下記の記事は日経グッディからの借用(コピー)です
果物を食べると太る、血糖値が上がりやすいと思っている人が多いのではないか。ただ最近では生活習慣病の予防・改善に活用できるといった研究も出てきた。果物の働きを知り、食生活にうまく取り入れたい。
果物は各種ビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含んでいることが多い。2017年改訂の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」は果物が心臓病や脳卒中のリスクを減らす可能性があると示唆。グレープフルーツ、キウイフルーツ、ベリー類などの適量摂取を勧めている。
心臓病や脳卒中を誘発するのが動脈硬化だ。悪玉と呼ばれる「LDLコレステロール」は増えすぎると血管の壁に付いて動脈硬化の原因になるとされる。中性脂肪を気にする人も多いだろう。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)健診部の小久保喜弘特任部長は「果物に含まれる食物繊維は脂質の吸収を抑える働きがある。また腸内環境を改善し、免疫力を高めることにも役立つ」と話す。
動脈硬化とも関係する高血圧は「万病のもと」と言われる。原因のひとつとしてナトリウム(塩分)の取り過ぎが挙げられる。果物にはカリウムを含むものが多い。「カリウムはナトリウムの排出を促すので、果物を適量食べるのは高血圧予防につながる」と小久保特任部長。カリウムが豊富なのはバナナやキウイフルーツだ。
年齢を重ねるなど様々な理由で体内に増えすぎた活性酸素は細胞を酸化させてダメージを与え、生活習慣病につながるとされる。動脈硬化も血液中でのLDLコレステロールの酸化で促進されるという。そこで注目したいのが柿やキウイフルーツに多いビタミンCをはじめとするビタミン類の抗酸化作用だ。
女子栄養大学栄養学部の林芙美准教授は「ビタミンだけでなく、ファイトケミカルにも抗酸化作用がある」と話す。ファイトケミカルとは植物由来の化学成分だ。ブドウのアントシアニンなどのポリフェノール類、スイカのリコピンなどのカロテノイド類が知られている。
こうした点を踏まえ、国が推進する健康づくりの取り組み「健康日本21」は1日に200グラム以上の果物摂取を目標とした。大きさによるが、ミカン、バナナ、キウイフルーツなら2個程度、リンゴや梨なら1個程度が可食部200グラムの目安だ。しかし19年実施の国民健康・栄養調査によると、1人当たりの1日平均摂取量は96.4グラムにとどまる。
摂取量が少ない原因のひとつに「果物は甘くて太りやすい」という思い込みがある。林准教授は「多くの果物は大部分が水分。カロリーの高い脂質もそれほど含まない。重さからするとカロリーは比較的少なく、適量摂取は肥満につながらない」と説明する。
「果物は血糖値を上げやすい」ともいうが、実際は多くが血糖値を上げにくいとされる。含まれる食物繊維に消化管での糖質の吸収を遅らせ、血糖値の急上昇を抑える作用があることなどによる。ただ「ジュースにして大量にとると血糖値が上がりやすい。市販のジュースは濃縮還元の過程で栄養素がかなり失われている。できるだけ生の果物を丸ごと食べてほしい」と小久保特任部長は指摘する。
最近の研究から血糖コントロールが必要な糖尿病患者にも適量の果物摂取が推奨されるようになった。林准教授は「糖尿病患者はグラムでなくカロリーで量を調整してほしい。病態にもよるが、1日に約80キロカロリー分が望ましい。イチゴなどカロリーが低い果物を選ぶとよい」と助言する。
みずみずしい果物は夏バテしやすい季節の水分補給にもおすすめ。上手に食べて健康維持に役立てたい。
(ライター 松田亜希子)
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