短歌：電柱（閏）

田中さん歩きスマホでぶつかった電柱にまた謝っている




Hail Sathanas.

短歌：沈（閏）

露天風呂の底に沈んだ手袋が我に向かって這う月の夜




Hail Sathanas.

短歌：煙突（閏）

煙突に罠を仕掛けた師走の夜タヌキ寝入りで鈴の音を待つ




Hail Satahanas.

短歌：あと（閏）

残額が４円のわたくしのあとに続く殺気に満ちた行列




Hail Sathanas.

短歌：一人（閏）

赤ん坊がママを呼ぶ泣き声がする一人夜勤の会社のトイレ




Hail Sathanas.

短歌：登（閏）

登山道で会釈交わしたおばちゃんの目と口のなか泥のかたまり




Hail Sathanas.

短歌：埃（閏）

割れた窓の日差しに煌めく塵埃が人型をなし彷徨う廃墟




Hail Sathanas.

短歌：根（閏）

根曳峠ライブカメラが明け方に捉う無人の逆走バイク




Hail Sathanas.

短歌：前（閏）

火葬場で我らの前を横切った女性がぼやく「なんで見えるの？」




Hail Sathanas.

短歌：鍵（閏）

留守中の防犯性は完璧だ　鍵がこの戸の中にあるから




Hail Sathanas.

短歌：遺失物（閏）

コピー機のカバーの下に隠されし『新・忘れもの防止マニュアル』





Hail Sathanas.

短歌：足（閏）

午前２時デニムにミュールの”足だけ”が貨物列車に向かって歩く




Hail Sathanas.

短歌：散歩（閏）

散歩道でカーブミラーに映る目かくしされて横たわるぽぽちゃん




Hail Sathanas.

短歌：黄昏（閏）

うたかたの大賑わいに毒されたゆかしき東尋坊の黄昏




Hail Sathanas.

短歌：鋭（閏）

夕日を背に駆け寄ってくる人影の両手に尖る鋭い何か




Hail Sathanas.