものなのでしょうがないと思い ます。
監督へは、クライマックスシリーズ進出が決まってすぐに 連絡しました。 監督以外の方にはまだ会っていないので、これからきちん と挨拶したいと思っています。 今の若い選手とは短い間でしたが一緒に戦い、彼らの頑張 りがあって、クライマックスシーリーズに進出できまし た。 チームも長い低迷から脱出し、若い選手の成長と共に戦っ て、優勝する日が近づいてくると思います。 強いチーム、カープを作っていってもらいたいと心から応 援しています。
家族にはこの時期になると毎年引退の話をしていました。 今度こそ引退すると伝えた時は、ホッとしてくれて「お疲 れ様」と言ってくれました。 僕からも「ありがとう」と伝えました。 本当に支えてくれていたので、これからは少しずつお返し できたらと思います。
今後は、ユニフォームを脱いで、評論家として野球を勉強 して、自分自身ももっともっと磨いていきたいです。 もう一度僕が這い上がって打席に立つときを待っていてく れていた、楽しみにしてくれていたファンの方には申し訳 ない気持ちでいっぱいです。 充分な結果を残すことは出来ませんでしたが、ファンのみ なさんの声援のおかげで、少ないながらも結果がついてき てくれたのではないかと思います。 24年間、こんな故障だらけの選手を最後まで応援してくだ さって、本当にありがとうございましたという感謝の気持 ちでいっぱいです。 これから、外から野球を勉強して自分を磨いて頑張ってい こうと思いますので、また会える日があれば、よろしくお 願いします。本当にありがとうございました。」
以上カープホームページより
広島・野村監督の話「突然のことでびっくりし た。とても残念に思う。寂しい気持ちだが、本人 が下した決断を尊重したい」
広島・前田健の話「すごくびっくりした。残念。 偉大な選手で一緒に野球をやれたことを光栄に思 う。引退試合はしっかり目に焼き付けたい」
広島・山本浩二元監督の話「1年目の春の日南 (宮崎)キャンプでユニホームの着こなしが目に 留まった。完璧主義者で天才だが、本当に努力家だった。アキレスけんのけがを乗り越え、よく頑張った。ご苦労さまと言いたい」
前田智の担当スカウトだった広島・村上元スカウ ト部長の話「全てがすごいと思って採った。打つ 方、守り、肩、足、そして顔もいいと思った。 ぶっきらぼうと思われているが、わたしたちには 礼儀正しい子だった。寂しいというよりは40歳 を超えてまでよくやったと思う」
広島・松田オーナーの話「世間はセンスを取り上 げるが、努力の部分を知ってほしい。精神的にも 肉体的にも追い込んで、力尽きたんだろう。将来 は打撃コーチせえよと言った。いつか戻ってきて くれたら」
ロッテ・伊東監督の話「職人と言われる立場の選 手だった。妥協しない男。カープにとってはなく てはならない存在だと思う」
楽天・星野監督の話「嫌なバッターだったよ。ア ウトになっても(バットの)芯で捉えられた」
阪神・和田監督の話「けがや故障にだいぶ悩まさ れていたが、克服しながら、これだけやってきた。代打になってからも打席での威圧感、雰囲気を持った選手だった」
元カープトレーナー鈴川卓也ブログより拝借
「引退の事を聞いたときは
いつもの様に冗談だと思いました。
冗談だと、思いたかった。
でも、もう何年も終わり方を探し続けて来られた人ですから
ああ、とうとうこの時が来たんだなと。
これが事実だと分かった途端、頭が真っ白 になりました。
CSの喜びよりも、寂しさの方が遥かに大きい。
いつまでも前田さんのユニフォーム姿を見ていたい。
いつまでも練習に取り組む姿勢を見ていたい。
何年も前から辞める事を意識しながら、
ファンの期待に応え続けた前田さんですから
来年もやってくれるものだと、僕自身思っていました。
怪我から復帰するものだと。
そう思っていましたが、
前田さんの身体はもう限界なんだと思います。
このたびの骨折に屈したわけではなく
僕らの想像を超えて、限界
を超えていたのだと思います。
ここ数年は責任感が前田さんの身体を動かしていたように見えました。
次の世代に技と魂を伝えるまでは辞められないという、強い責任感。
だとしたら、やっとゆっくり出来ますね。 と言ってあげたい。
何年分ものんびりして欲しい。
昨日メールを頂きました。
「今まで助けてくれて有り難う」
見た瞬間に涙が出ました。
助けてもらったのは僕の方です。
トレーナーは選手の役に立つ事が生きがいです。
こんな僕に役目を下さった前田さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。」