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ストレスで低下する免疫力 入浴や乳酸菌でセルフケア

2021-05-31 08:30:00 | 日記

下記の記事は日経ヘルスアップからの借用(コピー)です

心理的ストレスの蓄積はビジネスパーソンの大敵。コロナ禍によって「何らかの不安を感じる」人が半数以上に及んだ、という調査報告もある。こうしたストレスは、メンタル面だけでなく、新型コロナウイルスなどの病原体の侵入や増殖を防ぐ免疫機能にも悪影響を及ぼすようだ。心理的ストレスと免疫の関係について考察。私たちが実践できそうなストレス対策と免疫ケアとともにお伝えする。

心理的ストレスは「粘膜免疫」を弱くする
コロナ禍による“ニューノーマルな生活”が続く中で、心理的ストレスが限界近くまで蓄積しているという人はいないだろうか。厚生労働省が2020年12月に発表した「新型コロナに係るメンタルヘルスに関する調査」によると、「神経過敏に感じた」、「そわそわ、落ち着かなく感じた」「気分が落ち込んで何が起こっても気が晴れないように感じた」といった「何らかの不安を感じている」人が調査対象の半数以上に及んだという。
心のストレスは、いま守りを固めたい感染症への防御にも負の影響を及ぼすようだ。疲労や緊張といったストレスと常に直面するアスリートの免疫について研究を行うハイパフォーマンススポーツセンタースポーツ研究部研究員の清水和弘さんは、「激しいトレーニングという身体的ストレスだけでなく、心理的ストレスもウイルスや細菌などと戦う免疫機能を低下させる。特に、外敵への第1バリアとなる粘膜免疫が悪影響を受ける」と言う。
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ここで、免疫システムについて簡単におさらいしよう。
免疫とは、「疫(病気)を免れる」という意味。体には、侵入しようとするウイルスや細菌などの病原体から身を守るために、2段階の仕組みが備わっている(図)。
第1段階は、病原体の最初の侵入口となる鼻や口、喉などの粘膜において病原体の侵入を防ぐ「粘膜免疫」。抗菌ペプチドという免疫物質も分泌されるが、病原体の捕獲力で注目されるのが分泌型免疫グロブリンA(以下SIgA)という抗体だ。粘膜から侵入を図る病原体にくっつき、無力化(中和という)するように働く。アメリカズカップに出場したヨットレース選手の唾液中SIgAの濃度を調べたところ、ストレスや疲労の蓄積とともに低下し始め、上気道感染症発症時は最も低かった[1]。つまり、この抗体数が減ることは、粘膜免疫の守りが手薄になっていることを示す。
「粘膜免疫」を突破して体内に病原体が侵入すると、第2段階の「全身免疫」が働く。体内に入り込んだ病原体を好中球やマクロファージといった免疫細胞がとらえ、感染した細胞はNK細胞やT細胞などが攻撃。こうした一連の戦闘で発熱などの炎症症状が起こる。
「選手が本番で十分なパフォーマンスを発揮するには、まずは第1段階で病原体の侵入を許さない、つまり、病原体の侵入口である粘膜免疫が低下しないよう維持することが重要と考えている」(清水さん)。
私たちの免疫システムは、粘膜組織で病原体をブロックする「粘膜免疫」と、そこをかいくぐった病原体を攻撃、排除する「全身免疫」の2段構えになっている。食事や呼吸で入り込んできて粘膜細胞で感染を開始する病原体に対して、「粘膜免疫」では、病原体にくっついて無力化させる分泌型免疫グロブリンA (SIgA)、殺菌機能を持つディフェンシンなどの抗菌ペプチドが立ち向かう。「全身免疫」が働くときにはマクロファージ、好中球、NK細胞、T細胞、B細胞といった免疫細胞が病原体や感染した細胞を攻撃し、次の感染にも備える。上気道感染症の場合、この戦いで発熱などの炎症症状が起こる。(図:清水さん監修、ハイパフォーマンススポーツセンター『感染症を防ぐ免疫コンディショニングガイド』をもとに改変)
粘膜免疫の働きが心理的ストレスによって低下することを見た研究報告には下記のようなものがある。
