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新型コロナやインフルエンザ対策には、免疫力の見直しを
ここ数カ月、再び感染者数が増加し続けている新型コロナウイルス。感染を予防するには、免疫力を高めることが大切と森下教授は語る。
「新型コロナウイルスの感染予防として、マスクの着用や手洗い、うがい、定期的な換気といった個人でできる対策はある程度実行され、日常生活に浸透しています。しかし、新型コロナのほか、インフルエンザなどさまざまなウイルス感染症への対策が求められる冬に向けて、改めて感染予防として免疫力を見直し、自衛していく必要性が高まっています」
免疫力を上げるには腸内環境を整えることが重要だが、これはすでに実行している人も多い。実際に、ヨーグルトや納豆、みそといった発酵食品の家計消費金額は、昨年に比べ大きく伸びている。
腔環境の改善が、免疫力アップのカギに
しかし、免疫力を上げるには腸内環境だけでなく、口腔環境を整えることも重要であることがわかっている。
そもそも「免疫」とは、外から侵入してきた細菌やウイルスなどを異物として攻撃し、正常な状態を保つための自己防衛機能のこと。免疫には、人間が生まれつきもっている「自然免疫」と、特定のウイルスに出合うことで後天的に獲得され、そのウイルスだけを退治する「獲得免疫」があり、獲得免疫の仕組みを利用したものがワクチンだ。ところが、新型コロナウイルスのワクチンはまだ実用化されていないため、自然免疫を上げることがポイントとなる。
「自然免疫においては、口腔、鼻腔、腸管といった『粘膜免疫』が第一の防御壁となり、ウイルスの体内への侵入を防ぎます。なかでも、口腔はウイルスの最初の侵入口。飛沫感染、エアロゾル感染、手指感染のすべてが口腔から起こるケースが多いといわれていますが、口腔には『IgA』という抗体が存在し、感染予防の要となる役割を担っています」
IgAは口腔内に侵入した細菌やウイルスにくっつき、粘膜への付着を防ぐ働きがある。細菌やウイルスにくっついたまま、唾液によって洗い流されることで、体内への細菌やウイルスの侵入を防ぐのだ。つまり、口腔はウイルスをブロックするマスクの役割を担っているといえる。
「実際、口腔ケアを行って口腔環境を整えることで、インフルエンザの発症率が10分の1になったという調査報告もあります」(森下先生)。
口腔環境は、気づかないうちに悪化する
では、口腔環境は、なぜ悪化するのだろうか。
歯学博士の若林健史先生によると、そもそも良好な口腔環境とは、清潔で歯周病などの炎症が起きておらず、本来の機能を発揮できる状態を指す。
「口腔内の環境が悪化する主な原因として、喫煙や乾燥、糖質の過剰摂取、ストレス、家族間の菌の感染が挙げられます。歯肉(歯茎)に出血があるほか、『歯周ポケット』と呼ばれる歯と歯茎の間の溝の深さが4mm以上ある場合に歯周病と判断されますが、45歳以上の過半数が自覚のないまま口腔環境が悪化し、歯周病になっている恐れがあります」。
出典:厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査結果
さらに、最近はコロナ禍によるマスクの着用で口呼吸になり、口腔内が乾燥する人が増えている。その結果、唾液が出にくくなって自浄作用や免疫力が低下して菌が増えやすくなり、歯垢などの温床になるという。加えて、コロナ禍によって歯科の受診を控えている人も多く、口腔環境を良好な状態にキープできないケースも多いようだ。
バクテリアセラピーで、口腔環境を改善
このように、知らず知らずのうちに悪化する口腔環境を整えるには、「プロケア」「セルフケア」「バクテリアセラピー」の三種が必要となる。
資料提供=若林健史先生
「なかでも『バクテリアセラピー』は、ここ数年、予防医療として注目されています。バクテリアセラピーとは、ノーベル生理学・医学賞選定機関であるノルウェー・カロリンスカ医科大学で30年以上研究されている新しい概念で、優れた生菌の善玉菌(プロバイオティクス)を摂取することで体内常在菌のバランスを整え、健康を維持するもの。善玉菌を用いるため薬剤耐性が起こらないうえ、ヒト由来の善玉菌を用いるため体に定着しやすく、子どもから高齢者、妊娠中の女性まで安心して摂取できます」(若林先生)
バクテリアセラピーに使用されるプロバイオティクスには、「安全性が十分に保証されていること」「もともと腸内フローラの一員であること」「胃液や胆汁に耐えて腸内に到達できること」などWHOが定めた7つの条件があるが、そのすべてをクリアしているのが「ロイテリ菌」だ。
「ロイテリ菌とは、もともと人の体内に生息し、母乳を通じて受け継がれてきた乳酸菌です。世界100以上の国と地域で使用され、200以上の臨床研究がありますが、副作用の報告は1件もありません」(若林先生)
また、ロイテリ菌は、体内で「ロイテリン」という天然の抗菌物質を生成し、虫歯や歯周病菌などの増殖を抑制する効果が期待できるうえ、善玉菌の増加・活性を促進。口腔で働くだけでなく、生きたまま消化管に届いて働くため、バクテリアセラピーに欠かせないものといえる。ロイテリ菌を含むヨーグルトやサプリメントも市販されているので、口腔ケアに上手に活用したい。
この冬は「プロケア」「セルフケア」「バクテリアセラピー」の三種の神器で口腔環境を整え、しっかりと感染症に備えよう。
日本人の9割近くが知らない、本当に正しい歯周病のケア方法
歯周病の認知率は高いが、半数以上が「ムシ歯」との違いを理解していない
