ファンタジーノベル「ひまわり先生、事件です」

小さな街は宇宙にリンク、広い空間は故里の臍の緒に繋がっていた。生きることは時空を翔る冒険だ。知識は地球を駆巡る魔法の杖だ

第5章連載≪7≫「ひまわり先生、大事件です。豪雨と土砂崩れと土石流が地球を襲います…

2015年12月15日 | ファンタジーノベル


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ひまわり先生の子どもたち…、君子、悟、美佳、太一、徹たちの6年2組の新聞班は、誘拐された勇樹を捜すために、10年後にもう一度、小学校の桜の古木の下に帰ってきた。5人は固く手をつなぎ、桜の満開の下で、今この時の再会に、それぞれの顔を見合いながら感涙した。時の経過と共にお互いか失ったものに哀しみ、世界を彷徨い探し続けた末に見つけた心の糧がここにあったことを頷いた。多摩川小学校には、町に住む茜や竜や緑たちの仲間がいた。

小さな街は、宇宙にしていたリンクしていた、そして、広い世界の先は、生まれた街の臍の緒に繋がっていた。生きることは、いつも時空を翔る冒険だ。知識は、地球を駆巡る魔法の杖だ。見つけたものは、地球を闊歩した巨大恐竜の足跡とグーテンベルクと戯れる蝶だった…


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★登場人物の紹介★徹編★

安政4年の横浜開港時代より文明開化の波に乗り外国との貿易商を開いている横浜の老舗貿易商「横浜極東貿易」の小泉家の小泉徹は、小泉家の次男です。徹の一族は、遠い祖先から、親戚一族は、大なり小なり水に関係があった。東京湾に浮かぶ海苔船の船大工から出発して、多摩川の砂利を採掘する舟、蝦夷地と大阪を日本海を回遊して結び、海産物を運ぶ北前船の造船を手掛け、幕府の遠洋航海御用船の補修部品の御用を受け、明治期の夜明けには、横浜商人原善三郎や茂木惣兵衛などの生糸の貿易商人とも親交があった。幕末から明治維新にかけての騒乱期には、外国から来たイギリス人グラバーなどの貿易商とも交流があったと伝わっています。神奈川に設けられた運上所に慶応元年に、トロイ遺跡を発見したシュリーマンが日本を訪れたときに、運上所の通詞たち、福地源一郎や子安峻らと親しかった小泉家の語学上手の遠い親戚が、シュリーマンと片言の会話をしたとかーも伝わっています。彼は、この横浜で改掛の福島久治から輸入品の値踏みを教わり、貿易を始めたという。日清、日露戦争、第一次世界大戦、太平洋戦争にいたるまで、日本の歴史の動乱期と深く関わっていた。噂では、陸軍の食料量抹や武器火薬の輸送も兼ねて、中國大陸から大陸の貴重品を日本に輸入して莫大な利益を上げていたともいわれています。彼の家系のおじいちゃんもお父さんも、秀才のエリートでした。徹も利発で秀才ならば、兄の優雅は、それに輪をかけて天才肌であった。その才能を持て余でしたしている兄は商人の道から退けられて、小泉家の後継者とはならなかった。むしろ、趣味の陶芸と音楽、和歌の世界に生きている。子供の頃より、社長になるべくしてなる帝王教育を受けていたが、優雅の才能はそれを大きくそれていた。10年後の徹は、期待通りに貿易会社の社長となり、ひとみ先生の嬰児・勇樹失踪の捜索を真剣に追いかけていた。

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 眼を見つめながら話しをするひまわり先生の瞳が、次第に潤んできた。「…私たちと同じ東北の小学生に愛の手をさしのべたいのだけれども、みんなはどう思う?」と、一息に話して、みんなの反応を窺った。クラスの視線は、さっきまで地震の被害者を助けようと、呼びかけていた徹の方へ一斉に集まった。徹が、先ほどの「…大地の揺れに怯える子供たちに、温かい手を差し伸べましょう…」と、次を言い掛けたところで、突然に太一が立上って、ひまわり先生に第一声を発した。「俺は、家の店先の野菜をダンボールに詰めて、米俵を積み込んで、石川五右衛門の大釜のような大きな炊飯道具を乗せて、トラックの荷台を一杯にして東北に向ってひた走るつもりです。何より父ちゃんも母ちゃんも、俺に人助けを望んでいるはずなんだー。徹も、俺に賛成してくれるだろー。「先生、俺は1週間の欠席届を出します、いいですか?」と、大胆なことを言い始めた。君子が、太一の言葉に感激したように拍手をした。美佳が顔を紅潮させて、「素晴らしい、nice great…」と、瞳を輝かせた。悟が内心で、「よく言うよな…」と言った呆れ顔で、太一と君子を眺めた。徹が半信半疑の顔で、「運転は誰がするのかな?」と、心の隅で思いながらも、大の親友に近づき、「太一よ、よく言った…」と、肩を叩き熱い握手をした。ひまわり先生は、太一を叱るように、いつものようにニコニコして、「太一君、1週間の欠席は、たとえ崇高な目的をもったボランティア活動でも認められませんよ…」と、きっぱりと返事しました。

