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NHKスペシャルで「ジャニーズ性加害問題」を語ったら…テレ東OBにかかった「一本の電話」が示すテレビ局の体質

2024年11月18日 | J
なぜジャニー喜多川氏による性加害問題は長年放置されてきたのか。元テレビ東京社員で、桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「事務所との対立を恐れ、タレントを起用し続けたテレビ局の罪は大きい。いまも『他人事』のようで、責任意識が低い。その事実が、NHKスペシャル『ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像』に出演して改めてわかった」という――。

■Nスぺ放送翌日にかかってきた「横槍電話」

 私は、NHKスペシャル「ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像」(初回放送日10月20日)への出演を経て、前回のプレジデントオンラインで番組の検証、考察をおこなった。そのなかで、「メディア側が変わらないと、また同じような問題が起こる」と指摘した。

 そして、テレビが同じような「モンスター」を創ってしまう可能性を挙げながら、テレビを含むメディア人、一人ひとりの「質」を上げることが急務であると提言した。そんなタイミングの放送翌日に、「横槍」のような電話が思いもしないところから入った。

 それは、私の前職のテレビ東京(以下、「テレ東」と省略)からだった。

 そしてその内容は、私の主張すべてをひっくり返すような驚くべきものだった。正直言って、許せない“ファシズム的な”行為だと感じている。この場を借りて事の次第をつまびらかにし、厳重な抗議をおこなうとともに、この「横槍電話」とジャニーズ性加害問題の関わりについて述べてゆきたい。

 電話をかけてきたのは、テレ東の広報担当の幹部だ。仮にA氏としておく。私の後輩にあたるA氏は「ご無沙汰しております」という言葉を皮切りに以下のような話を始めた。

 一度会いに行きたい。相談事がある。私は「何かある」と察知した。そして、時間がないことを告げて、言いたいことがあればこの電話で話してほしいと告げた。するとA氏は耳を疑うようなことを言い出した。

■「元テレ東という肩書を使わないでほしい」

 要約すると、以下の4点がその内容である。

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1.昨日の放送で多くの視聴者から交換台に電話がかかってきて困っている
2.制作局(著者注:番組を作る部署)のなかでも動揺が走っている
3.だから、今後「元テレ東」という肩書を使わないでほしい
4.加えて、テレ東時代に経験したことは話したり書いたりしないでほしい
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 私は話を聞いている途中で、ふと思った。

 「待てよ、これって基本的人権の侵害じゃないのか?」

 しかも、テレ東はHPで堂々と人権デューデリジェンス(人権DD)の遵守を謳っている。せっかく定期的におこなっている「人権セミナー」もまったく用を成していないことを露見させてしまった。

 1.と2.は状況説明である。だが、3.や4.は完全なる要望だ。そしてその理由として、A氏ははっきりと「テレ東の発言だと思われると迷惑だ」と述べた。「元テレ東」という番組内の私の肩書を見て、誰が「現在のテレ東の総意」だと思うのか。普通は、「辞めたOBがしゃべっていること」ととらえるのではないか。

 しかも、「元テレビ局社員」や「元テレ東」という番組内の肩書の編集権はNHKにあり、私が口出しできるようなことではない。そんなことも理解していないで広報をやっているのか。そうあきれたが、「文句があるならNHKさんに言ったほうがよい」とアドバイスをした。「広報」という役職や「幹部」という地位にいる人の言葉とは思えなかった。

■背中を押してくれなかった

 私は自著『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える“テレ東流”逆転発想の秘密』(方丈社刊)や『混沌時代の新・テレビ論』(ポプラ新書)で、テレ東の応援をしてきた。ときには厳しくも、愛するがゆえのエールや応援歌を送ってきたつもりである。テレ東は私を育ててくれた「親」のような存在だと感じているからである。そこには感謝しかなかった。

 しかし、今回のおこないは、私の「テレ東愛」をすべてぶち壊すようなものだ。「親の心子知らず」ならぬ「子の心親知らず」である。親に見放され捨てられた子どものような気持になった。大好きなテレ東に裏切られたような思いすらしてきた。

 なぜ、古巣・テレ東は背中を押してくれなかったのか、なぜ「頑張れ、田淵。応援しているよ」と言ってくれる度量がなかったのか。怒りを通り越して、悲しい気持ちになった。

 私は、今回の4つの要望には、以下の2つの問題が潜んでいると考えている。

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1.憲法が定める「基本的人権の尊重」を主導するべきメディアが、自らそれを侵害している可能性がある
2.退職者の言論活動妨害をおこない、権利を侵害しようとしている恐れがある
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 まず1.の「基本的人権の尊重」を侵害しているのではないかということだが、番組のなかで私はテレ東の名誉や利益を損なうようなことは何も述べていない。そんな人間の発言や情報発信に制限をかけたり、注文をつけたりすることは、メディアが個人に「検閲」をおこなっていることに他ならない。

