佐賀県の県庁所在地佐賀市の中心街を流れる松原川。
“治水の神様”と呼ばれた成冨兵庫が約400年前、城下に引いた多布施川の分流です。
河川を管理する行政の区分けでは「公共下水道雨水幹線」延長1400m、流域面積は25haとされています。
25haの広さの土地に降った雨・雪と、そのエリア内にある工場、商店・飲食店、家庭等の生活排水等が流れ込む1400mの川という意味でしょう。定義づけは“ドブ川”を容易に連想させますが、この川も昭和50年代前半には汚濁が顕著でした。今日多くの市民の憩いの場として親しまれている川の再生は、「佐賀ん町の川を昔の清流に戻したい」という市民の声の高まりと、行動によって始まりました。昭和61年、水の浄化運動や下水道の効果が評価され、当時の建設省よりアクアトピア都市(親水都市)に指定されました。行政はこの構想の中で、空洞化し沈滞する界隈の賑わいと憩いの場の復活を目指し、流呈内750mの橋梁・隣接道路を含む一体的整備を行いました。
松原川の幅は7~8m。しゃがめば水に手が届く親水歩道、飛び石が配置され、昔ながらの石垣の護岸がなされ、ハナミズキ、モミジの植栽も配されています。隣接する佐賀鍋島藩の藩祖鍋島直茂と祖先を祀った松原神社の緑陰と相俟って清々しくも、豊かな風情を醸し出しています。
同時に整備された隣接道は1m程狭められました。自家用車の保有台数が全国的に見て多い佐賀県において、歩行者を優先しています。川辺に防護柵を設置しなかった事と併せて、確かなビジョンが存在した事を物語っているように思えます。
ここで昨年10月から、許可を得て魚採りをしました。チョウサです,調査。最近の言葉で言うと「ワイルドライフマネジメント」の真似事です。その成果の一部を佐賀大学の地域貢献分室ゆっつら~と館で飼育しています。
入水(じゅすい)?と目視観察により以下の生き物がいる事を確認しました。
行政が放流したと思われる鯉が約80尾、大きさと珍しさからか善意の人が持ち込んだと思われる1m前後の草魚が4尾、似鯉(ニゴイ)3尾、ブラックバス1尾、ヤリタナゴ、モロコ、カマツカ、メダカ、カワムツ(A型・B型不明)、エビ2種、鮒などです。通りかかった人の話では、以前は沢山のエビがいて、子供たちはそれを採って遊んでいたが、最近は、エビも川で遊ぶ子どもの姿も滅多に見られなくなったそうです。
エビは何とか2尾程採集出来ましたが、貝類は見つけることすら出来ませんでした。
鯉の散逸を防ぐ為この川の上・下流に設置されている鉄柵の外には沢山のカワニナがいます。先日は下流の柵の外で、13cmのカラスガイと3cmに成ろうかというシジミを採集できました。
タナゴは長い輸卵管でカラスガイの体内に産卵します。ホタルの幼虫はカワニナを餌にして育ちます。これらを育む貝類が生息しないのは、鯉の捕食圧によるものと言って良いのではないか思います。
鯉釣りをされる人ならご存知でしょう、最近の鯉釣りの餌はタニシ、カラスガイ等の貝類です。逃げ足を持たない彼等は鯉の格好の餌に違いありません。川底には、杯位のくぼみ、ゴルフボールのディンプルのような物が無数にあります。鯉が砂泥と一緒に餌を吸い込んだ“食み跡”です。鯉がその食性と遊泳により、水底の細かな粒子を下流に流し、濁りのない、キレイと感じる川をもたらしているのは確かです。反面、この川の水量、面積に対して多すぎると思われる鯉の数が、生息してもおかしくない多様な生き物たちを食べつくしたり、追いやっているのではないでしょうか。
生物の多様性は、私たち人間が安全に生きる事が出来る環境の指標と言われています。鯉の数を減らさなくても、多様性を実現することは可能だと思われます。
生き物それぞれが棲み分けられるように、例えば鯉が入って来れないような浅場を作れば良いのではないでしょうか。子供の頃に見た真っ赤な婚姻色をまとったニッポンバラタナゴ、下駄カラコロと鳴らして追いかけたホタルが、この川に帰って来た情景を想像するとワクワクが止まりません。
川辺に立てば鯉が寄って来ます。餌をやる母子の姿など微笑みを禁じえませんが、水・生き物・人の関わりを想う時、人がそこにあると同様に、棲むべき生き物達がいるべきだと思えてなりません。水中で産卵するトンボに驚いて欲しい。
小さくはかない命に触れ、思わずこみ上げる自分の優しさにも気づいて欲しい。
沢山の人が訪れ、愛着ある川だから松原川にはもっとキレイに豊かになって欲しい。
昨日、街中の名もない小さな川で数頭?のイトトンボを見つけました。
交尾したトンボは水草に卵を産み付けていました。
佐賀市は全国的に見ても、街中でトンボが見られる稀有な都市と言われています。
賑わいと憩いの場の復活を目指して始められた松原川の再生。
そのセカンドステージとして、命溢れる川の創造を想っています。
水辺を活かした街づくり、水辺を活かした観光都市に関心のある方は、是非
ゆっつら~と館のホームページ 「川を活かした町づくり海外編」をご覧下さい。
