goo blog サービス終了のお知らせ 

皆さんと一緒に考えましょう

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ワクチンに限界 意識を

2021-08-23 10:00:00 | 日記

下記の記事は日本経済新聞オンラインからの借用(コピー)です。


6月、イスラエルのテルアビブにある自宅でロンドン出張の準備をしていた筆者は、家の中にマスクが一つもないことに気づいた。それどころかマスクは近所のどの商店にも置いていなかった。感染が急拡大しているイスラエルは3回目のワクチン接種を始めた=AP
新型コロナウイルスのワクチン接種が世界で最も迅速に普及していた国の一つであるイスラエルでは、6月時点で誰もマスクを必要としなくなってからすでに数カ月がたっていた。
3月中旬にはロックダウン(都市封鎖)が解除されてイスラエル国民はパーティーに興じた。4月にはマスク姿を街でみかけることは珍しくなった。国土面積が小さいイスラエルは誰もが知りたいであろう、パンデミック(世界的大流行)後の未来を垣間見ることができる場所となった。
「なぜマスクが必要なの。コロナは終息したのよ」。近所の商店のおばあさんはくすくす笑いながらそう言い、店の奥から探し出した半分だけ売れ残っていたマスクが入った袋を差し出した。筆者はそれを受け取って空港へ急いだ。
先進国の未来を占う指標
筆者はその後、2回のワクチン接種後にインド型(デルタ型)の陽性が判明する「ブレークスルー感染」の初期事例を経験し、自宅を離れてから1カ月後にロンドンから帰国した。その時点でイスラエルの街中はマスク姿であふれていた。
感染者数も急増していた。6月上旬には1日の新規陽性者数は数十人程度で、6月9日のようにゼロだったことすらあった。だが、8月9日からの1週間では2日にわたって6000人前後に達し、この6カ月間で最多となった。
イスラエルは、大規模なワクチン接種がパンデミックに及ぼす影響を示す国家的なデータを提供することと引き換えに独ビオンテック・米ファイザー製のワクチンを早い段階で大量に入手してきた。接種が進んだ先進国の未来を占う指標として大きな注目を集めてきた。
数カ月間は希望に満ちたニュースが続いたが、現在イスラエルから出てくる情報は気がかりなものばかりだ。
イスラエル保健省はビオンテック・ファイザー製ワクチンの長期的な有効性を2度にわたって下方修正した。
以前は当時多かった英国型(アルファ型)に対して、メーカーの試験結果と変わらない94%の有効性があるとしていたが、現在主流となりつつあるデルタ型に対しては有効性が64%にまで低下したと分析している。
新規感染が増えるにつれて入院患者数も急増した。ワクチンを接種した人と比べると接種していない人の重症化率は5~6倍になるが、ワクチンの効果は高齢であるほど急速に弱まることもわかった。
高齢者は最も重症化しやすく、イスラエルで高齢者の1回目接種が始まった昨年12月上旬から既にかなりの時間が経過している。
再度のロックダウンも視野
イスラエル保健当局は、このペースで感染者数が増えれば9月上旬までに少なくとも5000人は入院が必要になり、その半数が高度な医療措置を必要とするとの予測を発表した。これはイスラエル全体で対処できる人数の2倍にあたる。
子供とその祖父母が長い週末を一緒に過ごすことが増える夏休み期間中にもかかわらず、イスラエルは再度のロックダウンが視野に入る事態に直面している。
イスラエルのベネット首相は、急増する重症者に対処するため7億7000万ドル(約840億円)を投じて病床数を2倍に増やす緊急対策を発表し、今後に備える態勢を敷いた。
ベネット氏は8月11日にこの対策を発表した際、迫り来る苦難を緩和するためのものだと国民に率直に語った。イスラエル政府は8月1日から60歳以上の国民にファイザー製ワクチンの3回目接種を開始した。予測不能な第4波に突入しつつあるなか、今後を試す公衆衛生実験に着手したことになる。
「(3回目の)ワクチン接種が効果を表し、感染拡大を止められるようになるまでには時間がかかる。それまでの時間を稼ぐために病床数を増やさなければならない」とベネット氏は訴えた。
これまで77万5000人が3回目の接種を終えており、医師らによると接種した人は数日で抗体値が目に見えて上昇しているという。8月13日からは3回目接種の対象者を50歳以上に拡大した。
だが、保健当局の関係者はもっと早くから3回目接種に踏み切るべきだったと考えていた。71歳のネタニヤフ前首相もそう考える一人だ。
昨年、世界各国がワクチン供給を待つなか、当時のネタニヤフ首相は自国の接種データをファイザーに提供することと引き換えに、他国に先駆けて大量のワクチンを入手することに成功した。
イスラエルが「ワクチン接種先進国」となるきっかけをつくった一人で、昨年12月の国民への1回目接種開始に先立ち、イスラエル市民として初めて接種を受けた。しかし、8カ月後には自身の抗体値が低下していることを確認した。
ネタニヤフ氏は二重マスクで国会に登院するようになり、ブースター接種(3回目の追加接種)の承認を要求するようになった。自身の3回目接種では「遅くてもやらないよりはましだ」と不満を漏らした。
春から夏は小休止
3回目接種はイスラエルが新型コロナワクチンの最前線にあることを国民に改めて実感させた。各国に先駆けて1回目の接種を受けたイスラエル市民は、3月にロックダウンが解除された時に「ファイザーに乾杯」と祝っていた。
そのイスラエル国民は今、ワクチンの限界を身をもって体験している。抗体維持には定期的な接種が必要かもしれないという以前からささやかれていた必然的な結論を世界で初めて受け入れるようになっている。
近所の商店には今、入店の際にマスク着用を求める巨大な看板が掲げられている。店の奥で半分だけ売れ残っていたマスクをようやく見つけてくれた人なつこいおばあさんは、それから2カ月もたたないうちに100枚入りの箱を売っている。
今のイスラエルから学ぶべき教訓があるとすれば、コロナは終息していないということに尽きる。この春から夏にかけては小休止にすぎなかった。次は冬がやってくる。
By Mehul Srivastava
(2021年8月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/



コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。