■こんな人権感覚だから…

 2.「退職者の言論活動妨害、権利の侵害」だが、例えば会社を移籍するような人は、前職の経験を踏まえてキャリアアップをしてゆく。私の場合は、テレ東で身につけたスキルや経験を駆使して大学で映像教育をおこない、同時に映像メディアの研究をして情報発信をしている。

 それはいわゆる「生業」である。「昔のことを話したり書いたりするな」と要求したり、「授業でスキルや経験を伝えるな」と強制したりすることは、生活基盤を脅かす行為も同然だ。極めて“ファシズム的”であると言わざるを得ない。

 そして今回、最も深刻な問題だと感じたのが、「テレ東の発言だと思われると迷惑」という発想だ。この言葉は、今回私が番組内で発言した「テレビを中心としたメディア全体が考えるべきだ」という問題提起にテレ東は賛同できないということを示している。

 「迷惑」の言葉の裏側には「自分はそうは思わない」という考え方が隠されているからだ。「他人事」のようなその考え方は、隠蔽に加担したメディアの一員としてあまりにも責任意識が低すぎないか。しかし、逆に言えば、このようなことをやるような「人権感覚」だからこそ、ジャニーズ性加害問題を隠蔽し、長年放置しても平気だったのかもしれない。

■記者の質問にテレ東は…

 この横槍電話にはサイドストーリーがある。私がブログに書いたこの件を読んで、ある新聞社の記者から「ぜひ記事にしたいので、一度会って話がしたい」と申し出があった。会って話をして、その記者は「これなら上司は『やっていい』と言うと思います」と帰って行った。

 しかし、取材は実現しなかった。その後「上司と相談したが、田淵さんの精神的負担を考慮し、インタビューはなしにします」という一方的な打ち切りの連絡が、メールで入ったのだ。「精神的負担? 何だ、それ」。怖気づいたのか、それともどんな忖度が働いたのか。そう思いながら、この問題に切り込むことのハードルの高さを改めて感じた。

 10月31日におこなわれたテレ東の定例社長会見で、A氏からの電話について新聞社の記者から質問がされたと聞いていた。そのため、テレ東の公式発表を待っていた。だが、HPの議事録にはこの電話に関する質疑応答が記載されていなかった。

 もちろん、紙幅の都合もあるだろうが、ほかの問答が丁寧に書かれているだけに、意図的に感じてしまった。もしこれが“意図的”だとすれば、“しら~っと”このまま無視する気なのだろうか。それでは私の人権を蹂躙するだけでなく、私のブログや論考でこの成り行きに注目している読者をも冒涜する行為だと言えるのではないか。

■「“テレビ東京として”そのような電話はしていない」

 公式に明らかにされないのであれば仕方がない。会見に参加した複数の記者に取材をおこなうことにした。するとある事実が判明した。「田淵氏のブログによると、放送後にテレ東の方から『今後は元テレ東と名乗らないでほしい』と連絡が入ったというが、これについての事実関係はどうか?」という記者の問いに、広報担当役員は「お答えする必要はない」と言ったという。

 「お答えできない」という言葉であれば、「まだしっかり調べられていないので、お答えできない」というようなニュアンスになろうが、「必要はない」という言葉には強気の姿勢が見え隠れする。そもそも、本件に関してテレ東は「当事者」の可能性があるのだから、ちゃんと答える必要も義務もあるのではないか。

 また、広報担当役員の話を補足するかたちで、石川社長自らが「“テレビ東京として”そのような電話はしていない」と釈明したという。もしその主張が正しければ、「テレ東の発言だと思われると迷惑」というA氏の言葉はどう説明するのか。A氏は広報幹部である。そんな地位の人物がわざわざ電話してきたのは、テレ東上層部から何らかの指示があったからではないのか。

