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野村克也氏を死に追いやった冬の風呂、急な老化、妻と死別

2021-02-10 13:30:00 | 日記

下記の記事は日刊ゲンダイデジタルからの借用(コピー)です


プロ野球で万年Bクラスのヤクルトを3度日本一に導いた元監督の野村克也さん(84)が亡くなった。自宅の浴槽内でぐったりしているところを発見され、病院に搬送されたが助からなかった。死因は3年前に他界した妻の沙知代さんと同じ虚血性心不全だった。

 虚血性心不全とは心臓に酸素と栄養を送る冠動脈が狭くなって血液の供給不足が起こり(虚血)、心臓の働きが悪くなる病気だ。冠動脈が急に詰まる病気は心筋梗塞と呼ばれるが、虚血性心不全は、心筋梗塞と明確に特定できないものの、虚血により心臓の働きが悪くなる場合に付けられることが多い。

 実は野村さんのように浴室で倒れ、虚血性心不全などで急死する人は珍しくない。循環器内科が専門で平成横浜病院健診センター長の東丸貴信・東邦大学名誉教授が言う。

「冬は温かい居間から寒い脱衣所へ移動することで、血管が縮まり血圧が急上昇します。熱いお湯に漬かると、血圧がさらに上がります。お湯で温まると血管が広がり血圧が急に下がります。こうした心臓や血管への『ヒートショック』によるストレスが脳卒中や心筋梗塞のリスクを上げているのです」

2015年の統計によると日本では入浴中の死亡が年間1万9000人ほどいて、交通事故の死者数の4倍以上に当たる。そのうち9割は65歳以上の高齢者だ。

「高齢者は糖尿病や高血圧などの持病により動脈硬化が進行して血管の柔軟性を失っているからです。それに拍車をかけているのが温度センサーの衰えです。多くの中高年はそれに気づいていません。夏に暑さに気づかずに熱中症になるのと同じで、冬の寒さを感じにくいために血管や心臓に負担をかけているのです」

 中には「寒さを感じないのは健康な証し」と勘違いする人もいる。しかし、本人が気づいていないだけで、血管や心臓に低温によるストレスをかけ続けている。

 気をつけたいのは老化は実は一気に進むことだ。昨年末、世界的な学術雑誌「ネイチャーメディスン」に掲載された論文によると、血液中の老化に関係するタンパク質量の増減から「34歳」「60歳」「78歳」に老化は急激に進むことが報告されている。

 しかも高齢者は一人暮らしが多い。内閣府の調査によると、17年には65歳以上の一人暮らしは627万4000人。13年後には795万9000人になると推計されている。妻や夫に先立たれているケースでは周りが気づかないうちに体に衝撃を受けているから要注意だ。妻に先立たれた夫のダメージは想像以上で、「何でオレなんかが生き残り、あいつが先に逝くんだ……」という絶望感にさいなまれる。妻との死別後、半年以内の死亡率が独身者に比べて40%も上昇。死別後1年でうつ病を発症する率は15%アップし、1年以内の自殺率も66倍に跳ね上がるというデータもある。

■打ち勝つにはどうすれば?

 野村さんも3年前に妻の沙知代さんを亡くして以降は、見るからに元気を失っていたという。1月21日には金田正一さんの「お別れの会」に出席して「オレももう長くない」と漏らしており、寂寥感があったはずだ。

孤独は複数の身体機能に影響を与えていて、肥満よりも死亡リスクが高いといわれている。慢性的な孤独は、代表的なストレスホルモンであるコルチゾールの増加に加え、血圧の上昇と重要臓器への血流を減らす恐れがあることがわかっている。また、孤独が白血球の生成にも影響を与えることが報告されており、免疫システムが弱くなり、感染症への抵抗力が低下することもわかっている。

「冬のお風呂場」「急激な老化」「孤独感」に打ち勝つにはどうしたらいいのか。

「冬のお風呂でヒートショックを起こさないためには、居間、脱衣所、お風呂での寒暖差をなくすことが大切です。脱衣所には小型の温風式の暖房器を入れ、お風呂のお湯はシャワーでためることで、蒸気により浴室を温めましょう。沸かし湯なら、ふたを外して沸かすといいでしょう。風呂場の床にスノコやマットを敷くのも手です」

高齢者にはぬるめのお湯がよく、長風呂しないことが原則だが、50代くらいまでは熱いお風呂に入るのも手だ。一時的に熱ストレスを加えることで「ヒートショックプロテイン」というストレスから身を守るタンパク質が分泌される。

 入浴中は手すりや浴槽のふちを持ってゆっくり立ち上がる。急に立ち上がると体にかかる水圧がなくなった分、一気に血管が拡張し、脳への血流が減って貧血になり、転倒リスクが高まる。

 外出がおっくうになったら無理せず、貧乏ゆすりなどで体を動かすことだ。

 孤独解消で一番いいのは家族との同居。事情が許せばそれとなく話し合うべきだ。もちろん、友達づくりも必要で、周りにいなければ、ネットで探すのもよい。

「そんな心配は先のこと」なんて思っていても、不幸は待ってくれない。



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