 涙があふれるばかりに昂揚したさっきのひまわり先生とは打って変わって、冷静であった。アメリカ生活の長い美佳が第二声を発した。「私が以前に居たニューヨークでは、地域のコミュニティ単位で、救援活動をしたわ。いらない物を持ち寄って救援物資をまとめ、ズボンのポケットから小銭を探って募金するの。私もずっしりと重たい貯金箱の中身を救援基金に入れ、サイズの合わなくなった洋服をダンボールの箱に投げ込んだわ。ニューヨーカーを真似て、多摩川の地域ぐるみで救援活動をしたらどうかしら…」と、太一と同じ勢いで提案をした。美佳のアイデアに異議を唱えるものは居なかった。「賛成、それがいい、すぐに始めよう、家にも不要品がたくさんあります、みんなで早速やろう…」と、美佳に賛成する声が合唱した。

悟だけがさっきから黙考している。何かを言いたいが、口から飛び出しそうな言葉を手で抑えているようで、苦しげである。ひまわり先生もこれに気が付いて、「悟君の意見は、どうなの?」、と聞いた。悟の家は、多摩川商店街で「ヒポクラテス薬局」を経営しています。ヒポクラテスというのは、古代ギリシャの哲学者で、医学の祖とも言われている。この薬局の屋号は、開店の時に母が熟慮の末につけたネーミングであった。以来、シングルマザーの母は、悟をこのお店の立派な後継者か、最近では、このまま商店街の薬局で燻らせたくないと考えていた。夫の亡くなった後は、だから、家出した神戸の実家に悟を預ける気でもいた。兎も角も、悟の将来に生き甲斐を見出していた。母の背中であやされている頃より、医療関係の仕事につくこと、薬局か病院の跡継ぎへの期待は、ミルクと一緒に悟の意識に注ぎ込まれた。今では、「ヒポクラテス」は、頑固な父親のような存在になっていた。だから、家出をして落語家に成りたいという悟の荒唐無稽な気まぐれは、父代わりのヒポクラテスへの幼い反抗でもあったともいえます。

以前より、悟はギリシャ哲学の本を図書館から借りて熱心に読み、古代ギリシャのコス島で生まれた「医術の父」を詳しく調べ、よく知れば知る程、「父」への懸命な反抗は、深い尊敬に変わった。多分、彼は、日本中の小学生で一番ヒポクラテスに詳しく、医学部のどんなに優秀な医師の卵よりも医の倫理を心得ていたかもしれない。「僕の母の実家は神戸で、お爺さんとお婆ちゃんが住んでいました。でも、10年前の阪神・淡路の大震災の時に震災の犠牲となりました。だから、災害の被災者のことが親戚のことのように思えて、涙が出てきます。ヒポクラテスは<医者に涙は要らない、悲しむ間に患者の命を救いなさい…>といっていますが、ヒポクラテスは違っています!医者も患者と同じ涙や痛みを持たなくてはいけないと思っています。東北の人たちが今、一番欲しいものは、怪我人の手当てをする医者と薬なんです。出来るならば、店の薬を全部梱包して送りたいです…」と、ここまで咽喉を詰まらせながら一気に言った。すでに、悟の目に涙が溢れていました。教室は水を打ったようにシーンとなって、校庭のざわめきがみんなの耳に声援のように浮き上がって聞こえた。感涙したひまわり先生が悟に拍手をした。君子は、「悟君、悟君は立派だわ…」と、泣いた。

でも、最近の地球はなんか変だ…。地球の今までの安定した自然システムがどこか狂ってしまったようだ…。地球を襲う大地震もそうだ、頻繁に世界を襲う津波もそうだ。ゲリラ豪雨も、それによって大雨が山を崩し、川を氾濫させ、土砂豪雨が家と町を押し流していた…。
海の温度は上昇しているー、海流も変わっている、温暖化は天候を異変させています。海底のマグマも地殻変動も活発である、火山が噴煙を上げて火山活動が始まっているー。この先、地球に何かが起きても不思議ではないです。生きているものを取り囲む自然環境は、徐々に、人間の生存を追い詰めていっているようだ。原始、恐竜が突然地球から消滅したように、人間もこの緑のプラネットから消えていくのかー?



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