■「なぜジャニーズ性加害問題が長年放置されたのか」を解くヒント

 では、もしテレ東上層部が広報幹部にそのような指示を出していたとすれば、なぜ、わざわざそんなことをしたのか。

 その答えに、「ジャニーズ性加害問題は、なぜ長年放置されてきたのか」という根本的な謎を解くヒントがある。まず考えられるのは、旧ジャニーズ(以下、「旧J」と省略)のタレントを今後は積極的に使っていきたいテレ東としては、OBである私のNHKスペシャル出演は旧Jからクレームを言われる危険性をはらんでいるため、「迷惑だ」と感じたのではないかということだ。

 在京民放キー局はすべて営利を追求する株式会社である。しかも一部上場している。最優先するのは「視聴者」ではない。カネを出してくれる「スポンサー」だ。だが、テレビ局はいまだに「視聴率」という指標しかスポンサーには示すことができていない。

 そんななか、“手堅く”視聴率を稼げて、番組を配信に回したときにも一定数の再生回数を見込める旧Jのタレントは貴重な存在だ。旧Jを切って、「視聴率」を捨てるという選択肢はない。だから、事務所やタレントの不祥事には目をつぶり、見てみないふりをするのだ。

 また、テレビ局には「横並び主義」という変な性癖がある。「ほかの局が非難してないのに、“最初に”うちが声をあげるのはどうか」といった遠慮や忖度が働き、わかっていても「だんまり」を決め込む。そして、このような「忖度」や「迎合」が、タレント事務所をモンスター化させてゆくのである。

 このように、番組の出演者や事務所内の不祥事に関しては事務所に管理義務があるとして番組を放送するテレビ局は踏み込まないというのが、業界ルールになっている。いわば「他人事」を決め込んで、「監督責任」を逃れようとしているわけだ。その証拠となる事例を挙げたい。テレ東には、いまだ解決されていない「疑惑」がある。

■放置される「おはスタ」疑惑

 2023年8月、テレ東系列の子ども向けバラエティ番組「おはスタ」に出演していたお笑いタレントのアイクぬわら氏が、共演者で未成年の「おはガール」複数名を自宅に連れ込んだり誘ったりしたことが局内で問題視されていたことを『週刊文春』が報じた。その後、28日に突然番組を降板。9月には、ぬわら氏本人が『週刊文春』の取材に答えて釈明をしている。

 「これが事実なら、ぬわら氏は未成年者略取や誘拐罪に問われる恐れがある」と一部メディアが報じている。テレ東としては、第三者委員会を設立して、事実を調査するべきだ。だが、1年以上経ったいま、その気配はまったくない。「番組制作上の都合」と説明しただけで、放置されたままである。

 この「おはスタ」疑惑に関して、私は関係者への取材を試みた。しかし、誰一人として取材に応えてくれる人はいなかった。おそらく緘口令が敷かれているのだろう。そしてその実状がこの問題を複雑化している。もし、週刊誌が言うような行為がおこなわれていなかったのであれば、堂々とそう釈明すればいいではないか。

 社内調査や第三者委員会設立などに関しては、どこからの強制力もない。あくまでもテレビ局が自発的に「やるべき」と決断する必要がある。しかし、いまのテレ東にはそういった対応は無理なのかもしれない。

 ジャニーズ性加害と同様の子どもに対する行為が番組を通じておこなわれていたのであれば、言語道断、「悪質」としか言いようがなく、いまだに番組が続いていること自体が不思議だ。コンプライアンスの観点からもテレ東の監督責任は免れないはずである。それにもかかわらず、なぜテレ東はこの事件に対して無頓着でいられるのか。

 そんなふうに一般常識とは大きくかけ離れているのがテレビ業界であり、そんな現実を自ら暴露してしまったのが、今回の「横槍電話」なのである。

■テレ東はなぜ変わってしまったのか

 では、テレ東の企業ガバナンスの機能不全はどこから来ているのか。「諸悪の根源」と言うべき原因は2つある。

 まずひとつめは、一部の勘違いした役員の存在である。テレ東は常に「最小最弱」と言われてきた。視聴率やすべての面で「振り返ればテレビ東京」とも揶揄されてきた。そんなテレ東が株式上場し、いつのまにか「一流企業」の仲間入りをした。

 このことによって、何が起こったか。「社員意識の変化」である。“ビリっけつ”のテレビ局で偉くなっても何も誇れるものがなかったが、「一流企業になった」ことで出世欲が出てきたのである。

 そして、一部の人間のなかには、上に行けば行くほど自分が現場にいたときの苦労を忘れ、役員になったとたんに「自分は現場上がりだから現場のことをよくわかっている」という勘違いのもと、現場への締めつけや無理難題といったパワハラもどきのことを始める者が出てきた。それは年を追うごとに酷くなっているとテレ東内部から報告を受けている。

