週刊ダイヤモンドは、【銀行・証券 終わらざる危機】という特集を組んでいますが、今の日本の金融市場が如何に爆発寸前かということが分かります。
続出する優良取引先の転落、破綻、予期せぬ不祥事や事故が、かつて超の付く優良取引先だった企業が一夜にして問題企業に転落するケースが相次いでいる。エルピーダの破綻で、シティグループ証券ディレクターは「不振の電機セクターをはじめ、製造業全体の信用悪化要因となり、銀行側には引き当て、減損で実損が出てくる」と警鐘を鳴らしています。銀行が取引する大手企業の中で今後、経営が悪化して、将来的に不良債権になる可能性のある大口融資先20社がリストアップされています。
「銀行の命運を握る大口融資先の20社リストと予測される引当金・*融資額」
三井住友銀行 3兆4013億円*融資額6兆8030億円
(東電・オリンパス・NEC・ソニー・パナソニック・マツダ・商船三井・エルピーダ)
三菱東京UFJ銀行 1兆163億円*融資額2兆328億円。(ルネサス・中電・日本郵船)
みずほ銀行 1兆4789億円*融資額2兆9580億円(シャープ・関電・九電・川崎汽船)
七十七銀行 3716億円*融資額7432億円(東北電力)
北洋銀行 1376億円*融資額2752億円(北海道電力)
広島銀行 3700億円*融資額7401億円(中国電力)
伊予銀行 1434億円*融資額2868億円(四国電力)
北陸銀行 1274億円*融資額2549億円(北陸電力)
以上20社すべてが「正常先」から「要管理先」の不良債権に転落すると仮定して算出しますと、融資額合計14兆940億円。予測される引当金合計7兆465億円となります。にもかかわらず、銀行はいまだに20社リストのほとんどの企業を正常先に位置付けており、このまま経営の立て直しが進まなければ、いつ要管理先に転落してもおかしくありません。
これはあくまでも上場大手だけの話であり、非上場等の企業を入れれば、想像を絶する引当金を積まなくてはいけない事態に陥ります。中小企業金融円滑化法という中小企業の延命を図る法律が、実は隠れ不良債権の増加という副作用をもたらしており、その額は数十兆円に上るともいわれ、これが表面化すれば、日本のメガバンクは即死します。
一方、地方銀行にも“爆弾”を抱えていると云われ、巨額の中小企業向け融資が不良債権化し、金融庁によれば、こうした地銀の予備軍は昨年12月末の累計でなんと33兆円にも上っているとされ、国債の大量保有問題とともに、経営の根幹を大きく揺るがすリスクになっているようです
更には、欧州の債務危機は今なお進行中で、その先行きは予断を許されず、また米国では景気の二番底懸念が払拭できず、中国の不動産バブルはいつ崩壊してもおかしくない状況下で、こうした危機シナリオがひとたび深刻化すれば、計り知れない悪影響が出てくることは必至です。
そして最大のリスクは何といっても国債の大量保有問題です。
メガバンクをはじめとした日本の銀行が日本国債を大量に保有していることが懸念されています。今、メガバンクが儲けていますのは、日銀から0%金利で借り入れそれを1%の国債で運用して6,000億円以上儲けていますが、総額で163兆円以上保有している金融機関が、一旦国債が値下がりに転じれば、白川総裁発言のように、国内債券の金利が一律1%上昇した場合、債券価格の下落に伴う損失が、大手銀行で3・5兆円、地方銀行で2・8兆円に上るとの試算を明らかにしています。このため、何としても国債を買い続ける必要があるのです。
「銀行による国債の大量保有は、もはや抜き差しならないところにまで来ている」と指摘するのはメガバンクの中堅幹部であり、BNPパリバ証券のアナリストは「邦銀はリスク管理で対応できる水準を超えた量の日本国債を保有してしまった」と指摘しています。
大量の国債を保有するメガバンクや地方銀行は、ドロ沼と化した日本国債と一蓮托生で、ある金融庁幹部は「銀行が日本国債に依存しているリスクは十分認識している。ただ、当局がそれを指摘したら、国債価格下落のトリガーとなる風評被害リスクがあるから不可能だ」と打ち明けています。
大量に保有し過ぎているが故に、リスクが高まっているのは誰もが分かっていながら、口が裂けても言えない。日本国債は今や“裸の王様”なのだ。国債は暴落しないから大量に持っていても安全だと銀行は叫び続けるが、それは幻想でしかない。そのことを実は銀行が一番わかっているのかもしれない。
これは週刊ダイヤモダイヤモンドの結びの言葉です。