幸福実現党
江夏正敏の闘魂メルマガ vol.213
2024年8月20日発行
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江夏正敏 幸福実現党 幹事長のオフィシャルブログ
http://enatsu-masatoshi.com/
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1、江夏正敏の「闘魂一喝!」
「ブッシュ(息子)時代の経済政策―良い減税と悪い減税」
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前々回のメルマガでは、レーガン政権の減税政策を見てきました。
前回は、父ブッシュ政権からクリントン政権にかけての経済政策を俯瞰してみました。
共和党、民主党の駆け引きの中で、紆余曲折を経ながら減税政策を基調としてきたアメリカ経済でした。
そして、今回は、リーマンショックまでの息子ブッシュ時代の経済政策を見ていきたいと思います。
表題にもありますが、良い減税と悪い減税の両方を実行した大統領でした。
今回のメルマガで、読者の皆様が良い教訓を得ることができれば幸いです。
●ブッシュ(息子)大統領就任の時代環境。
クリントン大統領の後、ブッシュ(息子)が大統領になります。任期は2001年1月~2009年1月の2期8年です。
大統領就任前の2000年半ばに、ハイテクバブルが崩壊。そして、2001年9月11日は同時多発テロが起きました。
クリントン時代の繁栄もハイテクバブル崩壊で終焉を迎え、
同時多発テロで国防予算を減らせる時代は終わりました。
ブッシュ(息子)大統領は、難しい時期に大統領に就任したのです。
●ブッシュ(息子)大統領による最初のデマンドサイド減税の失敗。
ブッシュ(息子)大統領は2001年に最初の減税を行っています。
ところが、この減税政策は、経済成長や生産性の向上にはつながらずに終わりました。
減税にも効果的ものと、そうでないものがあるということです。
効果的でない減税は、あえて言うならばバラマキ型減税でしょうか。
2001年の減税は税還付でした。低~中所得層を対象にしたもので、
納税者に400~600ドルの税還付を行ったのです。
この減税(税還付)は生産者から非生産者への所得再配分にほかならず、景気刺激効果が望めません。
というのも最高税率は減税実施初年度に1%下がるだけでした。さらに相続税は段階的に
引き下げられるものの、ゼロになるのは9年後の2010年。
しかもあらゆる減税措置は2011年に自動的に打ち切られることになっていました。
要するに2001年の減税は、経済成長への寄与は、極めて低いものでした。
案の定、税還付つまり戻し税の約半分は貯蓄され、
ケイジアンの期待もむなしく消費に回らなかったのです。
つまり、消費需要サイドの景気刺激策(デマンドサイド減税)は、
アメリカ全土にお金をばらまくという、あの有名なヘリコプター・マネー策に等しいものでした。
●ケインズ型の消費需要が主流だった。
当時のアメリカでは、ケインズ型の消費需要が必要だと言う議論が主流でした。
つまり、たっぷりと資金供給を行うべきだと。
通貨供給量を増やせば、国民はお金を使うはずだと考えていたのです。
民主党のリベラル派はもとより、共和党もそのような考えを持っている人が多かったのです。
●就任2年後の新たな減税政策。
ブッシュ(息子)大統領の最初の2年は低空飛行を続けることになり、民主党からは
父ブッシュと同じように1期で終わると見ていたほどでした。
そこで、2003年1月、就任2年後に、ブッシュ(息子)陣営は経済政策の見直し行いました。
その経済政策は、包括的なサプライサイド減税です。
焦点は、株式市場の回復と設備投資の復活です。投資収益率が改善されれば、
企業は再び設備投資に向かいます。そうなれば、株価は押し上げられ、
雇用の機会も創出されるというものでした。
つまり、企業家が設備投資をやりやすい環境を減税によって作ったということです。
当時のアメリカ経済の問題は、投資不況だったのです。
これは従来のケインズ型景気刺激策では解決できません。
投資の誘発が必要なのであって、消費ではなかったのです。
●サプライサイド減税。
2003年5月に可決成立した投資減税はサプライサイドの強力なインセンティブとなる減税でした。
経済に燃料を補給する減税です。具体的内容は次のようなものでした。
(1)配当税率を39.6%から15%へ。
(2)キャピタルゲイン税率を20%から15%へ。
(3)個人所得税の最高税率を39.6%から35%へ。
(4)工場・設備投資などへの設備投資課税の引き下げ。
2003年の減税は、投資収益への税率引き下げを通じ、企業の投資意欲を高めること、
起業家に新規事業の設立を奨励することを狙いとしていました。
しかし、左派は「大富豪のための減税であって、労働者のための減税ではない」と反対してきました。
●株価が上昇し、設備投資も驚異的に上向き、雇用も創出。
まずこの減税に反応したのが株式市場でした。減税後2年間で約20%も株価が上昇しました。
配当税とキャピタルゲイン税の税率引き下げは、株式市場にプラスに作用しました。
しかも、設備投資も上向きました。2001年4.8%減、2002年6.1%減と設備投資は減って
いましたが、2004年には7.4%増、2005年には驚異的な9.5%増を記録しました。
このような結果になったのは、企業のオーナーたちは、この2003年のサプライサイド減税に
よって、以前より少ないコストで事業の拡大、設備投資のための資金調達、
従業員の増員ができるようになったからです。
2003年~2007年末までには、800万人の雇用機会が創出されたのです。