 もうひとつの「諸悪の根源」は、「日経(日本経済新聞)支配」とそのことで生じる「二重構造」である。テレ東がほかの在京民放キー局と決定的に違うのはこの点だ。日本テレビは読売新聞、テレビ朝日は朝日新聞、TBSは毎日新聞、フジテレビは産経新聞、テレ東は日本経済新聞(以降、「日経」と省略)と提携関係にある。

■自由闊達な雰囲気で上下関係はフラットだった

 しかし、ほかのテレビ局が新聞社から派生する形で誕生したのに対して、テレ東(当時は「(株)東京十二チャンネルプロダクション」)には、日経が経営難を救うかたちで資本参加したという事情がある。また、新聞社側のほうが売上高が大きいのは「テレ東―日経」のみで、創立以来、歴代の社長は日経からの天下りである。このような場合に、どういったことが起こるか。日経の発言力が極めて強くなる。

 そしてさらなる「歪み」は、文化の違いである。「活字」と「映像」という違いはほかのテレビ局も同じだが、日経は軍隊的な組織で上下関係が厳しく、上の命令は絶対。それに反して、テレ東は自由闊達な雰囲気で上下の関係もフラットだ。この差は大きい。これら両者間の歪みが、コンプライアンスやレピュテーションリスクという外圧もあって近年、ひどくなっているのだ。

■「日経支配」の代償

 私も「日経支配」という泥をかぶらされた経験がある。いまも続いている経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」が始まる2002年、私は会社から命じられ、俳優の役所広司氏になんとかお願いして「番組の顔」になってもらい、そのMC部分の撮影を担当していた。

 口説いた手前、役所氏の演出には責任を持たなければならないと思ったからだ。だが、放送が始まってほどなく、日経本体から物言いが入った。

 「経済番組に俳優を連れてきて、変な芝居をさせているのは誰だ。やめさせろ」

そのとき、テレ東プロパーの幹部は誰一人として私を庇ってくれなかった。もちろん、私がひとりで撮影内容や構成を決められるわけがない。放送内容は皆で合意して決めている。しかし、「ガイア」は、そのころはまだ認知度が低く、視聴率も振るわなかった。

 そんな状況なので、日経に口答えできる者はいなかった。いや、どんな状況であっても、日経本体や日経から天下りをしている役員に進言をできる者などいるはずはない。すべてに関してそうだ。それがテレビ東京の「黒歴史」なのである。

■ジャニーズ問題にも、おはスタ問題にも後ろ向き

 そんな「触らぬ神に祟りなし」のような状態なので、テレ東内は日経天下りの上層部や役員とテレ東プロパーの「二重構造」となっている。

 また、日経組に媚びを売る者たちがいるので、二重構造は極端化し、しわ寄せはすべて現場にやって来る。現場の都合を聞きもしないで、その時の気分で無理難題を強制する。気に食わないと怒り出す。まるで「駄々っ子」と同じだ。現場や下々の人間はその度に右往左往することになる。

 
そういった二重構造や社内環境が、ジャニーズ性加害や先述した「おはスタ」をめぐる重要な問題に進言することを躊躇させていると指摘したい。「おはスタ」問題を放置し、ジャニーズ性加害問題に関しては第三者委員会を立てるなどの検証をおこなわなかった。私も2023年10月当時、テレ東の社内聞き取り調査を受けた当人として、その検証結果を報告書にまとめて開示したことや特別番組で見解を発信したことは評価している。だが、それでは不十分だ。

 民放では唯一、新規の旧Jタレントの新規オファーを避けてきたことに対して好意的な意見も見られるが、これにはれっきとした理由がある。

 もともと旧Jに相手にされることが少なく、メインのタレントが出演する可能性も皆無に等しいテレ東は、旧Jのタレントに依存する度合いが少なかった。だから、特に急いで解禁する必要がなかったということに過ぎない。決して“積極的に”距離を置いたわけではないのだ。

■ジャニーズ問題対応で明らかになったテレビ局内部の構造的欠陥

 このような現象はテレ東だけではないだろう。

 事実、先日放送されたNHKスペシャル「ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像」においても、「上層部のインタビューを撮りたい」現場と「撮らせたくないし、放送もしてほしくない」NHK上層部の間で解離や意思の断絶が見られた。「メディア側が変わらないと、また同じような問題が起こる」と私は述べた。無論、「変わらなければならない」のは、組織全体や個々人の意識もあるだろう。