歯学部学生の精神的ストレスと唾液中SIgAの分泌速度の関係をみた研究では、ストレス強度が高くなるにしたがってSIgAが低値となった(グラフ)。看護師41人の仕事ストレスと免疫物質の関係を9カ月にわたって調べた研究では、意思決定や作業管理などの精神的ストレスが高まる仕事のときに、唾液中のSIgA量が低下していた[2]。また、大学生男女55人を対象に性格とSIgAについて調べたところ、男子において、「自分に厳しく他人にも厳しい」性格の人では唾液中のSIgA量が多く、「不平や不満をしまいこむ」性格、つまりストレスをため込みがちな人では少なかった[3]。
歯学部初年度生64人(平均年齢23.4才)の精神的ストレスと唾液中のSIgA分泌速度を関係を見た。9月の学期始めとストレスから解放された7月ではSIgAは高くなったが、高ストレスの試験期間はSIgAが低くなった。(データ:Lancet. 1983 Jun 25;1(8339):1400-2.)
心のストレスがなぜ免疫に影響を与えるのだろう。清水さんは「自律神経の変調が関わる」と説明する。
自律神経には、緊張モードのときに働く交感神経と、リラックスモードのときに働く副交感神経があり、両者は互いにバランスをとりながら体の機能を調節している。しかし、「過剰な心理的ストレスは交感神経を優位にする。交感神経が優位になるとT細胞など免疫細胞の働きが低下することが確認されている。また、アスリートのハードなトレーニングが免疫を低下させるのは、酸素を多く取り込む持久系運動によって生じる活性酸素が、免疫細胞のDNAを損傷するため。ビジネスパーソンも同様に、知らず知らずのうちに疲労をためたり、強い心理的ストレスを受けると、活性酸素による酸化ストレスが高まる」(清水さん)。
緊張やイライラで交感神経が過緊張になっても疲労が増えても免疫低下につながるのだ。
仕事への不満や徒労感で感染症リスクがアップ!?
ビジネスパーソンのストレス要因の最たるものは、仕事に関わるストレスだろう。「リモートワーク環境への対応など、コロナ禍による環境変化の長期化により、仕事に関わるストレスはさらに高まっているのでは」と案じるのは、労働環境におけるストレスと免疫に関する研究を行う国際医療福祉大学大学院教授の中田光紀さんだ。
中田さんは、職場のストレスのなかでもどのような状態が免疫に負の影響をもたらすのかに注目。「7つの研究を系統的に解析したところ、職場の心理ストレスの中でも、仕事に費やす努力への見返り(経済的、心理的、キャリア面など)が低い、と感じる人ではSIgAとNK細胞活性が低下する一方、感染症の感染時に高くなる炎症マーカー(CRPやIL-6)の増加が認められた[4]。適度なストレスはモチベーションとなり、免疫が増強されることもあるが、こうした徒労感が長期化すると免疫機能は低下する」(中田さん)
「職務満足感」という指標を用いて免疫との関係を調べた中田さんの研究では、職務満足感が低いほどNK細胞の活性が低くなった(グラフ)。別の研究では、職務満足感が高い人は過去1年の風邪罹患(りかん)回数が平均2回だったが、低い人は4.3回と2倍以上の開きがあった[5]。
「反対に、仕事へのやりがいが保たれると感染への防御力が維持される可能性がある。実際に、失業することによってNK細胞活性が下がっても、就職が決まった翌月に前月よりも44~72%の増加が認められたという研究も[6]。ストレスから解放されるとNK細胞活性は1カ月程度で回復すると考えられる」(中田さん)。
健康なホワイトカラー306人(男性165人、女性141人。平均年齢36歳)を対象に、仕事の満足度に関する4項目の質問に答えてもらい、血液検査によって免疫の状態を調べた。男女ともに仕事への満足感が下がるほどNK細胞活性が低くなった。 (データ:Brain Behav Immun. 2010 Nov;24(8):1268-75.)
仕事のストレスをためるのは良くないとわかっていても、取り除くのが難しいのも現実。中田さんは、職場の人間関係のなかで解決の鍵となるのはどんな立場の人かを見るために、働く人に対する「社会的支援」と血中の炎症マーカー(IL-6、TNF-αなど)の関係を調べた。その結果、「男性においては“上司の社会的支援”が上昇したときに、炎症マーカーが有意に減少した」という[7]。
上司に恵まれない場合はどうすればいいか。「誰かを援助する、という能動的行動を行った人は5カ月後に炎症スコアが有意に下がった(論文投稿中)。ボランティア活動など誰かを手助けすることが自身のポジティブな状態を作り出し、免疫低下にブレーキをかけるのだろう」(中田さん)。職場とは別の場で、気持ちをポジティブにする行動をするのがよさそうだ。