サンスターが30~40代の男女500人を対象に行ったインターネット調査によると、歯周病という言葉を知っている人は92%。ところが、その人たちに「むし歯との違い」について聞いたところ、56%の人が「違いを理解していない」と回答した。正しいケア法については、86.5%の人が「知らない」と答えた。
「歯周病という言葉だけがひとり歩きして頭には残っているものの、日本人は特に歯を美しく保つことへの意識が希薄で、歯周病の恐ろしさが伝わっていないようです」と、日本歯周病学会専門医の大月基弘先生は警鐘を鳴らす。
、40代の3人に2人が歯周病。50代から歯が抜け始める人も
歯周病はプラーク(歯垢)の中の歯周病菌が歯と歯の隙間に入り込み、歯周病菌が増殖することで歯茎に炎症を起こし、その炎症が歯の周りの組織を少しずつ破壊していく病気。歯肉炎(歯茎のみが腫れている)と、歯周炎(歯を支える組織が破壊されて最終的に歯が抜ける)に大きく分けられる。つまり、“歯茎が腫れていて血が出れば歯周病にかかっている“と言える。
「“30・40代の3人に2人が歯周病”とよくいわれますが、実は20代のデータもそう大きく変わりません。15~19歳でも50%の人が歯周病です。つまり、磨き方が悪かったり、定期検診を受けていなかったりすれば、誰でも当たり前にかかる病気なのです」
むし歯のように痛みなどの自覚症状がなく進行するのがやっかいなところで、“歯茎が腫れているだけだけ“と放置すると、歯肉炎が長く続くことで少しずつ歯周炎へと移行し、気づいたときには歯を支える骨が溶けて、歯を失うこともなりかねない。大月先生によると、歯周病が原因で歯が抜け始めるケースは50代から急増するという。これは30~40代で歯周病にかかっていることに気づかずに見過ごしてしまうことが影響していると考えられる。
歯を失うばかりでなく、糖尿病やアルツハイマー型認知症、心筋梗塞など全身疾患と関連しているかもしれないことがわかってきた。歯周病は口腔内の疾患にとどまらない病気なのだ。
歯を失うと平均で6歳老けて見られる
ここで衝撃的な画像を紹介しよう。歯を失う一番の原因となる病気は歯周病(出典:平成30年 永久歯の抜歯原因調査報告書)だが、歯が抜けるとどの程度印象が変わるのか、モデルの写真をすべての歯が抜けた状態に加工したものを比較してみよう。
すべての歯が抜けたように加工した写真では、加工前に比べて平均で6歳も老けてみられるという結果になった。これは、歯によって固定されて安定されている上顎と下顎が、歯を失うことで近づくため。また、歯は唇や頬の粘膜を支え、口元のハリに重要な役割を果たしているが、歯がなくなることで口元のシワが増え、口元が凹んで貧相な印象になるためだという。
すべての歯が抜けた場合の極端な例ではあるが、数本失った場合にもさまざまな弊害が起こる。
「数本失っただけでも噛み合わせが変化し、肩コリなどの影響がでることもあります。また、前噛みや片噛みになるなど食べにくくなることで食事を楽しむのが難しくなります。しっかり咀嚼をせず飲み込むことにもなり、健康に影響をおよぼします」
周病予防はむし歯予防よりもある意味シンプル
歯周病ケアの方法を大月先生に聞いた。歯周病は歯の周りにプラークが堆積することで起きるので、日々のプラーク(歯垢)除去が大切になってくる。歯ブラシを使ったブラッシングだけでなく、デンタルフロスなどの歯間清掃具を使ってプラークを確実に落とすことが重要だ。歯間のプラーク除去率は歯ブラシだけでは61%だが、フロスを併用すると79%、歯間ブラシを追加すると85%にまで高まるという(出典:日歯保存誌.48(2),2005,272‐277)。
「特に奥歯や歯と歯の間の磨き方は難しいです。歯科衛生士か歯科医師に丁寧に時間をかけて教えてもらい、人生の早い段階で正しい歯の磨き方を習得することをおすすめします。歯周病は自覚症状がなく、歯科医師でも自分の歯茎の状態は検査してもらわないとわかりません。定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けることも極めて重要です」
ちなみに、歯周病ケアはプラークに対して、シンプルに徹底的なアプローチが必要なのに対し、むし歯は歯周病よりも複合的なアプローチが必要になってくるという。
「むし歯は酸によって歯に穴があく状態、つまり“口腔内の酸性環境をコントロールできていない状態”です。酸を発生させる“むし歯菌”がショ糖を好むため、歯ブラシをしっかりしていてもショ糖の摂取頻度や量が多かったり、“ダラダラ食い“をしていたりすれば虫歯リスクが格段に上がります。甘いものだけでなく、炭水化物、つまりごはんやパン、ポテトチップスなども糖類を含んでいるため、虫歯リスクを上昇させます。また、レモンや梅干し、クエン酸など酸が強いものを好むこともリスクを高めます」
アプローチは少し異なるとはいえ、歯周病もむし歯も、毎日の清掃が大切であることは共通だ。
「女性の場合、閉経でエストロゲンの分泌が低下すると、歯を支える歯槽骨ももろくなる可能性が指摘されています。歯周ポケット内では炎症を引き起こす物質がつくられ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。閉経が歯周病リスクを高めるかどうかはわかっていませんが、この年代は歯の喪失リスクも上がっているので注意が必要です。喫煙も明らかに歯周病リスクを上昇させます」
「世界でもっとも一般的な病気」としてギネスブックにも掲載されたことがある歯周病。人生100年時代を幸せに生き抜くためにも、歯周病ケアの重要性を改めて考えたいものだ。
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