 だが、それだけではない。以上に述べてきたような、テレビ局内部の「構造的欠陥」がそこに関わるすべての者のこころを蝕み、正常な思考をできなくさせている可能性がある。そして、メディア全体、社会全体が一丸となって取り組まなければならない問題の本質を見えなくさせているかもしれないのだ。

■クリエイターが自信をもってバッターボックスに立てるように…

 本論の最後に、大好きなテレ東の現場の頑張っているクリエイターたちにエールを送りたい。いまの現場は、最高にいい人材が揃っている。制作局は「伊藤P」で著名な伊藤隆行氏、報道局はテレビ東京アメリカの社長として活躍した小松澤恭子氏といった両局長のもと、利益を最優先する経営陣から日々番組制作費を削られながらも、奮闘している。

 昔よりだいぶましにはなったが、いまだにテレ東の番組制作費は他局に比べて見劣りする。だが、それを感じさせないほどのクオリティの番組を“効率よく”“工夫して”作ることができるのが、テレ東の「強み」であったし、そのDNAはしっかりと受け継がれている。

 「カネがなければ知恵を出せ」と私もAD時代に言われ続けてきたが、いまもその努力を惜しんでいない。そんなクリエイターたちには、信念を持って自分が「おもしろい」と思える番組を送り出していってほしい。そしてメディア人の一人として、「それでいいのか?」と社会や社内のものごとに問題意識を持ってほしい。会社は、クリエイターが自信をもってバッターボックスに立てるような環境作りをしてほしい。

 さらなる提言は、私が「勘違いしている」と苦言を呈したプロパーの役員に対しておこないたい。頑張っている現場のために、上層部や経営陣との「パイプ役」となってほしい。言いにくいことを進言し、間違っていると思うことは「違う」と声をあげてほしい。そうすることで、必ず会社はよくなるはずだ。

 あるテレ東の仲間がメールに書いてきた。

 「この件で記事が出るたびに怒られるのはプロパーです」

 そんな会社であってほしくはない。そう思うのは、私だけではないだろう。



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田淵 俊彦(たぶち・としひこ)
元テレビ東京社員、桜美林大学芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修教授
1964年兵庫県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、テレビ東京に入社。世界各地の秘境を訪ねるドキュメンタリーを手掛けて、訪れた国は100カ国以上。「連合赤軍」「高齢初犯」「ストーカー加害者」をテーマにした社会派ドキュメンタリーのほか、ドラマのプロデュースも手掛ける。2023年3月にテレビ東京を退社し、現在は桜美林大学芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修教授。著書に『混沌時代の新・テレビ論』(ポプラ新書)、『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える“テレ東流”逆転発想の秘密』(方丈社)、『発達障害と少年犯罪』(新潮新書)、『ストーカー加害者 私から、逃げてください』(河出書房新社)、『秘境に学ぶ幸せのかたち』(講談社)など。日本文藝家協会正会員、日本映像学会正会員、芸術科学会正会員、日本フードサービス学会正会員。映像を通じてさまざまな情報発信をする、株式会社35プロデュースを設立した。

変わらないテレビ業界 読み進めていくうちにため息が大きくなりました
声を上げられる状態になるまでどのくらいかかるのかしらね
悲しい現実ですね

J事務所の報道について

2023年05月15日 | J
ずっと今回の件についてあの事務所と報道に関して怒りが収まらず、老体に負担がかかると判断し自分の中でスルーするようにしていました。
しかし、テレビやネットの中では堰を切ったように情報が氾濫していました。
その中でも、まだまだこの期に及んでも忖度する内容や映像が沢山あり 気持ちの落ち着く先が見つかりません。

そんな中 一つの記事を読み 何だかすっと納得出来た感じがしました。
わたくしにも解りやすく そうだと頷く内容だったので記録として残して置こうと思いました。



ジャニー喜多川氏の性加害疑惑を、企業不祥事の視点から考える。(中嶋よしふみ ウェブメディア編集長)

2023年3月7日、イギリスの公共放送局であるBBCで「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」と題された番組が放送された。ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏による性加害を元所属タレントが告発する衝撃的な内容だ。

この放送から端を発した告発騒動で、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏が4月12日に会見、ジャニーズ事務所はこれを受けて4月13日に各社の取材へ回答する。そして5月14日の夜、現社長である藤島ジュリーK氏(以下景子氏)による1分程度の謝罪動画と、各種の質問に答える文面を公式サイトに掲載した(以下公式コメント)。