“治水の神様”と呼ばれた成冨兵庫が約400年前、城下に引いた多布施川の分流です。
河川を管理する行政の区分けでは「公共下水道雨水幹線」延長1400m、流域面積は25haとされています。
25haの広さの土地に降った雨・雪と、そのエリア内にある工場、商店・飲食店、家庭等の生活排水等が流れ込む1400mの川という意味でしょう。定義づけは“ドブ川”を容易に連想させますが、この川も昭和50年代前半には汚濁が顕著でした。今日多くの市民の憩いの場として親しまれている川の再生は、「佐賀ん町の川を昔の清流に戻したい」という市民の声の高まりと、行動によって始まりました。昭和61年、水の浄化運動や下水道の効果が評価され、当時の建設省よりアクアトピア都市(親水都市)に指定されました。行政はこの構想の中で、空洞化し沈滞する界隈の賑わいと憩いの場の復活を目指し、流呈内750mの橋梁・隣接道路を含む一体的整備を行いました。
松原川の幅は7~8m。しゃがめば水に手が届く親水歩道、飛び石が配置され、昔ながらの石垣の護岸がなされ、ハナミズキ、モミジの植栽も配されています。隣接する佐賀鍋島藩の藩祖鍋島直茂と祖先を祀った松原神社の緑陰と相俟って清々しくも、豊かな風情を醸し出しています。
同時に整備された隣接道は1m程狭められました。自家用車の保有台数が全国的に見て多い佐賀県において、歩行者を優先しています。川辺に防護柵を設置しなかった事と併せて、確かなビジョンが存在した事を物語っているように思えます。
ここで昨年10月から、許可を得て魚採りをしました。チョウサです,調査。最近の言葉で言うと「ワイルドライフマネジメント」の真似事です。その成果の一部を佐賀大学の地域貢献分室ゆっつら~と館で飼育しています。
入水(じゅすい)?と目視観察により以下の生き物がいる事を確認しました。
行政が放流したと思われる鯉が約80尾、大きさと珍しさからか善意の人が持ち込んだと思われる1m前後の草魚が4尾、似鯉(ニゴイ)3尾、ブラックバス1尾、ヤリタナゴ、モロコ、カマツカ、メダカ、カワムツ(A型・B型不明)、エビ2種、鮒などです。通りかかった人の話では、以前は沢山のエビがいて、子供たちはそれを採って遊んでいたが、最近は、エビも川で遊ぶ子どもの姿も滅多に見られなくなったそうです。
エビは何とか2尾程採集出来ましたが、貝類は見つけることすら出来ませんでした。
鯉の散逸を防ぐ為この川の上・下流に設置されている鉄柵の外には沢山のカワニナがいます。先日は下流の柵の外で、13cmのカラスガイと3cmに成ろうかというシジミを採集できました。
タナゴは長い輸卵管でカラスガイの体内に産卵します。ホタルの幼虫はカワニナを餌にして育ちます。これらを育む貝類が生息しないのは、鯉の捕食圧によるものと言って良いのではないか思います。
鯉釣りをされる人ならご存知でしょう、最近の鯉釣りの餌はタニシ、カラスガイ等の貝類です。逃げ足を持たない彼等は鯉の格好の餌に違いありません。川底には、杯位のくぼみ、ゴルフボールのディンプルのような物が無数にあります。鯉が砂泥と一緒に餌を吸い込んだ“食み跡”です。鯉がその食性と遊泳により、水底の細かな粒子を下流に流し、濁りのない、キレイと感じる川をもたらしているのは確かです。反面、この川の水量、面積に対して多すぎると思われる鯉の数が、生息してもおかしくない多様な生き物たちを食べつくしたり、追いやっているのではないでしょうか。
生物の多様性は、私たち人間が安全に生きる事が出来る環境の指標と言われています。鯉の数を減らさなくても、多様性を実現することは可能だと思われます。
生き物それぞれが棲み分けられるように、例えば鯉が入って来れないような浅場を作れば良いのではないでしょうか。子供の頃に見た真っ赤な婚姻色をまとったニッポンバラタナゴ、下駄カラコロと鳴らして追いかけたホタルが、この川に帰って来た情景を想像するとワクワクが止まりません。
川辺に立てば鯉が寄って来ます。餌をやる母子の姿など微笑みを禁じえませんが、水・生き物・人の関わりを想う時、人がそこにあると同様に、棲むべき生き物達がいるべきだと思えてなりません。水中で産卵するトンボに驚いて欲しい。
小さくはかない命に触れ、思わずこみ上げる自分の優しさにも気づいて欲しい。
沢山の人が訪れ、愛着ある川だから松原川にはもっとキレイに豊かになって欲しい。
昨日、街中の名もない小さな川で数頭?のイトトンボを見つけました。
交尾したトンボは水草に卵を産み付けていました。
佐賀市は全国的に見ても、街中でトンボが見られる稀有な都市と言われています。
賑わいと憩いの場の復活を目指して始められた松原川の再生。
そのセカンドステージとして、命溢れる川の創造を想っています。
水辺を活かした街づくり、水辺を活かした観光都市に関心のある方は、是非
ゆっつら~と館のホームページ 「川を活かした町づくり海外編」をご覧下さい。