ということで、今回は1967年に発表されたムーディーブルースの初期の代表作を取り上げる。
1. The Day Begins
: The Day Begins
: Morning Glory
2. Dawn : Dawn Is a Feeling
3. The Morning : Another Morning
4. Lunch Break : Peak Hour
5. The Afternoon
: Forever Afternoon (Tuesday?)
: (Evening) Time to Get Away
6. Evening
: The Sunset
: Twilight Time
7. The Night
: Nights in White Satin
: Late Lament
このアルバム誕生の経緯について簡単に紹介すると、R&Bバンドとしてデビューしたムーディーブルースは中心メンバーであるデニー・レインらの脱退で早々に行き詰っていたが、新メンバーにジャスティン・ヘイワードとジョン・ロッジを迎えて再スタートしようとしていた。その頃、彼等が所属していたデッカレコードが新レーベルであるデラムを創設し、新しいステレオ録音技術を普及させるためにクラシックとロックの融合作品を企画していたため、彼等に声が掛かってこの作品の制作が行なわれた、というもの。制作にあたっては、ドヴォルザークの「新世界」やディズニーの「ファンタジア」等を参考にしたという。
そして出来上がった作品は「過ぎ去った未来の日々」というかなり思わせぶりなタイトルのもと、朝から夜までの一日の情景をピーター・ナイト指揮によるロンドンフェスティバルオーケストラの演奏と絡ませながら描くという、一大抒情詩的なトータルアルバムとなった。
そういうアルバムであるから、今となってはなかなか珍しい構成の作品となっている。メンバーが持ち寄った曲と曲の間をピーター・ナイト編曲によるオーケストラアレンジがされた変奏曲が繋いでおり、またアルバムの始まりと終わりにはグレアム・エッジの手になる詩がマイク・ピンダーの朗読によって披露されている。
ヘイワード作の「Nights in White Satin(サテンの夜)」は彼等最大のヒット曲であるし「Tuesday Afternoon」も代表曲のひとつとなった。この他にもピンダー作の「Dawn Is a Feeling」も鬱々として良いし、ロッジ作のビートルズ風「Peak Hour」はこのアルバムの中では浮いちゃっているハードなナンバーだが、ノリが良くて好き。
僕は「Seventh Sojourn」からムーディーブルースを本格的に聴き始めたので、彼等のアルバムはそこから遡って聴いた。このアルバムに関しては前述のように個々の曲は良かったけれど、アルバム全体を覆う虚仮脅しみたいな、ものものしい演出は、その当時ですら古臭く感じてずっと好きになれなかった。だが既に半世紀も経過し、そんなこだわりも恩讐の彼方に去っていった今日この頃。変化に富んだ各曲を上手に繋いだオーケストラアレンジに感心しつつ、素直に聴けるようになった。
バンドとしての最後の作品がこのアルバム50周年を記念した再演ライブだったということからも、このアルバムに対する彼等の愛着が伝わる。60年代のまだロックが混沌としていた時代の貴重な示相化石のひとつとなる記念碑的なアルバムであることは間違いない。
最後までムーディーブルースのメンバーだった三人のうち、グレアム・エッジは他界してしまったし、ジャスティン・ヘイワードはソロ活動に専念しているようで、ジョン・ロッジだけが未だにムーディーブルースの曲を積極的に取り上げてライブ活動を行なっているようだ。最近「Days of Future Passed」を再演したアルバムも出したそうで、僕もその演奏をYouTubeで断片的に聴いたけど、個人的にはあまり共感できなかったな。なくなってしまったバンドの灯を彼が守り続けようとする気持ちは嬉しいけれど、一人で頑張ってこのアルバムの世界を再現しても却って欠けているものが気になってしまうもの。
(かみ)
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