たまゆら夢見し。

気ままに思ったこと。少しだけ言葉に。

我が背子 大津皇子 山辺皇女2

2019-05-25 15:25:14 | 日記
私は15の歳で大津さまに嫁いだ。

私の父は天智天皇で母は蘇我赤兄の娘、常陸娘で近江朝廷の象徴のようなもの。

近江朝廷は崩れさった。天武天皇…大津さまの父上によって。天武天皇には叔母も嫁いで子もおられる。天智天皇亡き後後継を託された異母兄大友皇子の死によって。

大津さまにとっては異母弟妹でもあるけれど。

崩れ去った近江朝廷の象徴が飛鳥浄御原の象徴という方に嫁ぐ。大津妃となる。皇太子妃となると異母姉の皇后が仰言った。

皇后は天武天皇からの思召しであるが、気がすすまなければ無理をせずとも良いと優しく仰言った。

大津さまの人柄、誰もがお褒めの言葉しか聞かれない。皇子としての風格はもちろんのこと、文武に長け明るくおおらかな性格に加え上下の身分を問わず接する姿勢は多くの人の心を捉えて…かくいう私もであったけれど…雄々しいながらも艶を併せ持つお姿に女人なら誰しも憧れる…

「私でよければ…大津さまが、お嫌でなければ…」

「そなたほど美しい女人を大津が嫌がることはあるまい。」と皇后は微笑まれた。

私の父、天智天皇の娘でありながら、お祖父様、赤兄とともに近江朝廷から追い出された御身なのに優しく、接してくださる。異母姉とはいえ、畏れ多い。

異母兄の川嶋皇子も「大津との婚姻は我が事のように嬉しい。」と手放しで喜んでくださった。

川嶋の異母兄上は大津さまと仲が良い。莫逆の友とも言われている。

少し肌寒い夜、私は寝室で大津さまが御出でになるのをお待ちしていた。

白い絹の肌触りが気持ちよくて、これから起きることは少し怖くもあったけれど

大津さまに委ねようと思うと心なしか胸がざわついた。