下記の記事は日刊ゲンダイヘルスケアオンラインからの借用(コピー)です。
糖尿病の合併症のひとつに、腎臓病(糖尿病性腎症)があります。体の余分な水分や老廃物を尿として体の外に排泄する機能が弱まり、進行すると人工透析となります。全透析患者のうち4割超が糖尿病性腎症が原因といわれており、また人工透析患者の余命は一般人の約半分程度という報告もあります(日本透析医学会、2005年発表)。
今は良い薬も出ているので、糖尿病性腎症であっても、早い段階で発見し治療を開始すれば、人工透析にならずに済みます。ところが実際は、進行してから見つかるケースが多いのです。
その一因は、血糖コントロールには力を入れているが、腎臓のチェックが後回しになりがちなことが挙げられます。糖尿病患者が多すぎる一方で、糖尿病専門医の数は十分ではありません。時に糖尿病専門医であっても、腎臓病の治療は専門外のため、そう詳しくない、あるいは忙しく検査が十分でない結果になってしまっていることもあります。
腎機能が正常かどうかを調べる検査が、どこでも行われているわけではないのも問題です。
腎機能を知る指標として「血清クレアチニン値」がありますが、これは一般的な健康診断でも測定されているものの、早期の腎臓病は発見しづらい。もし、血清クレアチニン値に異常が出たら、すでに人工透析を待つしかない状態であるケースもありますので要注意です。
では、早期の腎臓病をチェックするには、何を見るべきか? それは、クレアチニンと年齢・性別から計算できる「推算糸球体濾過量(eGFR)」という数字です。腎臓の機能低下を早期から評価する指標です。
eGFRは年齢によって少しずつ下がりますが、一般的に数字が高い方が良いです。チェックして、腎機能が低下していないか、ご自身でもぜひ確認してください。
もうひとつの腎機能の評価方法として必須なのが、「尿アルブミン値」のチェックです。ところが、尿アルブミン値の検査を行っているのは、糖尿病の外来患者全体の19・4%というデータもあります(国立国際医療研究センター、東京大学大学院医学系研究科「全国レセプトデータにおける糖尿病診療の質指標を測定」)。糖尿病で、尿アルブミンの検査を受けていないという人は、主治医に相談すべきです。
もし、健康診断で尿タンパク検査は受けているという人は、その結果を見てください。尿タンパクが「+」であれば、腎臓に問題が起きている可能性があるので、すぐに腎臓内科を受診しなければなりません。「±」であれば、尿アルブミン検査を。この段階なら、早期の腎臓病を発見できる可能性があります。
さらに、これ以外の方法としてやっていただきたいのは、血圧の管理です。腎臓の機能低下は患者さんによってさまざまではありますが、高齢化を迎えている現在では腎臓の老化、つまり機能低下はできるだけ避けたいところです。特に注意して血圧を管理していただきたいのが、前述のeGFRが年齢に比して低下している人です。高血圧は腎臓病の発症に大きく関与しているので、血圧が高い人は、降圧薬の服用、そして塩分少なめの食事で、血圧を下げていかなくてはなりません。
血糖コントロールも大事ですが、糖尿病の人は血圧管理もしっかりやらなくてはならない。人工透析となると、余命が短くなるだけでなく、生活の質が著しく下がります。人工透析はだいたい1回5時間程度、週3回医療機関に通わなければならない。つまり、自由に使える時間が大幅に減るのです。「定年後は夫婦でゆっくり旅行でも」なんて思っていても、それが難しくなります。
坂本昌也
国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長
専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。
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