●減税をして税収増。
このサプライサイド減税のおかげで、経済は様々な面で立ち直り、企業収益が急増しました。
そして、法人税収は大幅増となりました。
また、2005年の労働生産性は実質5%も改善しています。
とんでもない成果が出たと言えます。2004年~2007年の税収は7859億ドルも
増えており、4年間の増加としては史上最高です。
個人所得税と法人税の納税額が減税後の3年間で40%増と飛躍的に伸びました。
正しい減税は、経済成長、雇用の創出、企業収益の拡大、そして税収の増加と
いう連鎖反応を起こしたのです。
●富裕層から税収増。
また、注目すべきは、富裕層からの税収が増えたことです。
サプライサイド減税の前後を見ると、富裕層の比重が高まりました。
その一因は、税率の引き下げによって税金逃れに走る人が減り、
課税所得の申告額が増えたことにあります。
●特筆すべきキャピタルゲイン税と配当税の税収増。
さらに、最大の税収増を記録したのは、キャピタルゲイン税と配当税でした。
税率が最も大幅に引き下げられたのがこの2項目でした。
キャピタルゲイン税の納税額は70%増、配当税の納税額は31%増でした。
アメリカ経済史上、最もみごとにラッファーカーブを実証したという評価を得ています。
●配当減税の狙い。
配当減税の趣旨は、配当を払う企業に報いようということでした。
それまでは、ほとんどの企業が配当を払うまいとしていました。
なぜなら、配当には40%もの税金がかかっていたからです。
その一方で、キャピタルゲイン税は20%しかかかりませんでした。
こうなると企業は株主に配当を払うより、利益を内部留保しておき、
それを株価上昇に反映させることの方が好ましくなります。
この税制は配当支払いに懲罰を与えるようなものでした。企業は利益に対して
35%の法人税を払い、その利益から払い出される配当に対してさらに40%の配当税を取られるのですから。
ここで配当税をキャピタルゲイン税と同じ15%に引下げれば、配当を払うことが損になる
ということはなくなり、株主に利益を還元することが進むと予想されました。
実際に、減税後2年間で配当支払い額は800億ドル近く増え、
その結果、連邦政府の税収は年間120億~150億ドルも増えたのです。
●減税して税収増だが、大散財した共和党。
ところが、ブッシュ(息子)時代は、減税政策はよかったのですが、予算の使い方がひどかったのです。
減税後に税収は増えているのもかかわらず、税収が増える以上に政府が支出を増やしてしまいました。
しかも共和党の大統領と共和党主導の議会のときにです。
潤沢な黒字で気が大きくなって大散財をしたとしか言いようがない状態でした。
同時多発テロが起きた後、イラク戦争に突入していきますが、
それ以上に、新たなプログラムに手を出していったのです。
クリントン時代初期に、民主党は1500もの小口のプロジェクトに予算をつけていました。
当時、共和党から大反対を受けていたのですが。
今度は共和党が10倍の15000もの小口プロジェクトを進めてしまったのです。
ある上院議員は「こうした小口予算は、麻薬に手を出すようなものだ。やがて止められなくなり、
巨額の支出につながる」と指摘していました。
この結果、2006年の選挙で、上下院とも民主党が多数を奪い返し、共和党は惨敗してしまいます。
●減税で富を創出し、税収増を実現。
ブッシュ(息子)の減税政策は、高い税金のハードルを引き下げたことで、富を創出し繁栄しました。
そして、富裕層だけでなく、何千万の低~中間所得層も潤いました。
そして、ブッシュ減税で最も注目すべきことは、納税額に占める富裕層の割合が、
過去40年で最も増えたことです。つまり、ブッシュ減税によって、富裕層により多く
税金を支払わせることに成功したのです。
減税によって、富裕層からの税収は増え、低所得層は豊かになったのです。リベラルの人たちは、
この事実から顔を背けたがります。
最後に、どちらの政策を取るのですかと問いたい。
「減税して、富裕層を含めてトータルの税収を増やしたいのか」。
「増税して民を疲弊させ、金持ちは節税に走って納税を回避し、トータルの税収を減らしたいのか。
つまり金持ちを懲らしめようとして、税収も減らしたいのか」。
答えは自ずと出てくるでしょう。
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2、編集後記
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今回の事例から、良い減税、悪い減税があることがわかります。
悪い減税はバラマキです。
良い減税は富の創出につながります。
この世に素晴らしいモノやサービスを創り出すことが経済の基本です。
宗教的に言えば、愛の実践行為になります。
ここを真正面から向き合わない経済理論は砂上の楼閣と感じます。
経済は最終的に宗教的理念と一致してくることが予想されます。
これを理念経済学と言います。
おそらく、未来の経済学者の中にこの辺の理論を構築する天才が出てくるでしょう。
私としては、早く出て来てほしいのですが。
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◆ 江夏正敏(えなつまさとし)プロフィール
1967年10月20日生まれ。
福岡県出身。東筑高校、大阪大学工学部を経て、宗教法人幸福の科学に奉職。
広報局長、人事局長、未来ユートピア政治研究会代表、政務本部参謀総長、
HS政経塾・塾長等を歴任。
現在、幸福実現党・幹事長。
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