心筋梗塞で倒れた滝乃は体調が良くない。
滝乃のようすが心配だと、麻生に電話した美月。
美月『今朝から不思議なくらい元気なんですけど、あんまり元気やから心配なんです。倒れたことは誰にも内緒やと母は言うんですけど、麻生先生にだけはお知らせした方がいいような気がして。』
麻生『僕がいっても、滝さんはおうてはくれへんでしょう。』
美月『そうかもしれません、けど、母の人生で一番素敵やったのは私と暮らした時間ではなく、椿屋でもなく、麻生先生と過ごした5年間です。あの5年は50年にも匹敵すると、いうてましたから。』
滝乃が部屋に入ってきたので
美月『ほな、そういうことでよろしくお願いいたします。失礼します』
電話を切る美月。
しんどそうな滝乃。倒れ込んでしまう。
『病院には連れて行かんといて、最後のお願いや』苦しそうな滝乃
大京映画の久しぶりの映画の企画「巌流島異聞」は、ミキプロ倒産で頓挫する。
病床で寝ている滝乃に美月が
美月『麻生先生、かお 見ーひんでもお話したい、いわはるんやけど。それもあかん?お母ちゃまが会いとないということ、先生はちゃーんと見抜いてはった。そやから 襖越しでもええから、話だけでもしたいって』
答えない滝乃
美月『嫌やったら、無理せんでもええけど』
麻生がスダレの向こう側に姿を現す。
麻生『滝さん、久しぶりやな。今更いうても遅いけど、僕が未熟やった思うてる。滝さんを追い詰めてしまったこと、許してください。』
すだれ越しに頭を下げる麻生先生。
麻生『一年前の大晦日の夜、あんたは いつの間にか姿を消してた。言いたい事も言わんと、僕は自分の思いをあんたに押し付けてたことを、あの晩 初めて気が付いた。港の汽笛と、除夜の鐘にそんな隔たりがあることに気が付いてなかったんや。あれからずっと思うてたんや、いっぺん ちゃんとおうて謝りたいって。』
『そやのに今日になってしまった。会いとないて、椿屋の玄関で言われたら悲しいやろ、なかなか勇気がでやへんかったんや。あれから もうすぐ一年や、今年中に滝さんに会いたい思うてた。
滝さん、僕は生まれてきて、あんたに出会えて感謝してる。あの5年間は僕にとっても50年の重さや。有難う滝さん、おおきに、あんたのわろた顏、怒った顔、泣いた顔、僕は一生忘れへんで 』
『ゆうさん・・』
『そっち行ってもええか?』
『あかん、元気になったらまた会おう。神戸で一緒に汽笛を・・』
『滝さん・・』
この夜からお母ちゃまの意識は無くなった。
撮影を抜けて家に帰った美月の帰りを待っていたかのように、滝乃は逝った。
滝乃さん死す。
肩ひじ張って女一人で旅館を守ってきた滝乃の人生に現れた麻生先生。一度は、その胸に飛び込むが、結局 椿屋に出戻った。
滝乃が、言いたい事もいわんと・・?そんな、我慢しているような人では到底なかったけれどな~。椿屋に縛られているわけではなく、あっさりと椿屋を手放して、美月に押し付けて出て行って、また出戻った。神戸が自分が思い描いた景色と違っただけでしょう。身勝手やわ(-_-;)
それにつけても最後まで優しかった麻生先生。麻生先生の関西弁の柔らかい温かい響きが、心の中にじんわりと広がりました。ああ、ええ声やわぁ・・
春の雨の様に優しい麻生先生、ゆうさんの気持ちを素直に受け止めることが出来なかった滝乃さんは、哀しい意固地な女です。
7日は二十四節季のひとつ、白露だそうですが、ツトムさんの「土を喰らう十二ヵ月」で覚えました。麻生先生の執筆する姿には、ツトムさんの静かな姿と多く重なるところが有りました。季節は夏から秋の気配に。8日は汽笛が聞こえる神戸にようこそ、お帰りなさい!!
画像は千葉のJ友さんより
青森のj友さんより、まだ暑いそうですが景色は秋めいています。
わが家のペチュニア