なにしろムーディ・ブルースのフロントラインを務め代表曲の七割方を作った二人が組んで、プロデューサーにトニー・クラーク、アルバムジャケットをフィル・トラヴァースが手がけたとなれば、これはもう「実質的にムーディーブルースの8枚目のアルバム」と言われても致し方ない。当然、ムーディーブルースの延長線上にある作品として彼等のソロアルバムの中では最もヒットした。タイトルの「Blue Jays」は、大リーグのチーム名でもおなじみの鳥の名前でもあるが、「ムーディーブルースの二人のJ」にも掛けている。
1. This Morning
2. Remember Me My Friend
3. My Brother
4. You
5. Nights Winters Years
6. Saved by the Music
7. I Dreamed Last Night
8. Who Are You Now
9. Maybe
10.When You Wake Up
(Bonus Truck)
11.Blue Guitar
1.3.5.7.8.がジャスティン・ヘイワードの曲、4.6.9.がジョン・ロッジの曲、そして2.10.が二人の共作。二人ともポップなメロディメーカーだから親しみやすい曲が並ぶ。いくつかの曲では生のオーケストラを導入しており、彼等はメロトロンよりも本物のストリングスに憧れていたのかもな。そのひとつである「Nights Winters Years」は「Nights In White Satin(サテンの夜)」の路線を狙ったのだろうが、交響曲のようなドラマティックな音がちょっと気恥ずかしい。それよりも「My Brother」「You」「I Dreamed Last Night」「Who Are You Now」といった私小説的な、さりげない小品が魅力的。初めて二人が共作した「Remember Me My Friend」と「When You Wake Up」はどちらもスケール感に溢れ、このアルバムで特に気に入った2曲。
それまでのムーディーブルースからマイク・ピンダーの重厚さと陰鬱さを取り去ったら、こういう音楽になるのだろう。聴きやすいのでイギリスよりもアメリカでヒットしたのも頷ける。80年代以降のムーディーブルースは実質的にこの二人が切り盛りするポップなバンドになっているから、現在のムーディーブルースの音楽の原点はこのアルバムにある。
ところでこのアルバムを聴いていた頃、僕は高校生で部活に明け暮れる日々を送っていた。学校は片田舎にあり周囲に高い建物がなかったので空がやたら広かった。初夏の夕陽が沈む頃、青空が徐々に漆黒に移ることでできる美しいグラデーションを練習の合間にうっとりと見ていた。それはこのアルバムでフィル・トラヴァースが描いた蒼い空の色と重なって、今でも思い出す。40年の時が流れて、今じゃ子供が部活に精を出している。この子も僕と同じように空を見て何か思っているだろうか。
※ボーナストラックである「Blue Guitar」は1976年にシングルで発売されたヘイワードの作品。バックは10ccのメンバーが務めている。日本でもシングル盤が発売されたが数ヶ月で廃盤になり、CD再発時に初めて巡り会うことができた思い出の曲。
(かみ)
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