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「日本人は確実に貧しくなる」"東京という巨大マーケット"が老いるときに起こる悲劇

2021-10-20 13:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です。

日本は世界最速で高齢化が進んでいる国だ。2040年には東京都民の4人に1人が高齢者となる。人口減少に詳しい作家・ジャーナリストの河合雅司さんは「日本は出生数の減少が止められない事態を念頭に置いた政策を考えなければならない」という——。
写真=つのだよしお/アフロ
2021年9月20日「敬老の日」に東京・巣鴨の地蔵通り商店街を散策するお年寄りたち。日本の65歳以上の高齢者は3640万人、人口の29.1%と過去最高を更新した
若者が減り、高齢者が激増していく日本
各国で少子化が深刻化してきた。2020年の合計特殊出生率を確認すると、中国は日本(1.34)と同水準の1.3だ。人口増加が続いている米国も1.64で人口維持し得る水準には程遠い。韓国に至っては0.84と危機的状況である。いずれの国も早晩、日本と同じく激しい人口減少社会を迎えることとなる。
河合雅司『世界100年カレンダー』(朝日新書)
各国でこれから起きることについては、先月上梓した拙著『世界100年カレンダー』(朝日新書)に詳しいのでそちらに譲るが、各国を比べると現状では日本の深刻さが際立つ。少子化だけでなく、高齢化が世界最速で進行しているためだ。
総務省によれば、2021年9月15日現在の日本の高齢化率は29.1%と過去最高を更新した。高齢者数は2040年代初頭に4000万人ほどでピークを迎えるまで増え続ける。すなわち、今後20年の日本は、若者が減る一方で高齢者だけが激増していく極めていびつな社会となる。
悪いことに、コロナ禍によって出生数の減少スピードが速まりつつある。各国の感染状況に差があるため訪日外国人の回復も当面見込めない。こうした厳しい条件下で、旺盛な消費者でもある勤労世代(20~64歳)は2020年現在の約6900万人から2040年には5500万人程度にまで減ると予測されている。コロナ禍の影響が長引けば、2041年以降の予想はさらに悪い方向へと書き換えられることだろう。
「こども庁」を作るのが遅すぎる
そうでなくとも、2043年以降になると高齢者までもが減り始める。この頃になると、日本の総人口は急降下するように減っていく。これが日本を待ち受ける「未来の年表」のリアルだ。
政府はいまさら「こども庁」を新設しようとしている。それ自体を否定するつもりはないが、タイミングが遅すぎる。日本の置かれた状況は、子育て支援策の充実だけではなく、出生数の減少が止められない事態を念頭に置いた政策も考えなければならない。
直近の課題を挙げるならば、国内マーケットの縮小と人手不足は延々と続くこととなる。このうち人手不足は、デジタル化の推進によってある程度まではやわらげられるだろう。だが、機械は消費者になり得ないのでマーケットの縮小のほうは避けられない。それは内需に頼ってきた多くの日本企業にとって死活問題となる。よほど収益構造を変えない限り、多くの企業がマーケットからの退場を余儀なくされるだろう。
大企業ですら「新卒採用」で苦しむことになる
実は、少子化の真の恐ろしさは社会から「若さ」を奪うことにある。いつの時代も新しいモノやブームは若者によって作られてきたが、若者が激減すればそうしたことを生みだす力は弱っていく。今後の日本では、これまで以上にイノベーションが起こりづらくなるということだ。
若い世代の減り方は驚くばかりである。例えば、来春就職する大学4年生の多くが生まれた1999年の年間出生数は117万7669人であった。これに対して、10年後の2009年生まれは1割ほど少ない107万36人だ。20年後の2019年生まれは86万5239人と4分の3ほどでしかない。
わずか20年で25%以上も減ってしまっているのである。これでは大企業も求めるレベルの新卒者を採用し切れなくなるだろう。新風がなかなか吹き込まない企業では組織の陳腐化が進むこととなる。
1980年代には「企業30年説」と言われたが、その後ビジネスを取り巻く環境の変化は速さを増した。東京商工リサーチによれば、2020年に倒産した企業の寿命は平均23.3年だ。これに少子化に伴う組織の陳腐化が加わったならば、企業の寿命はさらに縮む。
「勤労世代が減ること」を前提に企業経営をするべきだ
もはや企業規模の大小を問わず、自分の勤務先がいつまで存続するのかを疑ったほうがよい。倒産・廃業にまで至らなくとも、若者が減り続ける社会では終身雇用や年功序列といった日本の伝統的な労働慣行は続きようがない。
