皆さんと一緒に考えましょう

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

 [FT]ワクチンを2回接種しても感染するのはなぜか

2021-07-31 08:30:00 | 日記

下記の記事は日本経済新聞オンラインからの借用(コピー)です

米プロバスケットボールNBAの花形でフェニックス・サンズに所属するクリス・ポール選手、英国のサジド・ジャビド保健相、体操の米五輪代表チームのカラ・イーカー選手には、ある共通点がある。ワクチンを2回接種したにもかかわらず、新型コロナウイルス検査で陽性と診断されたことだ。英国サフォーク州ニューマーケットで新型コロナの予防接種を受ける女性=ロイター
これはウイルスが予防接種をすり抜けて感染する、「ブレークスルー感染」と呼ばれるもの。本来どのワクチンも100%の効果はないため、もとから想定されていたことだ。感染してもほとんどの場合、症状は軽い。
とはいえ、ワクチン接種が世界で週に2億回を超えるペースで進む中で感染が再び拡大しているとあって、自分は大丈夫なのか、予防接種の効果を心配する人が増えている。
ワクチン接種完了後に感染した人の数は?
具体例が伝えられたりすると、ブレークスルー感染が相当に広がっている印象を受けるかもしれない。だが専門家によれば、実際の数は少数にとどまっており、おおむね想定の範囲内とされる。 
米バンダービルト大学のウィリアム・シャフナー教授(感染症学)は「完璧なワクチンは存在しない。新型コロナも例外ではない」と話した。
例えば黄熱病の予防接種は、これまでに開発された生ワクチンのうち最も効果が高いとみられており、1回の接種を受けた人の98%が長期的な免疫を得られる。しかし、それでも平均2%の人は感染してしまう。
主要な新型コロナワクチンはおおむね、第3相臨床試験(治験)で症状の出る感染を90%以上予防する効果を示した。英国、イスラエル、カナダで実施された実際の接種後の追跡調査では、現実には治験環境よりも効果が若干低くなることが示唆されている。これは、ワクチンへの抵抗力がより高いインド型(デルタ型)が広がっているためとみられる。ワクチンの種類によって異なるが、症状のある感染を防ぐ効果は60~90%と推定されている。
英イングランド公衆衛生局(PHE)によると、7月19日までの4週間にイングランドでデルタ型に感染した10万5598人のうち、約17%がワクチン接種完了者だった。PHEは、2回目のワクチン接種から2週間以上経過した人をワクチン接種完了者と見なしている。
英王立統計学会のメンバーであるアンソニー・マスターズ氏は、ワクチン接種の範囲が広がれば、感染者全体に占める接種完了者の割合が高まるとみている。特に、大勢の人が交流する場所に出向く機会が多い若者は感染リスクが高いという。
マスターズ氏は「あらゆる年齢層で接種率が相当に高くなれば、接種完了者の感染が過半数を占める可能性がある」と語った。英国では7月21日までに全人口の約55%が2回目のワクチン接種を終えた。
イスラエルでは、全人口の60%近くがワクチン接種を完了しており、年齢層による接種率の差も少ない。同国では、7月21日までの1週間に陽性と診断された約6000人のうち、52%が接種完了者だった。
ワクチン接種しても発症しやすい人は?
ワクチン接種完了後に陽性と判断された人が重症化した例はほとんどない。PHEの追跡調査でも、入院を予防する効果は独ビオンテックと米ファイザーが共同開発したワクチンで96%、英オックスフォード大とアストラゼネカが共同開発したワクチンで92%に上った。
ただ、米エモリー大学(アトランタ)のナタリー・ディーン教授(生物統計学)は、これらの数字は平均にすぎず、効果は一人一人が抱えるリスクによって異なると指摘する。「ワクチンとリスクに関しては、全てが相対的なものだ」
フィナンシャル・タイムズ(FT)が世界の新型コロナ感染者の死亡率を調査したところ、ワクチンを2回接種した80代の死亡率は、未接種の50代と同等だった。
イングランドでは、年齢の高い順に段階を追ってワクチン接種対象が広げられ、50歳以上の9割が既にワクチン接種を完了した。7月19日までの4週間に1788人がデルタ型への感染で入院したが、そのうち30%がワクチン接種完了者だった。デルタ型への感染に関連して2月以降に死亡した460人のうち、約半数はワクチン接種を完了していた。
マスターズ氏はこうした状況について「高齢者のワクチン接種率が非常に高いことの表れにすぎない」とみている。「逆に言えば、ワクチン普及が成功していることを示している。全人口がワクチン接種を完了すれば、入院する人も亡くなる人も全員がワクチン接種者になる」
英国では、自動車事故による死者の3分の2程度がシートベルトを着用していたとされるが、これは99%近い人がシートベルトを着用しているためだとマスターズ氏はいう。ワクチン接種率の高い国における重症者や死者の数にも同じ原理が働くという。
バンダービルト大のシャフナー氏は、不快程度の軽症で済んだ人も、もしワクチンを接種していなければ重症化したり、命を落としたりしていた可能性があると付け加えた。「ワクチンを受けたのに軽い症状が出たと愚痴を言う患者には、『ここに来て文句を言えて良かった』と話している」
自分がどれだけ守られているか検査できるか?
自分の身体がウイルスからどの程度防御できているかを受検することはまだできない。ワクチンで体内にできた免疫を計測する最も簡単な方法は、中和抗体の有無を調べる血液検査だ。ところが実際には、体の免疫の働きを助けるT細胞やB細胞も関係するため、どの指標がワクチンの効果を知るのに最適かは、科学者の間でもはっきりしていない。
商用化されている抗体検査は、その人に新型コロナウイルスの抗体があるかどうかだけを示す。しかし英インペリアル・カレッジ・ロンドンのダニー・アルトマン教授(免疫学)は、免疫を「尺度ないし連続体」として捉えるべきだと説明する。「安全か危険か、守られているか、いないかといった二元論ではない。ワクチンによる予防効果の程度は人それぞれだ」
この人によって異なる免疫レベルは、血液がウイルス中和能力を保てる希釈倍数の限界を調べる中和試験と呼ばれる検査によって可視化される。
アルトマン氏によると、極端な場合、免疫不全の患者であれば100倍の希釈にしか耐えられない可能性があるが、健康な若者は1万倍の希釈にも耐えて感染しない可能性もあるという。
科学者がこれらの両極端の中間点を探り当てられれば、「ワクチンメーカーがより迅速に新たな変異種へ対応したり、政策担当者が追加接種を必要とする人をより効果的に特定したりできるようになる」と、アルトマン氏は語った。
ワクチンが不完全なら集団免疫はどうなる?
英バース大学で数理生物学を教えるキット・イエーツ氏は、ワクチンによる感染予防が完璧でないため、接種率が90%を超えない限りは集団免疫の達成は「不可能」だとみる。
「効果の低いワクチンでは、特にデルタ型に直面すると、集団免疫の実現は難しくなる」
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の免疫学者、アダム・クチャルスキー准教授は、英国で8月下旬までに1日あたりの新規感染者が10万人を超えると予想しており、ワクチンの不完全さの意味合いが「近々明らかになる」と語った。
PHEは、英国で使用されている新型コロナワクチンが入院を防ぐ確率は平均91~97%と推定している。
クチャルスキー氏は、効果のわずかな差で、英国の医療制度にかかる負担が大きく変わると警告した。「数字を逆に見れば、ワクチンの不完全さが明らかになる。効かない確率が3%ではなく9%となれば、入院患者は3倍に増える」
By Oliver Barnes and John Burn-Murdoch
(2021年7月24日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/



コメントを投稿