公式コメントはすでに多数のメディアが報じているが主要な箇所だけをざっくりとまとめると以下の通りだ。

・デリケートな問題なので対応が遅れた
・BBCで報じられた内容は事実確認をする
・喜多川氏の性加害は誰も知らなかった、自分も知らなかった
・第三者委員会の設置はヒヤリングによる負担を考慮して行わない

公式コメントでは告発者の発言を否定せず、「事務所の存続さえ問われる、極めて深刻な問題だと受け止めました」と書く一方で、事実関係に関して認めるでも否定するでもなく、ほぼゼロ回答だ。

これだけの騒ぎになりながら告発騒動はテレビでは全くと言って良いほど扱われず、忖度という言葉がSNSでは飛び交った。デビューや仕事の見返りに性加害を行い、口封じをしていたという話が事実であれば、テレビ局によるジャニーズ事務所の重用も性加害を成立させる一因になっていた可能性すらあるにも関わらずだ。

今回の騒動は芸能ネタ、あるいは喜多川氏個人の起こしたトラブルやスキャンダルとして認識されているが、芸能界でも屈指の大手であるジャニーズ事務所で起きた「企業の不祥事」として考えると全く異なる側面が見えてくる。

ビジネス系のウェブメディア編集長として、あくまで企業不祥事の視点から考えてみたい。

■ジャニーズ事務所の法人としての責任は?
順を追って解説していこう。

第一に、今回の性加害疑惑は、喜多川氏が亡くなっているため、個人の責任を問うことは出来ない。

起訴は出来ても被疑者が死亡しているため不起訴処分となる(参照・捜査について 検察庁公式サイトより)

だから誰も罪に問われない、ということで話が終わるかというとそれほど単純ではない。法人としての責任、組織的な犯罪の関与については十分に疑われる。

創業者であり、組織の代表者でもある故喜多川氏が所属タレントに対して性加害を行っていたとすれば、それは明らかに組織的な犯罪であり、役員の責任も問われる可能性がある。

例えば社員や役員がプライベートで交通事故を起こして誰かを怪我をさせてしまった……この状況で企業が責任を問われる可能性はほとんど無い。しかしこれが業務中の出来事ならばどうか。

その会社が運送会社で運転が業務そのものであれば、安全運転について適切なルールが作られていたか、過労状態では無かったか、無茶なスケジュールで交通違反をさせる圧力がなかったか、といった点で当然ながら企業の責任が問われる。企業の責任=経営を任せられている役員の責任となる。

芸能事務所であれば所属タレントとのコミュニケーションはマネジメントの一環であり、業務そのものだ。その中で発生した出来事であれば、業務中の事件となる。到底、個人的なトラブルや犯罪とはいえない。

告発でもあるように、本当に性加害の受け入れがデビューやメディア露出に直結していたのであれば、極めて深刻かつ悪質な犯罪となる。業務中の事件どころか業務内容と直結していた事件であれば、法人として責任が問われないことは考えられない。

時折話題となる、企業のリクルーターによる大学生へのセクハラが近いだろうか。これを社長が何十年も続けていたら? 採用してあげるからと学生の弱みにつけ込んでいたら? それが大企業で行われていたら? 「社長が個人的にやっただけ」「会社は無関係」で済まない事は誰でも分かるだろう。

■取締役会を開いていなかったジャニーズ事務所
第二に、取締役会がまともに開かれていなかった。

ジャニー喜多川氏と姉のメリー喜多川氏の二人であらゆる事を決定していたと公式コメントにある。組織として適切な意思決定の場が設けられていなかったとすれば、それによって問題が発生した場合、取締役の責任はさらに重くなる。

もし役員会が適切に開催されていれば今回の問題は防げた可能性もある。公式コメントで自ら名ばかりの取締役だったと語る景子氏は経営のプロとして取締役の職務を全く果たしておらず、その責任は極めて重い。

■「知らなかったこと」が罪になる。
第三に、現社長の景子氏は性加害について知らなかったと主張している。以下、公式コメントの原文だ。

『ジャニー喜多川氏の性加害を事務所、またジュリー社長は知らなかったのか?
知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした。』

事実関係は不明としているにもかかわらず、「性加害が本当であれば」などの但し書きもなくシンプルに知らないとある。

文面の疑問についてはいったん横に置くとして、自ら知らないではすまないとあるが、これは道義的責任といった気分の話ではない。組織内で起きた問題に対して役員が知らなかったのであれば、むしろそれ自体が問題ということになる。

