Kahooさんの記事へのコメントです。
なるほど、そうなるとハリーとクウィンタ星文明の違いは既知であることの程度の差に過ぎないということになるのでしょうか。“お客さん”の外見と言動があれほどハリーそっくりでなければ、ケルヴィンは自殺した妻によく似た宇宙人に遭遇したと思うか、あるいはソラリスの海そのものが彼にとって受け容れやすい姿をとって接触してきたと考えたでしょうし、逆に、クウィンタ星の二つの . . . 本文を読む
■もう一つの含意
私は認識というものの可能性と限界を探るこの小説に、もう一つの含意を感じます。例えば、タイタンでのパルヴィスの“哲学的思考”の段落から、先の引用(P.41-42)に続く個所を見てみましょう。
P.42
【...】この地では何物も何物に対して奉仕せず、生存を支えも助けもしないものを若木のうちにすべて切断してしまう進化という断頭台が機能していないが故に、また自然と生まれる生命や襲い . . . 本文を読む
スタニスワフ・レム『大失敗』(国書刊行会/二〇〇七年一月刊)
■レム最後の長編小説
「訳者あとがき」によれば、『大失敗』は一九八三年から八五年にかけて執筆されました。この作品以後、二〇〇六年に亡くなるまでレムは長編小説を発表することはありませんでした。
訳者の久山宏一氏は、
P.427
レムは、『大失敗』で、約四半世紀前の「接触[コンタクト]三部作」【『エデン』(一九五九年)、『ソラリス』 . . . 本文を読む
qfwfq氏のブログの記事「カフカ翻訳異聞 その2」(http://d.hatena.ne.jp/qfwfq/20070915/p1)で、フランツ・カフカ『変身/掟の前で 他2編』(光文社古典新訳文庫/二〇〇七年九月刊/丘沢静也・訳)の訳者あとがきに白水社版カフカ全集(池内紀・訳)への言及があることを知りました。
「カフカ」「翻訳」とくると、カフカ論を書き、『翻訳者の使命』で翻訳は伝達ではないと . . . 本文を読む
インターネットというのはすごいもので(正しくは、すごいのはインターネットではなく、柴田元幸氏ですが)、ハーマン・メルヴィルの『バートルビー』の柴田元幸氏による新訳『書写人バートルビー』のpdfファイルを見つけてしまいました。
さっそく、昨日までの「読書メモ」をつけるときに参照した『代書人バートルビー バベルの図書館9』(国書刊行会/一九八八年十一月刊/酒本雅之・訳)と柴田訳『書写人バートルビー . . . 本文を読む
P.91
【...】代書人は「墓場」[トゥームズ]に連行されるという決定を聞かされると、哀れにもわずかな抵抗さえ見せず、例の青ざめた無表情のままで黙って従ったという。
見物人のなかで哀れをもよおし、あるいは好奇心を覚えた者が何人かその一行に加わって、バートルビーと腕を組んだ警官の一人に先導され、その無言の行列は、真昼のさんざめく巷の喧騒と熱気と歓楽のさなかを進んでいった。
P.92-95 【セ . . . 本文を読む
P.63-65 【セッションB2】
「もう筆写をしないだと」。「もうしません」。「それで理由はなんだね」。「理由は申しあげなくてもお分かりではありませんか」。【バートルビーは意図を問われて、初めて答えを返す】「わたし」はバートルビーが筆写に励み過ぎて目を悪くしたという思い込みに逃れる。「目が良くなったら、それでも筆写をする気はないかね」。「筆写はやめたんです」。
「わたし」はバートルビーに六日以 . . . 本文を読む
友人からハーマン・メルヴィルの『バートルビー』という中編小説の存在を教えられ、とても面白そうなので読んでみました。友人はジョルジョ・アガンベン『バートルビー 偶然性について』(月曜社/二〇〇五年七月刊)で読んだらしいのですが、私が読んだのは『代書人バートルビー バベルの図書館9』(国書刊行会/一九八八年十一月刊/酒本雅之・訳)です。
聞きしに勝る面白さで、二度読みましたが、そこで考えたことをと . . . 本文を読む
アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』(国書刊行会/二〇〇七年六月刊)
【下品で残虐という前評判に、読むのを躊躇していらっしゃる方へ。たとえば永井豪氏の『ハレンチ学園』と『デビルマン』のエンディングが大丈夫でしたら、まったく問題ありません。また、両作品がお好きな方には絶対お勧めです。実験的表現の乱舞と聞いて、読んでも何が書いてあるのか解らないのではと危惧されていらっしゃる方へ。心配ご無用。すべ . . . 本文を読む