免疫低下を防ぐために、自分でできる対策は?
こうした心理的なアプローチのほかに、ストレスによって低下する免疫を維持、あるいは高めることができるセルフケアとしては、リラクゼーション法やある種の食品成分の摂取がありそうだ。
1.リラクゼーション
うつの症状の一つに不眠があることからわかるように、心理的ストレスが高くなると、夜の眠りに問題が起こる。睡眠障害そのものも、免疫低下を引き起こす。「就寝の90分前に入浴すると眠りの質が高まる。風呂によるリラクゼーション作用で副交感神経が優位になり、水圧による血液循環の促進で筋肉の疲労も和らぐ」(清水さん)
健康な男性10人(平均年齢33.6歳)が温泉浴(入浴温度40~41度、10分間の入浴)の前後で唾液SIgAを測ったところ、入浴前と比較して入浴後にSIgA分泌速度が有意に増加した[8]。「免疫にもプラスに働くので、アスリートには、夏場でも毎日バスタブ入浴を薦めている」(清水さん)。入浴以外にも、香り(アロマケア)やマッサージなど自分に合う方法を探してほしい、という。
2.食品成分
免疫維持、ストレス改善、それぞれのキーワードで取り上げられることが多い食品成分に乳酸菌類がある。
心理的ストレスによって低下する粘膜免疫を守るという視点で探すと、例えばSIgAの分泌を高める機能を持つ乳酸菌「b240」に着目し、高齢者の風邪発症抑制について調べた研究がある。65歳以上の高齢者300人が摂取し、風邪発生率が大幅に抑えられたという[9]。
心理的ストレスの改善と免疫指標の変化を見た「ラクトバチルスプランタラムPS128」という乳酸菌もある。IT企業で働く人36人が毎日摂取したところ、ストレススコアが下がり、ストレスホルモンの値も有意に改善した。しかし、この試験では唾液中SIgAには有意な変化がなかったため、免疫への影響を検証するには追加の試験が必要となる[10]。
コロナ禍のソーシャルディスタンスによる孤独感が心理的ストレスとなり、腸内細菌叢に悪影響が及び炎症を引き起こすことを危惧する報告も発表された[11]。有用菌を日常的にとることによって腸内細菌叢(そう)の健康を維持することが、ストレス耐性を高め免疫低下を防ぐことにつながる可能性もある。
「乳酸菌は、心理的ストレスが高まる時期の1カ月ほど前から継続的してとると、免疫機能を高く保った状態で目的の時期に臨める」(清水さん)
このほか、免疫維持に役立つという研究報告が世界で多く発表されている食品成分の代表としてビタミンDが挙げられる。抗菌機能を持つ抗菌ペプチド、ディフェンシンの産生には、血液中に十分な量のビタミンDがあることが必要とする研究もある[12]。ディフェンシンは、SIgAとともに粘膜免疫で重要な働きをする免疫物質なので、ビタミンDは不足のないよう補いたい。
一方、「ストレスの軽減に役立つ」と記された機能性表示食品も200種類以上出ており、機能性成分としてはGABA、L-テアニンを使用するものが多い。しかし、それぞれの届け出情報では、ストレスを軽減することで免疫低下が防げるかどうかはわからない。
また、ストレス負荷を和らげることと、病原体を攻撃するプロセスで起きる過剰な炎症(サイトカインストーム)を防ぐ働きで注目される栄養素には、オメガ3脂肪酸(DHA=ドコサヘキサエン酸、EPA=エイコサペンタエン酸)がある。オメガ3脂肪酸を新型コロナ感染症の流行中は十分に補給すべき栄養素として推奨する研究も多い[13]。
138人の座りがちな生活をしている肥満の男女を対象に、オメガ3脂肪酸を高容量(1日2.5g)、4カ月とった研究では、オメガ3脂肪酸摂取群で、ストレス時に増えるコルチゾール値と炎症マーカーであるIL-6が偽薬をのんだ群と比較してそれぞれ19%、33%低下した[14]。つまり、オメガ3脂肪酸をとると、ストレスからの修復メカニズムを高め、過剰な炎症が低減される可能性がある。
ヨーグルトや乳酸菌飲料、ビタミンDとオメガ3脂肪酸それぞれを豊富に含むサケなどの魚類は、ストレス・免疫対策として積極的にとりたい。難しい場合は、こうした成分が強化された食品やサプリメントの活用を。
過大なストレスを抱え込む前に、気分転換、リラックス、休養に努め、体内から役立つ可能性がある食品を積極的にとり入れて、ストレスケアと免疫アップを目指したい。



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