1977年発表のキャメル5枚目のアルバム。元キャラヴァンのリチャード・シンクレアが新加入し、メル・コリンズが全面的に参加していて、これまでのサウンドからかなり変化している。
1. First Light
2. Metrognome
3. Tell Me
4. Highways of the Sun
5. Unevensong
6. One of These Days I'll Get an Early Night
7. Elke
8. Skylines
9. Rain Dances
<2009 Expanded & Remastered Edition>
10.Highways of the Sun (Single version)
11.First Light (Live)
12.Metrognome (Live)
13.Unevensong (Live)
14.Skylines (Live)
15.Highways to the Sun (Live)
16.One of These Days I'll Get an Early Night (Live)
かつて2000年代にキャメルの映像作品が立て続けにリリースされた時期があったが、その中に「Curriculum Vitae（クリクルム・ヴィタエ）」というのがあり、これはオリジナルメンバーであるアンディ・ラティーマー、ピーター・バーデンス、アンディ・ワード、ダグ・ファーガソンのインタビューを中心にまとめられた、バンドの歴史を回顧するドキュメンタリー作品。コアのファンという程ではないのに何でこんなものを持っているかというと、中身をよく知らないまま買ってしまっただけ。だが、語られているエピソードには興味深いものもあって、このアルバムの直前に行なわれたファーガソンからリチャード・シンクレアへの交代についても言及されている。交代の理由は、よりバンドの音楽性を拡げるためにファーガソンが切られてシンクレアが迎えられたということのようだが、それまでファーガソンが担っていたバンドの人間関係を上手にまとめる役割も失ってしまったために、そこから徐々にメンバー間の亀裂が生まれていったそうだ。
この時期のラインアップは、既に準メンバー的な扱いだったメル・コリンズも含めてキャメルの歴史の中で最も華やかな顔ぶれだったのだが、既に「終わりの始まり」だったという訳か。
アルバムの曲構成からしてちょっと変則的で、インストゥルメンタルの「First Light」で幕を開けた後はボーカル入りの曲が4曲続き、その後はまたインストゥルメンタルナンバーが並ぶ。上段でも書いた「First Light」ではコリンズのサックスが前面に出たジャージーなインストで、英国のバンドらしい湿り気を湛えながらも明るさを感じさせて、個人的にはこのアルバムで一番お気に入りの曲。「Metrognome」からシンクレアのボーカルを聴くことができるが、彼の加入はバンドの弱点だったボーカル面の強化を確実にもたらした。特に耽美的な「Tell Me」なんて彼のボーカルなしには成り立たないだろうと思われる曲。レコーディング直前の加入だったので彼が作った楽曲は取り入れられていないが、当時このアルバムを聴いたキャラヴァンのファンは複雑な心境だっただろうな。
「One of These Days I'll Get an Early Night」「Skylines」に顕著に見られるフュージョンへの傾倒はバーデンスの嗜好なのか、ここでもコリンズをはじめとするホーンセクションが大幅に導入されている。その間に挟まれた「Elke」はラティーマーのフルートをフィーチャーした、「The Snow Goose」を彷彿とさせるリリカルな作品。この曲にブライアン・イーノが参加しているのもちょっと驚き。
こうして改めて聴くと、メンバーチェンジを経てバンドが外に向かってスコープを拡げようとしていたこともわかるし、個々の楽曲にはそれなりに佳作があるものの、アルバムとしては統一感に欠けるなあ。この感想は次作の「Breathless」にも共通するもので、やっぱりバンドの結束力が弱まり、各自がそれぞれやりたいことをやった結果なのかしらん。個人的には悪くないアルバムと思うが、客観的な評価としてはちょっと疑問符がつくかも。
（かみ）
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