お気楽おばさんの徒然日記

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浅見光彦の旅ー平家伝説殺人事件。

2012-09-21 20:06:12 | 日記
浅見光彦シリーズ2作目の平家伝説殺人事件。浅見シリーズには多くのヒロインが登場するが、この作に登場するヒロインは別格だ。何故なら、真剣に結婚を考えた唯一のヒロインだから。今まで多くのヒロインが登場して浅見光彦が心を動かされた事は結構あるけれど、唯一真剣に結婚を考えた存在はこの作に登場する稲田佐和のみと言っていい。なんとなれば作者は浅見光彦を2作目で終わるつもりだった。だから終わりをハッピーエンドにしたかったので、読後に結婚を想起させるように描いたという。その後の浅見光彦の煮え切らない態度と較べてこの作では男性としては、結構衝動的に動いている印象がある。なかでも唐突にも思えるキスシーンは、後の浅見光彦殺人事件以外には見られないシーンである。因に現在までに3分の2位シリーズを読み進んでいるが、浅見光彦の自制心はたいしたものである。相当迫られても逃げまくっている。作者は一人の女性に囚われて常識人となってしまったモデルの編集者のことを、堕落したと揶揄している。確かにこの作品の後に結婚した浅見光彦となると、自由に動く事は出来ず、日本全国ましては海外まで自由自在に動き回る事は出来ない。この恋を封印したことで浅見光彦は自由を得た訳である。この設定は水戸黄門の印籠のような兄の存在に対比的に描かれる自由人浅見光彦の魅力の一つかもしれない。結婚しない男のもつ不確定な未来と自由は、ある意味男性の憧れかもしれない。まして、毎回とびきりの美女が登場するとなればなおさらのこと。但し、作者内田氏の好みもあるのかもしれないが、浅見光彦は若くて色白で眼が大きいロマンチックな女性が好みのよう。後作に登場する女性の中でエモーショナルな表現が多いのはそうした女性である。この作のヒロインは外観が神秘的なだけでなく直感でも神秘的な力を秘めていて、舞台となる土佐の平家村のミステリアスな雰囲気を漂わせている。ただ最初の頃の作品なので女性としては犯罪に深く拘わる稲田萠子の方がリアリテイが感じられる。舞台となる西土佐村は現在は町村合併しており、四万十市となっている。私は1990年代の初めに宿毛、中村市、高知市などを車で旅した事があるが、まことにのんびりした土地柄で足摺岬の宿にたどり着くまでに暗くなり、心細く思った記憶がある。観光地の足摺でさえそんなふうだったったから、当時の西土佐村は一種独特の閉塞感と隔絶感のある雰囲気だったと思われる。また土佐の高知は豪快な鰹のたたき料理や皿鉢料理が有名だが、当時の旅の宿での、行けども行けども出てくる大振りな鰹の山に圧倒された事も懐かしい。吃驚したのは土佐では女性の飲酒も盛んで女性も豪快な飲みっぷりをする。思うにひょっとすると、ヒロインの佐和と結婚した浅見光彦は変貌する土佐女性のはちきんぶりに圧倒されたかもしれない。実際、土佐ではときに眼のぱっちりした色白のはっとするような美人を見かけることがあるので、浅見光彦は本当に結婚してしまったかもしれないのだ。
作品の重要な要素となっている伊勢湾台風は当時としては大変な被害があったと記憶している.その迫力は作品に詳述されている。また、当時は交通手段として一般的だったフェリーの旅も実際に乗ったことがあるので東京から外洋を渡る感覚を思い出す。結構揺れたものだった。今となっては橋ができてしまったのでこういう設定は描かれないと思うが、時代を感じる。そういう意味で言えば、ラストシーンの赤いテープのシーンなども今ではあまり見られないロマンチックなものかもしれない。
描かれる犯罪も当時としては話題になった保険金殺人で時代を感じさせる。
2作目のタイトルが惹句となったせいか3作目の作品も伝説とタイトルが続くのだが、まだ浅見光彦も若々しい印象がある。神秘的な美少女とその美少女にふさわしい平家の里がその若々しい浅見光彦を魅するのが2作目の平家伝説殺人事件だと言えると思う。
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