また登場する女性について。
暗い過去の絵に描いたようないきさつがある。いかにもというような傷はある。頭脳的ともいえるような悩みがある。そしてAかBかどちらかという算数の問題みたいにはっきりとした問答を展開していく(肝心の意味が良く分からないところがあるが)。そして答えが○だとどんどん相手に接近していくとか、そんなふう。相手方もそれにきっちり反応していく。
それにしてもあまりにぬけめがなくスマートなのだ(あるいはユニーク)。暗さにじくじくしたところがなく頭の問題のようで妙に観念的に感じられる。おそらく女性との関係にしても抽出されたような象徴的な表現になっていて、自分のようにリアルかどうかを土台にして見るのは的外れなのかもしれないが、どちらにしても人物の陰影というのは、そんな取ってつけたようにスマートであったりくっきりしたものではないはずである。
つまらないような肉体上のささいな欠点を気にするとか、ちょっとしたことで意味も無く取り乱すとか、その場の弾みでちょっと隙が出るとか、過去のいきさつも話にするのはずかしいほどローカルであったり・・・また本当は、精神的に優れた女性なら初めから高い思念の問題だけで生きているようなきっぱりした体裁は無く、逆に当然意識されるはずの育ちの違いという深い溝を最初は感じて戸惑うのが当然だろう。他人であれば、また男と女であればなお、どのみち動揺が先にあるのが本質的で、そういうものを飛び越えてクールな男女関係を描いて、セックスまで行く。こういうのを読者はどうやって受け止めたらいいのか。
村上さんの描く女性を魅力的だとかセクシーだとかいう感覚は自分にはさっぱり理解できない。そしてこういう表現によってなにを表したいのだろう。なにを言いたいのだろう。神話がベースか何か分からないが自分にはなんの教訓も得られる気がしないし、ちっとも魅力的に感じられない。どういう意図があろうが血が通っていないのは死に体ではないか。吐息が感じられないような女性になんの魅力があろうか。
不幸で美人でキッパリとした女性ばかり前に出さないで、たまにはブスでうじうじして間延びしているが可愛いというような女性像を取り入れてもらいたいものだ。たまにでいいから。