役員には他の役員や社長(代表取締役)を監視する義務がある。これを監視義務という。

見知らぬところで行われた性加害が監視義務に含まれるかは断言出来ないが、監視義務の範囲は取締役会に上程された(議題に上がった)事に限られず、法的に求められる範囲は決して狭くない(参照・取締役の責任-監視義務違反 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所)。

当然、監視義務は景子氏に限らず性加害が行われた時点の役員すべてに求められる。

■過去何度も報じられた性加害疑惑
第四に、喜多川氏の性加害疑惑は過去に何度も報じられている。

筆者は「そういった変な噂がある」程度の認識だったが、今回のBBCの報道をきっかけに過去に何度も報じられていると知って腰を抜かした。

1960年代から雑誌や書籍で何度も話題になり、1999年には週刊文春の報じた内容が大きな騒動に発展し、国会でも話題になったほどだ。そして喜多川氏は週刊文春の内容について名誉毀損であると民事訴訟をおこしたが、2003年に高裁で敗訴が確定している。

景子氏は2003年の文春報道の高裁敗訴について、公式コメントで以下のように回答している。

『当時の裁判を担当した弁護士、裁判に関わった役員へのヒアリングによるとその時点でもジャニー本人は自らの加害を強く否定していたこともあり、結局メリー及び同弁護士から、ジャニーに対して「誤解されるようなことはしないように」と厳重注意をするにとどまったようです。』

事務所を揺るがしかねないトラブルであるにも関わらず、ヒヤリングによると、ようです、と他人事のように書いている。伝聞調であることから、自ら確認をしていないのだろう。取締役としての責任を果たしているとはいえず、ここでも取締役会を開いていない弊害が現れている。

仮に筆者がジャニーズ事務所の取締役だったとしたら、創業者が性加害報道の裁判で負け、取締役会すら開かれない……このような状況で経営責任を追及されたらたまったものでは無いと即刻辞める。まともなリスク感覚があればそのように行動するはずだが、他の役員も含めて経営責任の重さをどう考えていたのか?

公式コメントにあるように、喜多川氏が自ら裁判に訴えた事や本人の弁だけを根拠に性加害を無いものとして対処してきたとすれば、それは深刻なガバナンスの崩壊を意味する。未成年のタレントを多数預かる事務所としては考えられない対応だ。

役員だった景子氏が知らないわけが無いじゃないか、といった指摘も多数出ているが、メールや電話録音等の客観的な証拠が出てこない限り確認のしようが無い。現状では知っていたかどうかよりも、知らなかったこと自体が取締役として重大な責任を負っている、そしてそれは道義的責任ではなく前述の通り取締役に課せられた監視義務の責任において、と繰り返し指摘しておく。

■第三者委員会の代わりにやることは?
今回の公式コメントに先だって4月13日にはNHKや共同通信の取材に対して以下のように回答している。

「経営陣、従業員による聖域なきコンプライアンス順守の徹底、偏りのない中立的な専門家の協力を得てのガバナンス体制の強化等への取り組みを、引き続き全社一丸となって進めてまいる所存です」

不祥事を起こした企業が「偏りの無い中立的な専門家の協力」を得てガバナンスを強化する、通常これは第三者委員会による調査を意味する。それにも関わらず第三者委員会による調査は行わないという。ただ、第三者委員会は万能というわけでもなく、形ばかりの調査と批判されることもある。

公式コメントには代わりにやることとして以下のようにある。

『既に告発された方、また今後あらたな相談をご希望される方のために、外部のカウンセラーや有識者、弁護士や医師の指導のもと、相談をお受けする外部窓口を月内に設置致します。相談者の秘匿性を守り、客観的にお話をお聞きするため、外部の専門家の協力を得る予定です』

このやり方が果たして第三者委員会よりも客観的で中立性を確保できるのか、極めて疑問であると指摘しておく。

公式コメントで景子氏は性加害の事実関係については極めて慎重に避けているものの、名ばかり取締役とか、取締役会を開いていなかったとか、喜多川氏の行為について積極的に確認や対応をしていない事など、経営責任を厳しく追及されかねない事案についてあまりに軽率に回答をしている。

ある意味で率直とも言えるが、これらの文面から読み取れる事は、経営責任を果たしていないとかそれ以前の話として、そもそも取締役が求められる経営責任がどういうものか理解しているのか?という根本的な疑問だ。

医療機器やカメラで有名なオリンパスは過去の損失隠しが発覚して、2019年に旧経営陣が合計で594億円の損害賠償責任を負う事になった。役員報酬が高いと批判されることは度々あるが、それは責任の重さの裏返しでもある。