日本は、勤労世代が減ることを前提とするしかないのである。それに対応し得る社会システムの作り直しや企業経営を改革しなければ、社会が機能不全に陥るところまで追い込まれているとの認識が必要だ。
残念ながら、政官界は鈍感だ。先の自民党総裁選でも具体策は聞こえてこなかった。経済界も、量的拡大という総人口が増えていた時代の成功モデルから脱し切れない企業経営者が少なくない。
人々の意識が変わっていない証左は、東京一極集中だろう。多くの人々がいまだ東京の「巨大マーケット」に魅せられている。
しかしながら、東京も人口減少と少子高齢化からは逃れられない。東京都総務局統計部の推計によれば、都の人口は2025年に約1422万5000人でピークを迎え、2040年には約1365万4000人になる。
東京の合計特殊出生率は全国で最も低い(2020年は1.13)。これまでは他の道府県から人口をかき集めることで“見せかけの人口増加”を続けてきたが、地方の出生数減は激しく今後は集められなくなるということである。
2040年の東京は「4人に1人が高齢者」
もちろん、2040年になっても東京が「巨大マーケット」であることには変わりはないのだが、その姿は現在とは明らかに異なる。2040年の東京は年老いてしまうのだ。
地方から上京してきた「かつての若者」たちが老後も故郷に戻ることなく住み続けるため、高齢者の激増が避けられない。都統計部の推計によれば、東京都の65歳以上人口は2040年には現在より65万5000人ほど増えて379万4000人ほどとなる。高齢化率は27.8%で4人に1人以上が高齢者となる計算だ。このうち75歳以上が約183万3000人である。都民の7.5人に1人は75歳以上だ。
多くの人々は高齢になるにつれて若い頃のようには消費をしなくなる。こうしたことを勘案すれば、「巨大マーケット」は実人口が減りゆく以上に早く縮むこととなる。
それどころか、今後の東京は労働生産性を低下させかねない。一般的に75歳以上になると大病を患いがちになるとされるが、東京は若者を中心とした街づくりを続けてきたため、高齢者向けの施設やスタッフが不足している。このままならば、各職場で親の介護のために離職や休業をする人が増えることが懸念される。
病弱とならなくとも年を重ねた人にとっては、階段や段差の多い東京は暮らしやすくはない。移動に時間がかかる人が増えると電車やバスのダイヤが乱れ、都市機能までもが低下しかねない。
他方、中心的な消費世代である生産年齢人口(15~64歳)は、2040年には現在より60万人ほど少ない約850万人となる。60万人といえば、現在の埼玉県川口市の人口に匹敵する規模だ。これほどの規模のマーケットを短期間で失ったならば、存続できなくなる企業が出てくるに違いない。
高付加価値化と労働生産性の向上が生き残りのカギ
このように、東京の「巨大マーケット」は長くは続かない。ここに拡大型のビジネスモデルを無理やりはめ込もうとすることに無理があるのだ。それを無視して東京という幻想を追い求め続けたならば、人口減少や少子高齢化を前提としたビジネスモデルに転換するための時間を失う。それでは取り返しがつかない。
企業が人口減少に対応するには、ヨーロッパの企業の多くに見られるように高付加価値化と労働生産性の向上で勝負することである。量的拡大の発想を脱し、目指すべき目標を従業員一人当たりの利益高のアップに転換するのだ。それには、企業で働く個々人がこれまで以上にスキルを高めていく必要がある。
同時に重要なのが、人数が少なくなっていく若者にどんどんとチャンスを与え、社会全体としてイノベーションの機運を盛り上げることである。資源小国の日本が技術的優位性を失ったならば、世界を相手にすることはできない。
コロナ禍はデジタル化の遅れをはじめ「国力の衰え」を浮き彫りにしたが、いまの日本は先進国であり続けられるかどうかの分水嶺にあると言ってよい。いつまでも過去の栄光や“古ぼけた成功体験”にとらわれるならば、日本人は確実に貧しくなる。
われわれに残された時間は決して多くないが、間に合わないわけではない。改革の方向を間違えることなく行動に移す時である。
河合 雅司(かわい・まさし)
作家・ジャーナリスト
1963年、名古屋市生まれ。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授のほか、政策研究大学院大学客員研究員、産経新聞社客員論説委員、厚労省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。



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