ホスピタリズムとは、施設病とも訳され、施設で育った乳幼児の死亡率、疾病率が高く、発達的な遅れや性格の歪みが多い状況を指しています。これは特に20世紀初頭から問題視され、欧米ではいち早く施設内の人員配置を厚くして状況の改善を図りました。日本でも同様の方法で改善を図っていますが、まだ欧米レベルまでの配置基準にはなっていません。
オーストリアの児童精神分析医のスピッツの調査研究によると、貧しいが母親が充分に手をかけて育った乳幼児と、医療環境が整った施設で少ない職員の中で、流れ作業のように機械的に育てられた乳幼児とでは、後者の方が格段に死亡率や疾病率が高かったという結果が出ています。
もっと平易な言葉で言うと、機械的に育てられた子どもでは、正常には生きられないということだと思います。赤ちゃんにオッパイをあげる時、お風呂に入れる時、目に語りかけながら愛情一杯のコミュニケーションをとり大切に大切にそだてます。当たり前の子育てのイロハが実は赤ちゃんにとって、一番大切な生きる糧となっていることに驚きます。
日本の乳児院では、充分とは言えない配置ですが、職員たちが一生懸命にお母さんの役をこなしています。児童養護施設でも同じく、不十分ではありますが一人一人のニーズに合わせた養育(個別化)を目指し奮闘しています。 さんあいは、8年前に大舎から小舎へ移行し、より家庭的な養護を目指しています。これから大切なことは、子ども1人ひとりの個別対応が出来るだけの職員を配置することです。
まだまだ挑戦は続きますが、さらに子どもたちにとってよい養育を目指し4月からの新年度を歩みたいと思います。
穏やかな春の日差しの中、「私を見て!」とばかりに咲いている中庭の水仙。