インタビューが収録されたのはちょうど8人組イエスがツアーを行なっていた時期で、従ってこの8人が代わる代わる歴史を語る。だから英語が堪能な人以外は字幕つきの日本盤を買うべき、くれぐれも輸入盤に手を出さないほうが良いです。
楽曲の映像は、当時のTV番組だったりライブ映像だったりプロモーション用のビデオクリップだったり、ふんだんに使われているが、インタビューの合間に流されるので一曲まるごと収録されたものはひとつもない。このビデオと同じ時期に「暦(Greatest Video Hits)」というビデオクリップ集も発売されていて、そういう映像がほしい人はそちらを求めたほうが良いだろう。ここまでのイエスの歴史を学ぶには、ボックスセットの「Yesyears」とともに、うってつけの作品ではなかろうか。
で、8人のメンバーによる回想だが、なにしろ人の出入りの激しいバンドだから話題には事欠かない。メンバーの脱退や加入に関わる話は興味深かったけど、あくまでもそれは収録時点の8人のメンバーの見解であって、ピーター・バンクスやパトリック・モラーツらがどう考えていたかはこのビデオでは紹介されない。
だが、今回このビデオを改めて観直して、初めて観たときとは別の感慨も覚えた。何故なら、僕等はそれ以降のイエスの変遷を知ってしまっているから。かいつまんで言うと、日本公演を含むワールドツアーを終えた後、8人組イエスはあっけなく瓦解。日本滞在中も彼等は2組に分かれて行動し、お互いの悪口を言い合っていたなんて噂は当時から聞いていたし、いや、演っている本人達だって、リスナー達だってこの編成が長続きするとは思っていなかっただろうけど。
ツアー後、90125編成に戻って1994年に「Talk」を発表するが、ほどなくトレバー・ラビンが脱退。すると今度は黄金期のラインアップで再編成して1996年に「Keys to Ascension」を発表。リック・ウェイクマンが脱退し、ビリー・シャーウッドほかを迎えて翌年「Open Your Eyes」を発表。その後はジョン・アンダーソンが遂に外されて、クリス・スクワイアも他界し、現在のイエスにはオリジナルメンバーが誰もいなくなった。そのイエスは今年も来日したけれど、もうひとつのイエスであるアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(AR&W)はまだ活動しているのだろうか。
そんな歴史を踏まえて、8人組イエスの意義をポジティブに熱っぽく語るアンダーソンらの言葉にニヤニヤしてしまうのは我ながら悪趣味だよな。
そんなこんなで彼等のインタビューは、建前と本音を聞き分ける能力を要求されるので要注意なのであるが、ある意味、この時期の彼等は最後のピークを迎えていたのだ。従って、それまでの歴史を総括するには絶好のタイミングだったし、最初で最後の豪華なラインアップでのステージに立ち会えた僕等は眼福と言うべきだろう。
ラスト近くにウェイクマンが語った「イエスは俺が死に去った後もずっと存在し続ける予感がする。ニューヨーク・フィルやボストン・シンフォニーのように、イエスは21世紀にもあると思うんだよ」という予言は、オリジナルメンバーなしで活動を継続している現在、まさに現実のものとなった訳で、これは慧眼であった。
(かみ)
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