■テレビ局の過剰で異常な忖度。
第五に、メディアによる過剰で異常な忖度がある。

喜多川氏がもしデビューやメディア露出のチャンスをエサに性加害を強要し、なおかつ口を塞いでいたのであれば、この問題は芸能界全体に関わる。特にテレビ局は少なくとも道義的責任を負うことになる。テレビ出演は芸能活動においても最も影響が大きい。ジャニーズ事務所のタレントを重宝してきたテレビ局が、性加害を成立させる一因となっていた可能性すらある。

そして、これも知らなかったでは済まない問題となる。すでに書いたように性加害の疑惑は繰り返し報じられ、高裁では民事とはいえジャニーズ事務所が敗訴しているからだ。

ジャニーズ事務所が弱小事務所ならば、被害を受けたタレントはその時点で退所していたに違いない。しかしテレビ出演のキャスティングに強い影響力を持つ事務所だからこそ多くの被害が生まれた、となればどうか。テレビ局は過去に疑惑が話題になったとき、そして高裁で負けたときになぜもっとジャニーズ事務所に対して慎重な判断をしなかったのか?と考えれば道義的責任では済まない。

実際、カウアン・オカモト氏の会見ではNHKの記者がこの問題がメディアで大きく報じられていたら入所していたか?と質問をして、15歳の未成年で入所していたので親が入所させなかっただろうと回答している。

筆者は普段、執筆はもちろんSNSの書き込み程度でも「忖度」という言葉を使うことはまずない。なぜなら事実かどうか確認できないからだ。

しかし今回の騒動をほぼ無視していた状況はもちろん、過去に所属タレントが不祥事を起こした際に「稲垣メンバー」とか「山口メンバー」と容疑者というワードを避けたり、SMAP解散騒動では当時フジテレビで放送されていたSMAP×SMAPで異様な謝罪映像を流したり、退所したメンバーのテレビ出演が途絶えたりと、過剰な事務所寄りのスタンスは今改めて振り返って見るとその異様さは際立つ。

状況証拠として忖度があると判断するには十分過ぎる。

吉本興業の闇営業騒動の際に筆者は「これが小さい事務所で起きた問題なら所属タレントは誰一人テレビ出演が出来なくなるのではないか? 大手なら黙認するのか? コンプライアンスは相手によって出したり引っ込めたりするようなものなのか? 公共の電波で商売をしているテレビ局として考えられない」と指摘した。この話はジャニーズ事務所への忖度にそのまま当てはまる。

■「ジャニーズ後」について。
つい先日、報道の自由度ランキングで日本は68位であまりに低過ぎると話題になった。

政府の圧力により政府の説明責任を追求できていない状況だという。それでも政府与党への批判がゼロということはまったくない。しかしテレビ局によるジャニーズ事務所への批判はゼロ、今回もジャニーズ事務所が公式コメントを出すまでほとんどの局が黙殺していた。SNSでは報道しない自由などと度々揶揄される状況だ。

政府与党よりも「強い」ジャニーズ事務所だが、今後はコンプライアンスに敏感なスポンサー離れで立ちゆかない可能性は高い。景子氏が自ら発した通り「事務所の存続さえ問われる、極めて深刻な問題」だからだ。それに気づかず忖度を続けていたテレビ各局の認識の甘さは呆れるとしかいいようがない。

5月15日の朝8時、本稿の執筆時点でYahoo!JAPANでテレビ欄と実際の放送を確認した限り、今回の公式コメントに関するニュースをキー局はすべて報じている、もしくは報じる予定のようだ。さすがに無視はないと思っていたが、公式コメントが出るまで待っていたと考えれば異常な忖度はまだ継続している。

「ジャニーズ後」のテレビ局や芸能界がどうなるのか、注目したい。

中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 FP

【プロフィール】
2011年にFPのお店、シェアーズカフェを開業。保険を売らず有料相談を提供するFP。共働きの夫婦向けに住宅を中心として保険・投資・家計・年金までトータルでプライベートレッスンを提供中。「損得よりリスクと資金繰り」がモットー。東洋経済・プレジデント・ITmediaビジネスオンライン・日経DUAL等のメディアで連載、執筆。新聞/雑誌/テレビ/ラジオ等に出演・取材協力多数。士業・専門家が集うウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインの編集長、ビジネスライティング勉強会の講師を務める。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」「一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人(大和書房)」。お金より料理が好きな79年生まれ。